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奴隷紋を魔改造したらヒロインたちが覚醒しました 〜追放された最弱付与術師、最強の従者たちと世界最深ダンジョンを制覇する〜  作者: 悠々


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第4話 初めての共闘と圧倒的な力

「うわぁ、やっぱり独特な臭いがするな……」


王都の地下へ繋がる重い鉄格子をくぐり、俺は顔をしかめた。

石造りの頑丈な下水道。薄暗い通路には濁った水が流れ、湿った冷気とカビ、そして獣の臭いが混ざり合って漂っている。


「主様、足元が滑りやすくなっています。お気をつけください」


ルナは錆びかけのショートソードを構え、俺の一歩前を歩きながら周囲を警戒していた。彼女の犬耳は左右に細かく動き、暗闇の僅かな音も逃さないように集中している。


「ありがとう、ルナ。少し灯りを強化するよ。【付与魔術:光拡ライト】」


俺がルナの持つショートソードの剣先に向けて魔法を唱えると、ぽわんと温かい白い光が灯り、周囲数メートルを照らし出した。


「わあ……! 主様の魔力、とっても温かいです。なんだか、身体の中から力が湧いてくるみたいで」


ルナが嬉しそうに尻尾を振った。

「光拡」はただの照明魔法だ。しかし、俺たちの繋がったパスを通ることで、ルナの五感を鋭敏にする「夜視」と「集中力向上」の乗算バフが同時にかかっている。


「キー、キキキキッ!」


不意に、暗闇の奥から嫌な鳴き声が聞こえた。

光の届かない通路の先から、赤い目が無数に浮かび上がる。

体長一メートルはある巨大なドブネズミ――『ジャイアント・ラット』の群れだ。その数、五匹。Fランク冒険者にとっては、囲まれれば命に関わる凶暴な魔物である。


「主様、来ます!」


「ルナ、慌てなくていい。正面から三匹、右の壁を這って二匹だ。正面のやつらを片付けた後、右に回り込んでくれ!」


「了解しました!」


ルナの返事と同時に、大ネズミたちが一斉に飛びかかってきた。

だが、ルナの動きはそれを遥かに上回っていた。

タァン! と、濡れた石畳を蹴る鋭い音が響く。

ルナの姿が一瞬でブレて、大ネズミたちの視界から消えた。


「――えっ?」


大ネズミが困惑した声を上げる暇さえなかった。

ルナが正面の三匹をすれ違いざまに横薙ぎに一閃。

ただの錆びたショートソードが、まるで見えない大鎌のように大ネズミたちの硬い毛皮と肉を、骨ごとあっさりと両断した。


「ギィッ……!?」


悲鳴すら上げられず、三匹の肉塊が地面に転がる。

着地したルナはすぐさま反転し、右の壁から飛びかかろうとしていた残り二匹の懐へと滑り込んだ。

今度は下からの切り上げ。

流れるような二連撃が空を裂き、ネズミたちは一瞬でゴミのように床へ叩きつけられ、動かなくなった。


「ふぅ……。主様、正面と右、すべて片付けました!」


ショートソードに付いた血をピッと払い、ルナが満面の笑みで俺を振り返った。

その間、わずか三秒。

ルナの息は全く乱れておらず、服にも返り血一つ付いていない。


「……すごいな。完璧以上の動きだ」


「えへへ、主様に褒めてもらえました! でも、本当に驚きました。主様が敵の位置を指示してくれたので、まるで敵の動きが止まっているみたいにゆっくり見えたんです」


ルナの犬耳が嬉しそうに伏せられ、尻尾がプロペラのように激しく左右に振られている。健気な忠犬そのものの姿だが、足元に転がっている大ネズミたちの惨状を見ると、そのギャップに少し冷や汗が出る。


「よし、討伐証明の尾を回収して、もう少し奥に行ってみよう」


俺たちはネズミの尾をナイフで切り取り、下水道の深部へと進んだ。

その後も何度かネズミの群れに遭遇したが、ルナの電光石火の剣技の前には文字通り一撃の壁すらなく、ただの作業のように駆除が進んでいった。

しかし、下水道の最奥、最も広い排水室にたどり着いた時、空気が一変した。


「……ぐるるるぅ……」


排水口の巨大な泥の塊が盛り上がり、うねるようにして立ち上がった。

それは体長五メートルを超える、極太のミミズのような魔物だった。無数の鋭い牙が同心円状に並んだ口を開け、粘液を撒き散らしている。

下水道の主――Dランク相当の魔物『ディープ・ワーム』だ。


「おいおい、なんでこんなところにディープ・ワームがいるんだよ……」


「主様、下がってください! こいつは危険です!」


ルナが鋭い表情で俺の前に立ち、剣を構えた。

普通のFランクパーティーなら全滅を避けるために一目散に逃げ出す場面だ。だが、俺はルナのステータスを思い出した。


「いや、ルナ。逃げる必要はない。こいつを倒して、今日の晩飯を豪華にしよう」


「えっ……? 倒せるのですか?」


「ああ。俺の付与を最大まで乗せる。【付与魔術:迅雷ライトニング】」


俺が全魔力を込めてルナのショートソードに触れると、剣身に激しい青白い電光が宿り、バリバリと空気を引き裂く轟音が下水道に響き渡った。

契約魔改造のバグにより、電撃の威力もまた十倍になっている。


「……すごい、剣が鳴っています! 主様、行ってきます!」


「いけ、ルナ! 一撃で終わらせろ!」


ルナが地を蹴った。

その速度は、先ほどの比ではなかった。

ドォン! とソニックブームに近い衝撃波が排水室に吹き荒れる。

ディープ・ワームが巨体をくねらせて迎え撃とうとしたが、ルナはすでにその頭上に跳んでいた。

上空からの縦一文字。

雷を纏ったショートソードが、ワームの巨大な脳天から尾の先までを、光の速度で一刀両断にした。

ワームの巨体が真っ二つに裂け、内側から激しい電流が爆発する。


「ギャァァァアアアッ!」


断末魔の叫びと共に、巨体が激しく痙攣し、やがて炭化して崩れ落ちた。

ドサリ、と静まり返った下水道に、ワームの死体が転がる。

着地したルナは、自分の剣に宿る電撃の残光を見つめ、それから俺の方へと嬉しそうに駆け寄ってきた。


「主様! 主様の雷、凄まじい威力でした! わたし、ただ剣を振り下ろしただけです!」


「いや、ルナの踏み込みと踏破速度があってこそだよ。本当によくやった。……よし、このワームの魔石を回収して、ギルドに戻ろう」


俺たちはワームの体内から拳大の立派な魔石を抉り出し、下水道を後にした。


夕暮れ時の冒険者ギルド。

俺たちが受付カウンターに大ネズミの尾と、ディープ・ワームの魔石を置くと、受付嬢は目を丸くして硬直した。


「こ、これは……ディープ・ワームの魔石、ですか!? Fランクの依頼のはずですが……」


「下水道の奥に迷い込んでいたので、駆除しておきました」


「そ、そんな……単独でディープ・ワームを討伐するなんて……。買取額と依頼達成報酬を合わせて、金貨二枚になります!」


金貨二枚。宿屋に一ヶ月泊まり、毎日肉料理を食べてもお釣りが来る大金だ。

周囲の冒険者たちが、信じられないものを見る目で俺たちを見つめ、ひそひそとざわめき始める。


「おい、マジかよ……あの無能がディープ・ワームを?」


「隣の獣人、ただの奴隷じゃねえぞ。あの魔石を平気な顔で持ち帰るなんて……」


金貨を受け取り、ルナと顔を見合わせて微笑み合ったその時、ギルドの重い木製の扉が勢いよく開かれた。

入ってきたのは、きらびやかな金属鎧に身を包んだ男たち。

Sランクパーティー『金色の獅子』のレオ、ミリア、ダグの三人だった。

レオの目が俺の姿を捉え、その眉が不快そうにピクリと跳ね上がった。

俺とレオの視線が、真っ向からぶつかり合う。

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