第42話 王都の危機と最強の防壁
「旦那様、ウチ、いくぞ! 限界まで魔力を注ぎ込んでくれ!」
クララがそう叫びながら、オリハルコンの巨大盾『神匠の絶対防盾』を、瓦解した門の地面へと深く突き刺した。
「任せろ、クララ! 全パス開通、最大出力だ!」
俺は『契約魔改造』の全接続パスを全開にし、俺の持つ魔力とデバッグ権限を、クララの盾へと一気に集中させた。
頭の中に、システムコードが凄まじい速度で展開される。
『バフ対象:クララおよび神匠の絶対防盾』
『バフ設定:絶対防御結界、超広域展開』
『倍率設定:十倍』
『適用エリア:王都全域』
「おおおおおおおっ!」
クララの気合の叫びと共に、盾から極太の黄金の光の柱が天に向かって撃ち放たれた。
その光は上空数千メートルで大輪の花のように広がり、瞬く間にドーム状の半透明の障壁となって、王都全域を完全に包み込んだ。
黄金の障壁は、まるで神話の神が展開したかのように、美しく厳かに輝いている。
『グオオオオオオオ!』
そこへ、活性化した数千の神話級モンスターが津波のように突撃してきた。
彼らの巨大な爪や牙、口から放たれる熱線や電撃が、一斉に黄金の障壁へと叩きつけられる。
ドゴォォォォォォォン!
天地を揺るがす大爆発が障壁の表面で巻き起こり、周囲は凄まじい閃光に包まれた。
逃げ惑う市民や冒険者たちが、終わりの衝撃を覚悟して悲鳴を上げる。
だが、爆煙が晴れた後に広がっていたのは、寸分の傷もなく輝き続ける黄金の障壁と、激突した衝撃の十倍反射によって粉々に砕け散り、自滅していくモンスターたちの死屍累々たる光景だった。
「な……に……?」
「嘘だろ……。王都全体を包み込む結界なんて……大賢者が十人集まったって不可能なはずだぞ……」
「それに、あの魔物たちが、激突しただけで勝手に砕け散っていく……」
這いつくばっていた冒険者たちが、信じられないものを見る目でクララの盾を見つめ、そして俺たちを見上げた。
「す、凄い……! 俺たちは助かったんだ!」
「アルス様だ! 追放されたアルス様が、俺たちを見捨てずに救ってくれたんだ!」
王都中に、歓喜と安堵の叫びがこだまする。
「クララ、大丈夫か?」
「へへ、旦那様のバフが凄すぎて、反動なんてこれっぽっちもないぞ! この盾なら、世界がひっくり返っても王都を守り抜いてみせるぞ!」
クララが額の汗を拭いながら、頼もしく笑った。
「ルナ、セレナ。結界から漏れ出た残党の処理と、ギルドにいる負傷者の救護誘導を頼む」
「はい、主様! 一匹残らず片付けます!」
ルナが神速で影と化し、結界の外縁部でうろつく魔物を瞬殺していく。
「救護ね、任せて。精霊たちを使って、回復魔法を広域に降らせてあげるわ」
セレナが杖を振ると、王都全域に柔らかな翠の光の雨が降り注ぎ、傷ついた人々を治癒していく。
かつて俺たちを見下し、使い捨てにしようとした地上の国家やギルド。
だが、その人々が今、俺たちを救世主と崇めて涙を流している。
因果応報はすでに終わっている。今ここにあるのは、圧倒的な力で世界をねじ伏せる俺たちの背中だ。
「旦那様、王都の防衛は完璧だぞ。クランハウスの防衛結界も、この盾の波長と同期させて最大出力にしておいた!」
クララが誇らしげに報告してくれた。
「ありがとう、クララ。これで地上の心配はなくなった。だが、24時間の猶予のうち、すでに1時間が経過している。システムの暴走を根本から止めない限り、初期化は免れない」
俺は空に浮かぶアヴァロンを見据えた。
「いきましょう、主様。世界のルールだろうが何だろうが、主様を脅かすものは全部切り裂いてみせます」
ルナが俺の隣に並び、手を握りしめる。
「そうね。あなたのバグを修正する旅に、最後まで付き合うわ」
セレナが不敵に微笑む。
「ウチもだぞ、旦那様! 世界のコアを魔改造しに行こう!」
クララも盾を担ぎ直した。
王都の人々の感謝と祈りの声を受けながら、俺たちは再び、神話の迷宮の最深部「神罰の玉座」へと突入するのだった。




