[Arc 2] 第十五話:東地区の任務 (Mission: East District)
東地区の現場に到着すると、アキラ、レイ、ヒナは現場へ入り、気を失った人々が倒れていた場所を調べ始めた。リーダーとしてヒナはすぐチームを指揮し始めた。
— レイ、お前は東と南を担当して。お前の観察力は私たちより上だ。アキラは西を、私は北を見る。半径15メートルを調べて、手がかりがあったら声を出して。
レイはやる気のない様子でぼやいた。
— はいはい、了解です……。
と言って南へ歩いていった。アキラも頭を下げて同意し、西側の通りへ入った。
二時間にわたって調査したが、何も見つからなかった。レイが突然通りの反対側から叫んだ。
— みんな、こっち来い! すごいもの見つけたぞ!
アキラとヒナはレイが何かを発見したと思い、大急ぎで彼のところへ行った。ヒナは息を切らして尋ねた。
— 重要なものを見つけたの、レイ?
レイは真剣な顔を崩さず、指で示した。見ると、歩道の端に普通の犬のフンがあった。レイは悪意たっぷりにくすくす笑った。
— くひひ……俺はこれが、この通り最大の謎だと思うぜ!
ヒナは怒って深く息を吐いた。
— もう少し真剣にやってくれたらよかったのに、レイ。お願いだから。
アキラも口を挟んだ。
— レイ、先生は俺たちを信頼してる。だから、その信頼を裏切るわけにはいかない。
レイは肩をすくめ、気楽な態度へ戻った。
— なんだよ、冗談を二つ言っただけで怒るなよ。つまり、この場所には手がかりが何もないって言いたかったんだ。きれいに調べられてる。病院へ行って、目を覚ました奴がいたら一人と話してみようぜ。
ヒナは少し考えて、計画をもっともだと思った。
— 分かった。その計画はいいね。病院へ行こう。
レイはにやりと笑った。
— でも、最初にコーヒーを買おうぜ。患者が逃げるわけじゃないだろ?
三人は一緒にコーヒーを買い、病院へ入った。受付の職員に秘密魔法警察の身分証を見せ、謎のように倒れていた被害者の中に目を覚ました者がいるか尋ねた。看護師の一人が答えた。
— 実は2日前に目を覚ました患者が一人います。それと……今朝早くに目を覚ました人もいるんですが、少し様子が変なんです。
アキラは興味深そうに尋ねた。
— 変というのはどういう意味ですか?
看護師はため息をついた。
— 自分の目で見てもらったほうがいいと思います。
看護師は子供たちを患者の部屋まで案内し、扉を開ける前に注意した。
— 患者をあまり疲れさせないように、落ち着いて話してください。
と言って、彼らだけを残した。
部屋へ入りと、ベッドに座っている男が、空っぽで無表情な目で壁を見つめているのをアキラは見た。まるで何が現実で何が偽物なのか完全に混乱しているようだった。レイはゆっくりベッドへ近づき、男の肩へ軽く手を置いて声をかけた。
— おい、友達。元気か?
男はレイに触れられた瞬間、電気に打たれたように痛そうに身を引いた。目は恐怖で見開かれ、必死にうわ言を繰り返した。
— 俺……俺はやってない! 頼む……。だって、現実じゃなかったんだろ? そうだよな?!
レイは何が起きたのか分からず、男の肩を強くつかんだ。
— おい、落ち着け! 何が現実じゃなかったんだ?
しかし男はレイの手を払いのけ、布団の下へ隠れた。震えながら同じ言葉を繰り返す。
— 違う……現実じゃない……。
俺たちはどうしようもなく部屋の外へ出た。レイは扉を閉めながら首を振った。
— こいつ、完全に頭がおかしくなってる。
ヒナは真剣な顔になった。
— ほら、もう一人の目を覚ました人とも話そう。
と言って、ほとんど同じことがもう一度起きた。
病院の外へ出て話し合う。アキラは深く考え込んだ。
— どうして二人とも、こんなに怯えていて、空っぽの目をしていたんだ? 分からない。
レイはコーヒーを一口飲みながら付け加えた。
— そうだな。それに二人とも現実じゃない、現実じゃないってつぶやいてた。まるで幽霊を見たみたいだった。
ヒナは時計を見た。
— 分からない。底も今はもう遅い。ホテルへ戻って、夜の見回りを元素警察に任せよう。
と言って、三人はホテルへ休みに戻った。
***
朝になると、無線からパニックに満ちた音声が響いた。
— 6部隊! ヒナ! 隊長、すぐに来ていただきたい現場があります!
子供たちが現場に引き返すと、地面に一人の元素警察官が血まみれになって横たわっているのを目にした。遺体はすぐに解剖に回され、しばらくして結果が出ると、刃物による傷(ナイフの傷)がつけられる前に、被害者はすでに意識を失っていたことが判明した。ヒナは元素警察にこの情報を警察署へ通報するよう指示した。ヒナは声に出して考え始めた。
— ということは……俺たちが追っている犯人は、またしても同一人物だ……。
*ドサッ!*
まさにその瞬間、何かが落ちる音が聞こえた。彼らの前に二人の人物が現れた。一人はマスクを被っており、もう一人は、通報に向かおうとしていたあの気絶した警察官のすぐ上で、同じように意識を失って倒れている、ピエロのようなメイクを施した正体不明の男だった。アキラは右手に「方向」の力を集めながら叫んだ。
— お前は一体誰だ!?
倒れた警察官の傍らに立っていたマスクの男が、にやりと笑って答えた。
— まあ、一連の事件の張本人、とでも言っておこうか。
子供たちが驚いて防衛の構えをとる中、彼らはマスクの男に問い詰めた。
— 事件の張本人とはどういう意味だ?
しばらくの時間の後、地面に倒れていたあの素性の分からないピエロのマスクを被った男が、突如として目を覚ました。彼は苦痛に呻きながら、どうにか身を起こした。
— ああ……クソ、身体中が痛えよ!
男は地面の相棒に向けて鋭い視線を向けた。
— ゼケ……人が気絶する時くらい、もう少し優しく受け止めろよ!
— 悪かったな。だが、お前に触れることすら俺は御免なんだよ、マラ。
地面でピエロのマスクを被ってにやついていた男が立ち上がった。
— ひひひ……人聞きが悪いなゼケ。
マラは俺たちの子供たちに視線を据えてせせら笑った。
— でも、俺が言った通りだろ? 元素警察を殺せば、必ず『特殊クラス』の警察官が引きずり出されてくるってな。ひひひ……。
メリケンサックを装着したゼケがつぶやいた。
— ああ、お前の言う通りだったな。
レイはアキラとヒナの前へ進み出ると、低くささやいた。
— 対向の奴らは間違いなく厄介だ……。人を気絶させるのは、あのマラとかいう不快な笑い方をする男だ。だが、その能力がどのように発動しているのか仕組みが分からない。警戒しろ。
ヒナもそれに同意した。
— まったくその通りよ。どのような仕組みなのか見当がつかないわ。レイの言う通りよ。
まさにその時、ゼケが突如として片腕を空へと高く掲げ、全霊の力で絶叫し始めた。
— ソーラーレイ・エクスプロージョン!!
アキラ、ヒナ、レイは即座に目を細めて強固な防衛体制をとり、凄まじい魔法の爆発を予期した。しかし、通りには何一つ異変は起きなかった。彼らがゆっくりと目をあけると、ゼケはマスクの裏で気楽そうに笑った。
— 冗談だよ……。
子供たちの注意がその虚偽の魔法名によって削がれたまさにその刹那、マラは信じられないほどの神速でヒナの真正面へと出現した。彼の手が伸ばされ、ヒナの肩へと触れたその瞬間、ヒナとマラは全く同じ一瞬ののちに、その瞳を裏返らせて通りの中心へと、まるで動かぬ死体のように同時に崩れ落ちた! アキラは強烈な恐怖に絶叫した。
— 一体何が起きてるんだ、クソッタレ!!
アキラはすぐさま前方へと飛び込み、ヒナの身体の上に重なっているマラを引き離して救い出そうとしたが、遠くに佇むゼケが冷徹な声で警告を発した。
— それはあまり良い策とは言えないな、少年……。だが、やるのはお前の完全な自由だぞ。
アキラは「方向」の力を全開に昂らせて怒鳴り散らした。
— ハッ! こんな状況で、誰がお前なんかを信用するかよ!!
アキラがまさに一歩を踏み出そうとしたその時、レイが突如としてアキラの腕を強固に掴み取り、その視線をゼケへと真っ直ぐに向けた。
— こいつは嘘を言っていない。もし自らにとって不都合な事態になるならば、忠告などせずに即座に動いて俺たちを阻止しにくるはずだ。どうやら、双方にとって極めて不快な現象が起きているらしい。
ゼケはマスクの奥からゆっくりと拍手を送った。
— おお……。随分と頭の回る子供がいるじゃないか、称賛してやるよ。その通りだ。だがヒントはここまでだ。これ以上は残念ながら教えられないな。
彼らが言葉を交わしている間、地面に無残に倒れていたマラが突然その目をあけ、深く息を吸い込みながら身を起こした。ヒナは未だにその場で昏睡したままだ。マラは自身の衣服の汚れを払いながらにやりと笑った。
— ひひひ……残り二人だな!
ゼケは自らの手に触れ、次の瞬間、その視線を直接アキラへと鋭く向けた。
— このダンス、俺と踊ってくれるかい、少年?
そう言い放つやいなy(言い放つやいなや)、彼はアキラの完全な正面へと出現した。
マラは陰湿な笑みを浮かべ、その目をレイへと据えた。
— ピエロめ! 奴は真っ直ぐお前を狙っているぞ、少年。もしかしたら一番の障害はお前かもしれないな! ひひひ……。
ゼケは自らの拳を武器に、悪夢のような猛攻でアキラへと襲いかかった。アキラは「方向」の力を必死に収束させ、ゼケの打撃の角度を力強く逸らそうとした。激しい攻防の最中、ゼケはアキラの視線の動き、彼がどこに意識を集中させているかを完全に追尾していた。アキラは「方向」の力でゼケを強引に押し戻すため、まず彼の挙動を注意深く凝視した。ゼケは疑わしそうに問いかけた。
— お前の能力、重力のベクトル(方向)を操作する性質のようだな、少年……違っているかい?
彼は嘲笑を浮かべ、打撃の度に執拗にアキラの死角である真背後へと回り込もうとした。アキラはその都度、斥力を放って敵を押し返し、さらに地面にある破片を自身の力で浮かせて次々と投げつけることで、どうにか一定の距離(間合い)を維持し続けた。
同じ秒刻みの中、レイはマラとの距離を保ち続けていた。空間移動の力を巧みに使い、マラの予測不能な急襲から連続して回避を繰り返す。レイは激しい攻防を繰り広げながら、その瞳をマラへと据え、彼の挙動を極限まで観察していた。脳裏で凄まじい速度の状況分析が走る。
(このマラとかいう男の力は、間違いなく直接触れることで発動し、標的の意識を完全に奪うものだ。俺たちの手元にある情報はただ一つ、触れられれば昏倒するということだけ……。だが、俺が奴に触れた場合もその法則は牙を剥くのか? 奴は能力を発動した際、自らも意識を失うが、その目覚めは犠牲者よりも遥かに早く、一分も経たぬうちに立ち上がる。なぜ奴だけがこれほど迅速に覚醒できるんだ? それに、先ほどゼケが虚偽の突撃を仕掛けた際、奴は確かに相棒に触れていた。触れる対象を任意で選別できるのか、それとも奴の能動的な接触のみが条件なのか。もしこの不確定なリスクを冒して肉撃を仕掛け、俺の仮説が瓦解した場合、あの堅物が一人取り残されて完全に敗北する……)
レイはこの絶対的な法則を完全に見切らぬ限り、マラへの直接接触は不可能だと断定し、突如として指を鳴らした。
*パチン!*
「位置移動」の力が発動し、アキラと自らの座標を瞬時に反転させた。マラがまさにその掌をレイの肩へと触れさせようとしたその刹那、背を向けて佇んでいたアキラが突如としてその目前に物質化し、すでに迎撃の構えをとっていた「方向」の力が牙を剥いた。アキラは正面の異変を即座に認識し、凄まじい昂りのまま「方向」の力を叩きつけてマラの身体を後方へと強烈に吹き飛ばした。そして、自らの真背後に回ったレイに向けて怒号を浴びせた。
— おい間抜け! 危うく俺をあのまま送り出すところだっただろ、この大馬鹿野郎! 人を空間移動させる前には一言告げろ!
レイは今度はゼケの正面へと位置を変え、敵の拳と目まぐるしい位置変更を紙一重で受け流しながら、不敵にせせら笑った。
— 馬鹿言え、そんなことを口にすれば敵に手の内を晒すことになるだろ。これこそが至高の連携ってやつさ。それに、お前はあの狂ったウサギ(ジン)の蹴りにも実戦で反応できるようになったんだ。これくらいの変異なら問題ないと思ってな。
アキラはさらに激昂した。
— 思ってな、だと!? もしお前の予測が完全に外れていたらどうするつもりだったんだ!?
レイは事も無げに答えた。
— その時は、お前たちの昏倒した身体をそこに置き去りにして全力で逃げ、目を覚ました後に一生からかい続けてやったさ!
ゼケは左の拳を固く握り締めながら、彼らの会話に割り込んだ。
— 随分と、俺たちの前で余裕を崩さないようだな。
レイは答えた。
— まぁ、そんなところさ……。
レイは激しい打撃を捌きながら、アキラに向けて叫んだ。
— アキラ、絶対にマラの身体に触れるな! まだ能力の基本原則を完全に解き明かしていない、間合いを保て!
— 理解している! とアキラは吼え、マラとの距離を厳格に維持しながら、「方向」の力を用いて執拗に敵の進路を遮断し、地面の破片を自らの力で浮遊させて次々と弾丸のように投げつけた。
レイとゼケの激突においては、レイは次の「空間移動」への収束を始めていた。しかし、ゼケがまさに拳を叩き込もうとしたその一瞬前、レイは別の座標へと離脱した。マラとの戦場と自らの対峙を完全に掌握し、ゼケの明確な隙を捉えて問いかけた。
— お前の能力、どうやらその「右手」に極めて重大な制約があるようだな……。あの「ソーラーレイ・エクスプロージョン」とかいう戯言は完全な欺瞞だった。俺たちの意識を逸らすため、お前は右手でマラに触れ、あいつの覚醒(出現)の時間を加速させたんだ。だが、お前たちの背後には明確な動作の残像が残っている。つまり、空間移動ではなく、お前がその右手で触れた対象の「速度(時間)」を異常なまでに跳ね上げているんだろ?
ゼケはマスクの裏で獰猛な笑みを浮かべた。
— だから、聡明なガキは嫌いなんだよ。正解だ、少年。俺の右手はあらゆる動作の所要時間を極限まで圧縮する。つまり、俺の意思一つで時間を二分の一に裁断できるんだ。最大で6秒間を分割可能で、俺が到達できる最速の裁断速度は0.375秒だ。
レイはゼケが能力の解説を口にしたその一瞬の空白を見逃さなかった。
*パチン!*
鋭い指鳴らしの音が響き、ゼケの至近距離へと瞬間移動した。その右腕を怪力で sımsıkı(強固に)掴み取る。
— お前が俺に触れたところで、何一つ事態は変わらない。結局、俺の速度が加速するだけだ。お前の力は、俺の肉体に直接的なダメージを与える性質のものではない! と彼は誇らしげに言い放った。
しかし、ゼケは冷酷にせせら笑い、自身の左手でレイの身体へと触れた。
— 時間を加速させるのは、あくまで俺の右手の特性だ……少年、お前の言う通りさ。だがな、俺のこの「左手」の力は、右手の完全な「真逆(反転)」なんだよ。
レイの肉体は、次の瞬間、完全に動作を遅延(減速)させられた。ゼケはすぐさま自身の右腕をレイの掌から力強く引き抜き、自らの左手に触れることで加速を上書きすると、わずか数秒のうちにアキラの真背後へと物質化した。ゼケは先ほどアキラと激突した際に看破した決定的な致命傷(弱点)を冷酷に告げた。
— お前の力、発動するためには必ず対象を視界に収める(見る)必要があるな、少年。
アキラは自身が視線を向け、意識を集中させた座標にしか「方向」の斥力を放つことができず、今の完全な死角からの奇襲に対しては、一切の防衛手段を失っていた。
ゼケは前方の相棒に向けて叫んだ。
— マラ、来い! こいつに触れろ! その後で、あの減速している空間移動のガキも片付けるぞ!
アキラは完全に無防備な状態に追い込まれていたが、その魂は決して屈しなかった。視界を完全に奪われた以上、敵へ向けて盲目的に拳を振るうような愚策はとらない。その代わりに、彼は自らの右腕に対して、前方(真後ろ)への猛烈な「方向の加速( ivmesi)」をダイレクトに与え、筋力と合致させた最強の拳を、背後に佇むゼケの手に向けて全霊で逆噴射させた。
*パチン!*
ゼケの右手は、アキラのその圧倒的な加速を伴った拳と激突したまさにその瞬間、凄まじい骨折音を響かせてねじ折られた! しかし、アキラの肉体には何の影響もなかった。彼の腕には、トマが心血を注いで作り上げたあの特殊な保護ブレスレットが装着されていたからだ。
ゼケが激しい激痛( acıyla)とともに後方へと吹き飛ばされる一方、レイは遅延させられた肉体で必死に叫んだ。しかし、すでにすべては手遅れだった。マラはその刹那の隙を絶対に見逃さなかった。アキラの肉体へと猛烈な速度で肉薄すると、その身体へ強固に接触した。アキラの肉体は一瞬にしてすべての生気を失い、通りの中心へと完全に昏倒して激しく崩れ落ちた。
レイは絶望のまま「アキラ!」とその名を叫んだ。アキラの意識は冷たい地面へと吸い込まれ、完全な漆黒の闇の中へと静かに消え去っていった。
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