第18話 本格的なダンジョン攻略開始
「おいおい、あれってアルスの新しいクランだろ……?」
「本当に、郊外にあるあのでかい白壁の屋敷を買ったのかよ? 無能の付与術師のくせに、どこからそんな大金が……」
冒険者ギルドの中央支部に入ると、周囲の冒険者たちからヒソヒソと囁き声が聞こえてきた。
かつて俺を「無能」と見下していた者たちの目は、今や侮蔑から、羨望と強烈な疑惑へと変わっている。
俺はそんな雑音を完全に無視し、ルナ、セレナ、クララを引き連れて受付カウンターへと進んだ。
「アルスさん、いらっしゃいませ! 本日はどのようなご依頼をお探しですか?」
受付嬢が、以前とは打って変わって非常に丁寧な態度で俺たちを迎えた。アイアン・ゴーレムの十秒討伐の件は、ギルド内ですでに伝説として広まっているらしい。
「新居の維持費と、クランの活動資金を稼ぎたいんだ。何か手頃な高額依頼はあるかな?」
「それでしたら、こちらのBランク依頼はいかがでしょう? Bランクダンジョン『青水晶の洞窟』での『青水晶の採取』と、そこに現れる魔物の討伐依頼です。報酬は金貨五枚となっております」
「青水晶の洞窟か。よし、それを受けよう」
俺が依頼書を受け取ると、カウンターの端からフンと鼻で笑う声が聞こえた。
振り返ると、かつてレオたちの取り巻きをしていたCランクパーティーの冒険者たちが、嫌味な薄笑いを浮かべてこちらを見ていた。
「おいおい、無能のアルス。アイアン・ゴーレムを倒したってのは、どうせギルド幹部のハリスが仕組んだヤラセだろ? Bランクダンジョンなんて、お前らみたいなハリボテのクランが行けば、最初の部屋で全滅するのがオチだぜ」
「そうよ。そんな獣人や落ちこぼれエルフ、ドワーフのガキを連れて、よく大口が叩けるわね」
彼らの言葉に、セレナの長い耳がピクリと怒りに震え、クララがスコップを握りしめようとした。
だが、ルナが一歩前に出て、彼らを静かに見つめた。
その瞬間、ルナの瞳が縦に裂け、彼女の身体から、大気がミリミリと軋むような凄まじい「物理的な威圧(殺気)」が放たれた。
「――ひっ!?」
冒険者たちが息を呑み、思わず後ずさりして壁に背中を打ち付けた。彼らの額からは冷や汗がダラダラと流れ落ちている。
ルナのバグ強化されたレベル十五のステータスは、彼ら中堅冒険者など塵のように踏み潰せる領域にあるのだ。
「ルナ、そこまでだ。行こう」
俺が彼女の肩に手を置くと、ルナは瞬時にいつもの健気な犬耳少女に戻り、にこりと微笑んだ。
「はい、主様!」
俺たちは唖然とする冒険者たちを置いて、ギルドを出た。
「旦那様、あいつら、うちの装備の強さを知らないからあんなことが言えるんだぞ! ダンジョンで思い知らせてやる!」
クララが悔しそうに拳を握った。
「ええ。アルスのバフの凄さもね。私たちはただ、自分たちの強さを証明すればいいわ」
セレナが魔改造された杖を握りしめ、力強く言った。
「ああ。俺たちの『我が家』での生活をさらに豊かにするために、まずはこのダンジョンを完璧に攻略しよう!」
「おーっ!」
俺たちは王都の東にある山脈へと向かい、本格的なダンジョン攻略の一歩を踏み出した。
そこが、俺たちの異次元の強さを再び証明する舞台になるとは、誰もが知る由もなかった。




