第30話 勝利の祝杯と次なる扉
「みんな、本当によくやった。乾杯しよう!」
クランハウスの広いリビング。
大理石のテーブルの上には、俺たちが獲得した『クランバトル』の莫大な賞金(金貨百枚)と、ルナが腕によりをかけて作った、豪華な肉料理やシチュー、新鮮な果物が山盛りに並んでいた。
俺がグラスを掲げると、三人の少女たちが嬉しそうにグラスを合わせた。
「カンパーイ!」
元気な声が響き、宴が始まった。
レオ、ミリア、ダグの三人は、暗殺未遂、ギルド職員への贈賄、違法呪道具の使用、および使用禁止薬物の使用などの複数の重罪により、冒険者資格を永久剥奪され、王都の最下層の地下牢獄へと投獄された。彼らが二度と日の光を浴びることはないだろう。
俺たちを陥れようとした汚職職員たちもすべて一網打尽になり、ギルド内は完全にクリーンになった。
「旦那様! 今回の戦いで、レオのクランハウスと財産も全部うちのクランの所有物になったぞ! これで当分の間、お金に困ることはないな!」
クララが大きな骨付き肉をかじりながら、嬉しそうに笑った。
「ええ。それに、ギルドでの私たちの評判も最高潮よ。今や王都で一番注目のクランだって受付嬢が言っていたわ」
セレナが上品にワイン(薄い果実水だが)を口にし、そっと俺の隣に座り直した。お風呂上がりの甘い香りが、再び俺の理性を揺さぶる。
「主様、ルナは主様と一緒にこの家で暮らせて、本当に幸せです。これからも、ずっと美味しいご飯を作りますね」
ルナが俺の腕にすり寄り、しっぽを激しく振っている。
俺は彼女たちの笑顔を見つめながら、前世の孤独なデスクワークと、この世界での理不尽な追放劇を思い出し、心から「安住の地」を手に入れたのだと実感した。
だが、俺はポケットから、クランバトルの勝利報酬として手に入れた、ゴーレムのコアの奥に眠っていた不思議な「浮遊石」を取り出した。
「クララ、セレナ。……これを見てくれ」
俺が手のひらの上でその青い結晶を転がすと、結晶は重力を無視して、俺の手の数センチ上でふわふわと浮遊し始めた。
さらに、俺の指先が触れた瞬間、結晶の表面に、俺にしか読めない「日本語」のような光の文字が浮かび上がった。
「重力制御システム……オンライン。天空都市『アヴァロン』の起動キー……?」
俺がその文字を口にすると、セレナの長い耳がピクリと動いた。
「アヴァロン……。それ、エルフの古い伝承に残っている、神話の迷宮の最深部に眠る『天空の空中都市』の名前よ。まさか、その石が……?」
「ああ。どうやら、このダンジョン『神話の迷宮』の最下層を制覇すれば、俺たちは誰も手出しできない、空に浮かぶ完璧な我が家を手に入れられるらしい」
俺の言葉に、ルナとクララ、そしてセレナが目を輝かせた。
「空に浮かぶ家……! 旦那様、それ、絶対にうちが改造して、世界一の要塞空中クランホームにしてやるぞ!」
「面白そうね。アルス、私たちがそこへ連れていってあげるわ」
「主様、ルナも全力で主様を支えます!」
三人の温かい手が、俺の手の上に重なった。
俺たちのクランハウスの暖炉で、薪がパチパチと爆ぜる優しい音が響く。
王都の喧騒を遠くに聞きながら、俺たちは次なる「完璧な安住の地」を目指し、新たな一歩を踏み出すことを決意した。
静かな夜風が森の葉を揺らし、俺たちの我が家に、穏やかな安息の夜が訪れていた。




