[Arc 2] 第十三話:壊れた額縁 (The Broken Frame)
翌朝の日の出の最初の光が部屋に差し込む中、アキラとレイは身支度を整え、トマとリンの部屋へと向かった。レイがまさに扉を乱暴に開け放とうとしたその瞬間、アキラは自身の「方向」の力を発動してレイの動きを強引に阻止し、静かに扉をノックした。
レイは自身の右手をさすりながら、小声でささやいてにやりと笑った。
— ちぇー、不意打ちで開けた方が、少しは面白い反応が見られたのになぁ。
アキラは呆れたように深くため息をつき、レイを厳しく睨みつけた。
— レイ、一度くらいは自分の行動から学習しろよ。
レイは気にした様子もなく肩をすくめた。
— アキラ、お前はいつも大げさなんだよ。
二人は部屋の中に入り、トマとリンに朝の挨拶を交わした。トマは相変わらず机の上でマイクロチップの山と格闘していたが、驚いて椅子を振り返らせた。
— おはよう、アキラ、レイ。何か必要なものでもあるの?
アキラは本題を切り出した。実はトマ、お前に一つ頼みたいことがあるんだ、と彼は言った。その頃、レイはリンにちょっかいを出そうと彼女のすぐそばへと近づいていき、案の定、激しいカラスたちの猛攻を浴びていた。トマはアキラの依頼を聞くうちに、その瞳を熱い興奮に輝かせ、深く息を吐き出して微笑んだ。
— 分かったよ、アキラ。その仕事は俺に任せてくれ! 夜が来る前には、おそらく完全に完成しているはずだ。
アキラは深い感謝を込めて微笑んだ。
— 本当にありがとう、トマ。
アキラはレイの襟首を掴み、そのまま部屋の外へと引きずり出していった。レイは引きずられながらも手を振り、大声で叫んだ。
— またな、トマ!
長い廊下を歩きながら、レイはアキラへと尋ねた。
— なあ、お前、腹は減っているか?
— 正直、少し腹が減っているな、とアキラは答えた。
レイはニヤニヤと不敵な笑みを浮かべ、自身の端末から猛烈な速度で一条のメッセージを送信した。アキラは直感的に、こいつがまた碌でもない不祥事を起こしたことを見抜いた。
— おいレイ、お前また何をしやがった!? その端末で何を送ったのか、さっさと白状しろ!
まさにその瞬間、対向の廊下にある女子宿舎の方向から、ヒナとアカネの凄まじい絶叫が響き渡った。二人は激しい怒りを顔に浮かべて部屋から飛び出し、俺たちの元へと猛烈な速度で走ってきた。アカネは自身の端末の画面を突きつけるようにして怒鳴り散らした。
— レイ! この文面は一体どういう意味なのか、今すぐ説明しなさい!
そこには、完全にこのように書き連ねられていた。
「アカネ、アキラがさぁ、ダブルデートに行こうって言ってるぜ。俺とお前が付き合って、アキラとヒナの愛し合うカップルがロマンチックな飯を食うんだよ、チュッチュ!」
アキラの顔は純粋な恥ずかしさのあまり、まるで火が点いたように真っ赤に燃え上がり、廊下でレイの後を必死に追いかけ回し始めた。
— 殺してやる、レイ! 貴様、そこへ直れ!
ヒナとアカネは、アキラのこの完全に狼狽した大慌ての姿を見るうちに、こらえきれずに愉快そうに笑い声を上げた。
— もういいわよ、みんなで一緒に食事に行きましょう。どうせ今日の私たちは、これ以上大した任務も残されていないもの。
そう言って、彼女たちは揃って食堂の方向へと歩き始めた。
レイはアキラの耳元へと近づき、静かにささやいた。
— 悪かったな、友よ……。でもさぁ、本当は二人きりにしてほしかったんだろ?
アキラは顔を反対方向へと向け、
— レイ、頼むからもうその口を閉じてくれ。
と言いかけたその瞬間、前を歩いていた女子たちが突故として動きを止めたことに気づき、彼女たちに衝突する寸前でどうにか踏みとどまった。
ヒナとアカネの顔から、先ほどの晴れやかな笑みは一瞬にして消え失せ、その視線は罪悪感とともに冷たい床へと落ちていた。アキラが視線を上げると、自分たちの傍らを通り過ぎようとしていた2部隊の警察官たちと、亡きダイゴ隊長の右腕であるキョウの姿がそこにあった。警察官たちは新米たちに向けて激しい嫌悪の視線を放ち、キョウが冷酷に吐き捨てた。
— 見ろよ、こいつらを……。俺たちの先生はお前たちのその未熟さのせいで死んだというのに、これほど凄惨な事件の後でも、まだ笑いながら仕事を続けてやがる。恥知らずな奴らめ……。
ヒナ、アカネ、アキラの士気は完全に粉砕され、三人は言葉を失って頭を垂れた。しかし、レイが真っ直ぐ前方へと一歩を踏み出し、その瞳をキョウへと厳しく据えて、氷のように冷たい声で言い放った。
— 随分と、事件の全容も知らずに大口を叩くのが好きなようだな、お前たち。何せあの日、お前たちのようにテロ組織の襲撃かもしれないなどと言い訳を並べて、戦いもせずに引き返した臆病者とは違うんだよ! お前たちの先生は、アキラ、ヒナ、アカネの命を自らの盾となって守り抜き、勇敢に戦って散っていったんだ! 先生自身も、未熟な俺たちという未来を守ることの方が遥かに重要だと理解していた。それなのに、あんなに素晴らしい先達を持ちながら、お前たちがそんな醜い態度をとるなんて、本当に吐き気がする。ダイゴ先生がお前たちのこの無様な姿を見たら、さぞかし失望するだろうな! 結局のところ、あの人の傍らで命をかけて戦ったのは、お前たちのような臆病者ではなく、こいつらだったんだ。それを絶対に忘れるな!
2部隊の右腕であるキョウは怒り狂u(怒り狂い)、拳を握りしめて今にもレイへ殴りかかろうとした。まさにその瞬間、1部隊の教師であるヒデオが背後から現れ、その威圧的な声で激しく二人の間に割って入った。
— 恥を知れ、キョウ、そしてお前たちもだ。そこまでにしろ! こいつらはまだ新米だ。それに、もしあの先生の死に責任がある者を探しているというのなら、それは我々だ! 敵の武力を正確に見誤り、ダイゴをあの場所に一人残してしまったのは我々の失策だ。お前たちは直ちに自らの任務へ戻れ!
2部隊の警察官たちとキョウは歯を食いしばり、
— 御意、了解しました。
と低く呟き、その場から去っていった。1部隊の教師ヒデオは子供たちへと振り返り、優しく微笑みかけた。
— まぁ、ここに通りかかったのが俺でよかったよ。もしお前たちの教師であるあの戦闘狂のウサギ、ジンがここへ来ていたら、あの警察官たちがどのような惨状になっていたか、想像するだけでも恐ろしいな。ほら、そんなに簡単に気分を落とすんじゃない。
レイは笑みを浮かべ、ヒナの肩にそっと手を置いて話した。
— 俺たちはこれから飯を食う予定だったんです。デートを続けましょう。
ヒナは視線を伏せ、消え入りそうな声でつぶやいた。
— えっと……なんだか、すっかり食欲がなくなっちゃったみたい。私は部屋に戻ったほうがいいかもしれない。
1部隊の教師ヒデオは、立ち去ろうとしていたヒナの動きを静かに止めた。
— おい、子供たち。もし今暇なら、ちょっと俺について来い。
子供たちは驚きながらも、その静かな教師の後を追った。長い回廊を歩き、彼らは2部隊のエリアにある一枚の扉の前で立ち止まった。そこがダイゴ先生の個人執務室であることを理解し、中へと足を踏み切(足を踏み入れ)た。部屋の内部は空っぽで、至る所に荷物を詰めるための箱が山積みにされていた。ヒデオ先生が静かに語り出した。
— ここは残念ながら、片付けを行っている最中だ。彼の遺品を受け取ってくれる身内も、もうここにはいないからな。
ヒナは驚き、思わず言葉を挟んだ。
— でも先生……私は、ダイゴ先生はご結婚されているものと思っていました。彼の指には確かに指輪がありましたし、葬儀の場で誰よりも激しく泣いていたあの女性が、奥様だったのではないでしょうか?
レイはその質問を聞いた瞬間、部屋の最も暗い隅へと移動し、その目を鋭く細めながら、教師と仲間たちの挙動を精密に観察し始めた。1部隊の教師ヒデオは背を向け、机の上の箱から一枚の額縁を取り出すと、それをヒナの手へと静かに渡し、悲しい声で残酷な真実を明かした。
— ああ、彼の妻だったよ……。だが、あの女性は自ら命を絶った。自殺したんだ。
アキラ、ヒナ、アカネはその言葉に息を呑んだ。
— どういうことですか、先生……? とアキラは震える声で尋ねt(尋ねた)。ヒデオ先生は静かに語り始めた。
— 実際に葬儀の場で目にしただろう。奥様は見るからに衰弱し、細く、自らの足で立っていることさえままならない状態だった。数年前、ある大規模なテロ襲撃によって、ダイゴは4人の子供を一瞬にして失った。息子が1人、娘が3人、同時にだ……。奥様は4人の我が子の命を一度に奪われ、完全に精神を破壊され、それ以来引きこもるようになった。ダイゴ自身も、妻のあの衰弱していく姿と、4人の子供たちを守りきれなかった自らの無力さに毎夜激しく苦しみ、自分責め(自分を責め)続けていた。だからこそ、彼は自分の部隊の子供たち、そしてお前たちを本当の我が子のように見なし、お前たちを誰よりも厳しく鍛え上げることで、自分が犯したあの悍ましい過ちをお前たちにだけは絶対に繰り返させたくなかったんだ。だからこそ厳しく、同時に誰よりも慈悲深く、お前たちに大きな期待をかけていた。子供たちのことを、未だ研ぎ澄まされておらず、このままでは戦場で折れる運命にある「鈍い剣」として見つめていたんだ……。つまりな、子供たち。これでお前たちの心が軽くなるわけではないが、ダイゴはお前たちを救い出したあの瞬間、間違いなく心の底から救われたはずだ。今度は、自らの手で未来の子供たちを救うことができたのだからな。だから、少しは呼吸をしろ。周囲の雑音など気にするな。
アキラ、ヒナ、アカネは手の中の写真を見つめながら、静かに涙を流していた。その時、1部隊の教師ヒデオ・ミアズマは、部屋の奥で静まり返っているレイへと突如として視線を向けた。
— レイ、お前だな?
— はい、俺です、先生、とレイは自身の瞳をヒデオ・ミアズマ先生の真っ直ぐな目へと据えて答えた。
— ああ、よかった。お前にいくつか確認したい質問がある。聞いてもいいか?
— もちろんです、先生。どうぞ。
教師はゆっくりと、レイの真正面へと進み出て対峙した。
— お前は新米で、その能力は「空間移動」。間違いないな? サトシとの戦闘についてだが、実に賢く、戦略的に戦ったな。非常に、いや、本当に驚くほど印象的だった。特殊クラスとの実戦経験がない者としては、十分すぎるほどの戦果だ。サトシ本人からも直接話を聞き、少し尋問も行ったが、お前を随分と高く評価していたぞ。だがな……記録映像を確認しようとすると、お前がサトシを制圧したまさにその直後、なぜかすべての映像データが完全に途切れているんだ。単なる偶然のシステム不具合なのか、俺には分からないが……。それに、アキラ、ヒナ、アカネが警察署の医務室に突如として出現した件だ。目撃者もいなければ、痕跡もない。そこを離れていないということだけは、サトシ自身が記憶している限りでも証言している。
レイはいつもの生気のない、冗談めかした小さな笑みをその顔に浮かべた。
— えっと……先生、俺、いま取り調べを受けてる最中ですか?
1部隊の教師ヒデオは軽く笑り(軽く笑い)、両手を自身のポケットへと収めた。
— いや、違うさ……。お前の存在が、随分と気になっただけだ。もし良ければ、俺の1部隊へ移籍してこないか? あの戦闘狂のウサギ、ジンの傍にいると、お前のその稀有な知性が鈍って( körelebilirなど余計なものはない)しまうかもしれない、もったいないだろ。
レイは一切の躊躇なく、その申し出を即座に断った。
— いえ、ヒデオ先生、ありがたいお言葉ですが、俺たちの部隊にはヒナ、アカネ、リン、トマみたいな可愛い女の子たちが揃っていますので、断らざるを得ませんね。
1部隊の教師ヒデオは深くため息をつき、静かに笑った。
— なるほどな。高い地位よりも可愛い女の子を選ぶというわけか……。まぁいいさ、それではな、みんな。だが忘れるなよ。アキラ、ヒナ、アカネは明日、正式な報告を提出しに俺のオフィスへ来い。お前たちが精神的に立ち直ったかどうかを確認するための対話だったんだ。レイ、お前は来なくていい。お前とはもう、十分に話したからな。
そう言い残し、彼は執務室の外へと歩き去っていった。部屋を支配していたあの息の詰まるような重苦しい空気は、彼の退出とともにゆっくりと霧散していった。子供たちは、ダイゴ先生の思い出と無数の箱で満たされたこの空間を、静かに、そして厳かに後にした。
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