第37話 神殺しの武具、誕生
「できたあああああ! ついに、ウチの最高傑作が完成したぞおおお!」
クララの歓声が、オアシスに響き渡った。
第92層のオアシスエリア。
安全が確保されたこの場所で、俺たちは数日間キャンプを張り、クララの鍛造作業を見守っていた。
採掘した大量の『オリハルコン』。そして、第33話のシステムログから読み解いた古代の『デバッグコード』。クララはその二つをドワーフの秘伝技術で融合させ、前代未聞の魔改造装備の鍛造に挑んでいたのだ。
俺は作業中のクララに、『精密鍛造』と『能力極大化』の十倍バフを常時かけ続けていた。十倍の集中力と十倍の器用さを得たクララのハンマーは、硬いオリハルコンを粘土のようにこね回し、芸術品のような防具へと仕上げていった。
テーブルの上に並べられた4つの装備は、どれも神々しい光を放っている。
「旦那様、これが旦那様のために造った武器と指輪だぞ!」
クララが誇らしげに差し出してきたのは、金と青のラインが走るオリハルコン製のショートソード『システム・ブレイカー』と、精緻なプログラムの文字列のようなルーンが刻まれた指輪『マスター・アクセス』だった。
「システム・ブレイカー……? かっこいい名前だな」
「へへ、ただの剣じゃないぞ。指輪『マスター・アクセス』で旦那様の管理者権限を最大化し、剣で斬りつけた相手の防御設定を強制的に『ゼロ』に書き換えて、直接肉体を削り落とす。つまり、相手がどれだけ強い絶対防御を持っていても、完全に無視して一撃を通すチート武器だ!」
クララの説明に、俺は息を呑んだ。
防御無視――いや、システム的な『防御値の消去』か。まさにデバッガーならではの武器だ。
「そして、これがルナちゃんの『神速の白影』! ルナちゃんが神速で動くときの空気の摩擦熱を自動で魔力シールドに変換する、白銀の軽鎧だぞ!」
「わぁ……! 軽くて、まるで何も着ていないみたいです! それに、身体の動きが少しも邪魔されません!」
ルナがその場でくるりと回り、嬉しそうに尻尾を振る。
「セレナちゃんの『精霊王の天衣』は、精霊界からの魔力逆流を完璧に制御して、魔法の燃費と威力をさらに3倍にする翠のローブだ!」
「……素晴らしいわ。これを着ているだけで、精霊たちが私の周りで楽しそうに踊っているのがわかる。魔力の制御も、信じられないくらいスムーズよ」
セレナがローブの袖を撫でながら、うっとりとした表情で呟く。
「で、これがウチの盾『神匠の絶対防盾』! 旦那様の十倍バフと合わせれば、神様のいかずちだろうが世界崩壊の爆発だろうが、すべての攻撃のベクトルを反対に変えて跳ね返す、完全無敵の盾だ!」
クララが自分の体よりも大きなオリハルコンの盾を叩いて笑う。
全員が新しい装備に身を包んだ。その姿は、地上のどんな高名なSランクパーティーよりも洗練され、神々しいオーラを放っている。
「みんな、本当によく似合っているよ。クララ、最高の仕事をしてくれたな。ありがとう」
俺がクララの頭を優しく撫で回すと、クララは顔を真っ赤にして、「へへぇ……旦那様に撫でられると、疲れが全部吹っ飛んじゃうぞ!」と嬉しそうにすり寄ってきた。
「主様、これで私たちの力はさらに何倍にもなりました。どんな強敵が現れても、一瞬で切り裂いてみせます!」
ルナが魔剣を握りしめ、力強く言う。
「そうね。最深部の守護者がどんなルールを持っていても、アルスの防御無効と私の無限魔法があれば、敵ではないわ」
セレナも不敵に微笑む。
「ああ。いよいよ次は第95層以降の未踏エリアだ。準備はすべて整った。天空都市アヴァロンを、俺たちの手で勝ち取りにいこう」
俺が宣言すると、三人は一斉に力強い声を上げた。
新たな神話級の装備をまとい、チートの限界をさらに突破した俺たちは、ダンジョン最深部への最後の進撃を開始するのだった。




