第21話 落ちぶれた金色の獅子
「おい、聞いたか? Sランクの『金色の獅子』、またクエストに失敗したらしいぞ」
「ああ、今回はCランクの討伐依頼すら失敗して、重戦士のダグが大怪我を負ったって話だ。降格処分は免れないだろうな」
数日後、冒険者ギルドの中央支部。
俺が採取した素材の報告をしていると、ロビーのあちこちから、かつて王都最強と謳われた『金色の獅子』の没落を嘲笑う声が聞こえてきた。
俺を追放して以降、彼らの凋落ぶりは凄まじいものがあった。
「当然の報いだな」
俺は内心で呟いた。
彼らは俺の『付与魔術』の本質を理解していなかった。
俺がかけていたバフは、単なるステータス強化ではない。戦闘中の肉体的疲労を肩代わりし、魔力消費を乗算で抑える「継続戦闘サポート」だったのだ。
俺がいなくなったことで、彼らは戦闘開始からわずか数時間で極度の疲労に襲われ、ミリアはすぐに魔力切れを起こし、ダグは反応が遅れて魔物の直撃を受けるようになった。
自分たちの実力だと過信していた「強さ」は、すべて俺のサポートの上に成り立っていた張り子の虎だったのだ。
「あっ、アルスさん……。あの、少しお耳に入れたいことがありまして……」
受付嬢が、周囲を気にしながら小声で俺に話しかけてきた。
「どうしたんだ?」
「実は……レオさんたちが、裏スラムの悪名高い奴隷商人や、闇の組織と接触しているという噂があるんです。アルスさんのクランハウスの場所や、メンバーの身元を執拗に調べているらしくて……。どうかお気をつけください」
「情報ありがとう。助かるよ」
俺は笑顔で礼を言い、ギルドを後にした。
やはり、あの男たちは大人しく引き下がるつもりはないらしい。
俺を失って没落した焦りと、俺たちが金貨を稼いで豪邸を購入し、最強のクランを結成したことへの強烈な嫉妬。それが彼らを狂わせているのだろう。
「主様、何か不穏な動きがあるのですか?」
ギルドの外で待っていたルナが、俺の表情の僅かな変化を察知して問いかけていた。
「ああ。レオたちが、俺たちの家やみんなのことを調べているらしい。何か卑劣な手段を使ってくるかもしれない」
「フン、あの無礼者たちね。もし我が家に近づくなら、私の魔法で今度こそ塵にしてあげるわ」
セレナが冷ややかに杖を握りしめた。
「当然だ! うちが作った要塞結界があるから、どんな奴らが来ても返り討ちだぞ!」
クララが力強く言った。
「ああ。だが、相手はどんな汚い手を使ってくるか分からない。クララ、新居の警戒網を最大にしておいてくれ」
「任せとけ、旦那様!」
俺たちは警戒を強めながら、我が家へと戻った。
その夜、レオたちの放った邪悪な影が、静かにクランハウスの門へと忍び寄ろうとしていた。




