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奴隷紋を魔改造したらヒロインたちが覚醒しました 〜追放された最弱付与術師、最強の従者たちと世界最深ダンジョンを制覇する〜  作者: 悠々


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第36話 セレナの「精霊界」接続

「精霊たちが……何も囁いてくれない。私の魔力が、練れないの……っ!」


セレナが自分の手を見つめながら、青ざめた表情で言った。彼女の持つ魔改造された杖『精霊王の息吹』も、今はただの綺麗な飾りのように冷たく沈黙している。


第92層。


そこは、草木も生えない赤茶けた大地が広がる『無魔の荒野』だった。


このエリアは特殊な環境ルールが設定されているらしく、大気中の魔力が完全にゼロに固定化されている。その結果、魔法使いであるセレナは指先から火を灯すことすらできなくなっていた。


「旦那様、ウチの防衛盾も結界が張れないぞ! ただの重たい金属の板になっちまってる!」


クララも焦りの声を上げる。彼女の大盾から浮かび上がる黄金の絶対障壁も、大気中の魔力を起点に発動するシステムだったため、完全に沈黙していた。


「ルナ、敵の接近を防いでくれ!」


「はい、主様!」


ルナが魔剣を構えて前方に立ちふさがるが、荒野の地中から、巨大なムカデのような魔物『マナ・イーター』が何十匹も這い出してきた。


魔力を感知して喰らう深層の魔物だ。魔法が使えない俺たちを、格好の獲物と見なして群がってくる。


「主様、数が多いです! 物理攻撃だけでは、突破されかねません!」


ルナが音速の爪撃で次々と魔物を切り裂くが、無限に湧き出すマナ・イーターの群れに徐々に押し戻されていく。


セレナは恐怖に震えながら、俺の袖を掴んだ。


「アルス……私、もう何もできない。あなたを守ることも……」


「馬鹿を言うな、セレナ。お前が俺を守るんじゃない。俺たちがお互い支え合うんだ」


俺はセレナの肩を優しく抱き寄せ、彼女の目を見つめた。


「大気中の魔力がないなら、別の場所から直接引っ張ってくればいいだけの話だ。この世界のシステムなんて、俺の『契約魔改造』でどうとでもハッキングできる」


「え……? 別の場所って……?」


「この世界のシステムデータベースの裏側――『精霊界』だ」


俺はセレナの胸元、服の隙間から覗く『精霊王の寵愛』の契約紋に右手を当てた。


頭の中にシステムコンソールを展開し、超高速で魔力接続パスの再定義を行う。


「制限コード解除。対象の魔力供給源を変更する。ローカルの大気魔力から、別次元である精霊界の直通ゲートへと接続をバイパス! ――インストール開始!」


俺の魔力がセレナの紋様に浸透し、コードが書き換えられていく。


『警告:異次元接続は一時的なエラーを引き起こす可能性があります』


「関係ない、強制実行だ!」


カチリ、と頭の中で何かが繋がる音がした。


その瞬間、セレナの契約紋から、周囲の闇を一瞬で吹き飛ばすほどの凄まじい翠色の光が放たれた。


『接続完了:精霊界からの魔力バイパスを常時開放します。魔力最大値を十倍から『無限』へと変更します』


「あ……あああ……っ!」


セレナが大きくのけぞり、その瞳が翠色の光を宿した。


彼女の身体から、大気中に存在しないはずの圧倒的な質量の魔力があふれ出し、荒野の重たい空気を無理やりねじ伏せていく。


「精霊の声が聞こえる……ううん、これまでの比じゃないわ! 世界の裏側から、精霊王たちが私に直接魔力を注ぎ込んでくる……!」


セレナが魔改造された杖を天高く掲げた。


「アルス、見ていて。あなたのくれたこの力で、あのゴミ虫どもを塵にしてあげるわ!」


セレナが呪文を唱える必要すらなかった。彼女の意志のままに、荒野の空に巨大な翠色と紅蓮の魔法陣が同時に展開される。


「いでよ、風の精霊王! 火の精霊王! ――『爆炎暴風陣』!」


ドゴォォォォォォォォン!


荒野全体が、一瞬にして超高熱の炎と真空の刃の嵐に包まれた。


大気中の魔力を一切使わない、精霊界から直接具現化された純粋なエネルギーの濁流。マナ・イーターの群れは、魔力を喰らう暇さえ与えられず、一瞬にして分子レベルで蒸発し、消滅した。


それだけではない。


吹き荒れた精霊の魔力は、不毛だった無魔の荒野の大地を癒やし、急速に緑豊かな草原と、澄んだ水が湧き出るオアシスへと変貌させていく。


ほんの数十秒前まで死の世界だった場所が、今は美しいエデンへと生まれ変わっていた。


「……すごい、私、精霊王を二人も同時に……」


セレナが自分の手見つめ、信じられないといった様子で呟く。


「完璧だ、セレナ。無魔の荒野のルールを力ずくで書き換えたな」


俺が笑顔で彼女の頭を撫でると、セレナは顔を真っ赤にして、俺の胸に強く顔を押し当てた。


「アルス……私、もうあなたなしじゃ生きられないわ。こんな凄い力を私にくれるなんて……本当に、大好きよ」


普段のクールなツンデレはどこへやら、セレナは完全に俺に身を委ねて甘えてくる。


「主様、セレナばかりずるいです! 私も抱きしめてください!」


ルナが尻尾を激しく振りながら割り込んできた。


「おいおい、旦那様、ウチも忘れないでほしいぞ!」


クララも盾を置いて俺の腰に抱きつく。


精霊界との直通接続という、世界の物理法則すら無視したチート魔法を手に入れ、俺たちの最深部攻略への歩みは、さらに加速していくのだった。

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