第20話 お風呂とハーレムの温もり
「旦那様! うちの自信作、大浴場が完成したぞ!」
ダンジョンから帰還した日の夕方、クララがクランハウスの一階の奥にある頑丈な木の扉を開けた。
中を覗いた俺とルナ、セレナの三人は、驚きで息を呑んだ。
そこには、王都の高級宿屋にすらない、白い大理石で作られた巨大な湯船と、地下の魔導炉から引かれた温かい湯がなみなみと注がれている、美しい「大浴場」が完成していた。
湯気と共に、ほのかに甘いハーブの香りが漂っている。
「すごいな、クララ……。この世界にお風呂の文化はほとんどないのに、どうやって作ったんだ?」
「へへん! 旦那様が前世で『お風呂に入りたい』って言っていたのを覚えていたからな! 地下の魔導炉の熱を利用して、魔導給湯システムを組み込んだんだ! 温度調節もバッチリだぞ!」
クララが胸を張り、鼻を高くした。
「お風呂……温かいお湯に浸かるなんて、初めてです。主様、本当に入ってもいいのでしょうか?」
ルナが目を輝かせながら、おそるおそる湯船を見つめた。
「当然よ。ルナ、セレナ姉ちゃん、一緒に入ろう! 旅の疲れが一発で吹き飛ぶぞ!」
クララがルナとセレナの手を引っ張り、脱衣所へと連れていった。
俺も別室の男性用(といっても今は俺一人だが)の脱衣所へ向かい、服を脱いで湯船に浸かった。
「はぁ〜〜……極楽だな……」
温かい湯が全身を包み込み、前世の社畜時代の疲れも、この世界での戦いの緊張も、すべてが溶けていくようだった。大理石の湯船に背中を預け、俺は心からリラックスした。
しばらくしてお風呂から上がり、薄手の部屋着に着替えてリビングに戻ると、そこにはすでに湯上がりでさっぱりとした三人が集まっていた。
ルナは髪を少し濡らしたまま、ほのかに赤くなった頬で俺を見つめた。
「主様……お風呂、とっても気持ちよかったです。身体がぽかぽかして、なんだか眠くなってしまいました……」
ルナがトコトコと近づいてきて、俺の隣にすわり、俺の肩に頭を預けてきた。お風呂上がりの甘い香りが鼻をくすぐる。
「あら、ルナったら抜け駆けね。アルス、私だって髪を乾かしてほしいんだけど……いいかしら?」
セレナがブラシを手に、顔を赤くしながら俺の前に座り込んだ。長い耳が恥ずかしそうに小さく動いている。
「ああ、いいよ。セレナの髪は綺麗だから、丁寧にとかさないとな」
俺がブラシを受け取り、彼女の美しい銀髪を優しくとかし始めると、セレナは嬉しそうに目を細め、小さくため息をついた。
「……アルスに触られるの、なんだかすごく落ち着くわ。魔力のパスが、お湯みたいに温かくて……」
「旦那様! うちも褒めてくれ! このお風呂を作ったうちが一番偉いんだからな!」
クララが俺の膝の上に飛び乗ってきて、旦那様旦那様と甘えてきた。
右肩には甘えるルナ、前には髪をとかされて気持ち良さそうなセレナ、膝の上には誇らしげなクララ。
温かい我が家で、世界で一番可愛いヒロインたちに囲まれる日常。
俺は彼女たちの温もりを感じながら、「この幸せを絶対に守り抜く」と決意を新たにした。
だが、俺たちの穏やかな日常の裏で、没落したレオたちの邪悪な悪巧みが、静かに動き出していることを、俺たちはまだ知らなかった。




