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奴隷紋を魔改造したらヒロインたちが覚醒しました 〜追放された最弱付与術師、最強の従者たちと世界最深ダンジョンを制覇する〜  作者: 悠々


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第5話 二人で作る最初の温もり

「おい、無能。そこで何をしている」


不快な、聞き慣れた声がギルドのロビーに響いた。

振り返ると、レオが腕を組み、俺を蔑むような目で見下ろしていた。その後ろにはミリアとダグも並んでいる。


「レオか。別に、依頼の報告をしていただけだよ」


俺は努めて冷静に答え、手元にある金貨二枚を素早くポケットに収めた。


「ふん、ネズミ退治で小銭でも稼げたか。だが、俺たちSランクパーティーとは住む世界が違う。せいぜい一生、下水道の泥水でもすすりながら生きていくんだな」


レオが鼻で笑った。


「そうですね。俺たちは俺たちの身の丈に合った仕事をします。お邪魔でしょうから、これで失礼します」


俺がまともに相手をせず歩きだそうとすると、今度はミリアが遮るように前に立った。彼女の視線が、ルナが抱きしめている錆びかけたショートソードに向けられる。


「ちょっと、そのボロっちいオモチャは何? そんなのを武器にして戦わせてるの? 本当に惨めで見ていられないわ。そんな獣人、戦力になるわけないじゃない」


「なっ……! 主様を悪く言うのは許しません……!」


ルナが鋭く耳を伏せ、怒りに瞳を細めた。

彼女の体内のバグバフが再びプレッシャーとなって噴き出そうとするのを、俺はそっと彼女の肩に手を置いて遮った。


「行こう、ルナ。無駄な言い争いをしている時間はないんだ。今日のご飯は何にするか、歩きながら決めよう」


「あ、はい……主様がそうおっしゃるなら」


俺に促され、ルナはしぶしぶといった様子でレオたちへの睨みを解き、俺の隣に並んだ。


「ハッ、逃げるのか無能め。おいレオ、行こうぜ。あんな雑魚に構うだけ時間の無駄だ」


ダグの退屈そうな声を背中に聞きながら、俺たちはギルドの重い扉を押し開けて外へ出た。

沈みかけの夕日が王都の街並みをオレンジ色に染めている。


「主様、申し訳ありません。わたしがまた、カッとなってしまって……」


「いや、ルナが怒ってくれたのは俺のためだろ? 嬉しかったよ。ありがとう」


俺が彼女の頭をそっと撫でると、ルナの犬耳が嬉しそうにパタパタと小刻みに揺れた。


「さあ、まずはその泥だらけの服を着替えよう。衣服店へ行くぞ」


俺たちは大通り沿いにある、手頃な大衆向け仕立て屋に入った。

店内に並ぶ衣服を見て、ルナは目を輝かせながらも、自分の汚れた服を気にして縮こまっている。


「主様、わたしのような奴隷が、こんな綺麗な服を着てもいいのでしょうか……?」


「ルナはもう奴隷じゃない。俺の大事なパートナーだ。さあ、好きなものを選んでごらん。汚れが目立ちにくくて動きやすいものがいいね」


俺がそう言うと、店員がルナのサイズに合った、深い紺色のシンプルなワンピースと、歩きやすそうな革のハーフブーツを持ってきてくれた。

ルナはそれを受け取り、試着室へと入っていった。

数分後、試着室のカーテンがゆっくりと開く。


「あの、主様……どうでしょうか? へんじゃありませんか……?」


そこには、泥汚れを落とし、新しい紺色のワンピースに身を包んだルナが立っていた。

サイズもぴったりで、彼女の白に近い灰色の髪と非常に相性が良い。


「とても似合っているよ、ルナ。すごく可愛いね」


俺が心の底から称賛すると、ルナは一瞬で顔を真っ赤にし、犬耳をぱたぱたと忙しなく動かした。


「か、可愛いですなんて……そんなこと言われたの、生まれて初めてです……! ありがとうございます、主様!」


ルナの嬉しそうな笑顔を見て、俺の心もすっかり温かくなった。

服の支払いを済ませた俺たちは、次に市場へ向かい、新鮮な牛肉、ジャガイモ、人参、タマネギ、そして焼き立ての白パンをたくさん買い込んで、アパートへと帰宅した。

狭いアパートの共同キッチン。

俺は食材をまな板の上に並べた。


「よし、今日はルナの快気祝いと、初戦闘の勝利を祝して、具沢山の肉シチューを作ろう」


「シチュー、ですか? あの、わたし、料理なんてしたことがなくて……。前のところでは、いつも冷え切った残飯を投げつけられるだけでしたから」


ルナが申し訳なさそうに指をもじもじと動かした。


「大丈夫だよ。俺が教えるから、一緒に作ろう。まずはジャガイモの皮をむくんだ。こうやって包丁を使うといいよ」


俺が手本を見せると、ルナは真剣な表情で包丁を握り、驚くほど手際よく作業を進めていった。流石は覚醒したステータスだ。手元の器用さも異常に高い。

二人で交代しながら野菜を切り、鍋で肉を炒め、じっくりと煮込んでいく。部屋の中に、肉とスパイスのたまらない美味しそうな香りが満ちていった。


「できたぞ。さあ、冷めないうちに食べよう」


テーブルの上に、湯気の立つシチューと切り分けた白パンを並べる。

ルナはスプーンを握り、おそるおそるシチューをすくって口に運んだ。

もぐもぐと一口噛み締め、その動きが止まる。

そして、ルナの大きな瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。


「ルナ!? どうした、熱かったか?」


「いえ……ちがいます。おいしくて……とっても、あったかくて……。こんなに美味しいもの、生まれて初めて食べました……!」


涙を拭いながら、ルナはまたシチューを口に運び、幸せそうに頬張った。そのもぐもぐと食べる姿を、俺はなんだか胸がいっぱいになりながら見守っていた。

前世、冷たいコンビニ弁当をパソコンの前で胃に流し込んでいた俺にとっても、誰かとこうして作ったばかりの温かい食事を囲む時間は、何よりも得難いものだった。


「主様も、早く食べてください。冷めちゃいます!」


「ああ、そうだな。いただきます」


二人でパンをシチューに浸しながら、笑い合って食べる時間はあっという間に過ぎていった。

食後、温かいハーブティーを飲んでいると、ルナがしきりにこっくりこっくりと船を漕ぎ始めた。今日の戦闘と急激な回復の緊張が、一気に解けたのだろう。


「ルナ、眠いならベッドを使ってくれ」


「ふぇっ? だ、ダメです! わたしは床で寝ます。主様がベッドを使ってください!」


「俺は床でもどこでも寝られるから大丈夫だよ。ほら、横になりなさい」


俺が毛布を広げると、ルナはもじもじとしながらベッドに入った。

俺がランプの火を消し、床の毛布にくるまろうとしたその時、袖口をきゅっと掴まれた。


「あの……主様。その、床は冷たいですし……一緒に、寝てはいけませんか……?」


暗闇の中、恥ずかしそうに囁くルナの声が聞こえた。

俺は一瞬戸惑ったが、彼女の寂しそうな、置いていかれたくないという不安そうな気配を感じて、シーツの端に入り込んだ。

すかさず、ルナの温かい身体がすり寄ってきて、俺の腕にしがみつく。


「主様……あったかいです……」


安らかな寝息を立て始めるルナ。

その温もりを感じながら、俺はこの穏やかな日常を、絶対に手放さないと心に誓った。

しかし深夜、王都の静寂を切り裂くように、ギルドの方角からけたたましい緊急招集の鐘の音が鳴り響いた。

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