第27話 クランバトル開幕
「おい見ろよ! いよいよクランバトルが始まるぞ!」
「Sランクパーティー『金色の獅子』対、新進気鋭の無能クラン! 勝つのはどっちだ!?」
王都中央広場。
巨大な投影魔導器のスクリーンの前には、数千人もの大観衆が詰めかけ、まるでお祭りのような熱気と大歓声に包まれていた。
ダンジョンの入り口である、巨大な黒い石門の前に、俺たちとレオたちが対峙していた。
レオは真っ赤な目をギラつかせ、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべていた。彼らのクランメンバーの様子が、どこかおかしい。全身の血管が浮き上がり、異常な興奮状態でハァハァと荒い息を吐いている。
「アルス……! 今日がお前の最後だ! せいぜいダンジョンの奥で、のたれ死ぬ姿を王都の奴らに晒すんだな!」
レオの声は、少し掠れて狂気を帯びていた。
(あれは……使用禁止の軍用ドーピング薬『魔血狂化薬』だな。魔力を一時的に暴走させて戦闘力を上げるが、脳と肉体に深刻な後遺症を残す禁忌の薬だ)
俺はレオたちのステータスが、不自然に膨れ上がっているのを鑑定で見抜いた。
彼らはそこまで追い詰められ、焦っていたのだ。
「レオ、ルールは『最深部のボスの討伐』だ。卑怯な真似はしないようにな」
俺が冷ややかに言うと、ミリアが金切り声を上げて笑った。
「卑怯? 勝てば官軍よ、アルス! あんたたちの豪邸も、その奴隷たちも、全部私たちのものになるのよ!」
「ゲート、オープン! クランバトル、開始!」
ギルド審判員の高らかな宣言と共に、巨大な石門が開き、俺たちとレオたちは同時に別々の攻略ルートへと突入した。
タァン! と、レオたちが薬物の超常的な力で地を蹴り、猛スピードで洞窟の奥へと消えていく。
「主様、あいつら、尋常じゃない速度で走っていきました。薬の匂いがひどいです」
ルナが鼻をしかめながら言った。
「ああ。焦って禁忌の薬を服用したらしい。だが、自滅へのカウントダウンが始まっただけだ。俺たちは俺たちのペースでいこう。クララ、ルナ、セレナ、バフをかけるぞ!」
「はい、主様!」
「いつでもいけるわ!」
「旦那様、絶対の盾を見せてやるぞ!」
俺は三人の装備と肉体に、契約魔改造のバフを常時接続した。
乗算バグにより、彼女たちのステータスは再び通常の十倍へと跳ね上がる。
俺たちは、レオたちとは次元の異なる、静かでありながら圧倒的な超高速の攻略を開始した。
その先に、レオたちが仕掛けた「卑劣な罠」が待ち受けているとも知らずに。
いや、待ち受けているのを知りながら、俺たちは真っ直ぐに突き進んでいった。




