第17話 精霊の杖の魔改造
「できたぞ、セレナ姉ちゃん! うちの自信作だ!」
新居の地下工房。クララが真っ赤に熱せられた炉の前で、一本の美しい杖を掲げた。
それは、元々セレナが使っていた古い木製の杖ではなかった。
持ち手には美しい白銀の魔導金属が巻かれ、先端には青く澄んだ巨大な精霊石が埋め込まれている。杖の周囲には、目に見えるほどの清らかな風の魔力があらかじめ渦巻いていた。
「これ……私の杖なの? 信じられない……。精霊石の魔力伝導率が、以前の百倍以上になっているわ」
セレナが震える手で杖を受け取ると、杖の先端から心地よい風が吹き抜け、彼女の長い銀髪を揺らした。
「そうよ! 名前は『精霊王の息吹』! 旦那様の魔改造契約のパスに同調するように作ったから、旦那様の魔力バフがかかると、精霊の呼び出し効率がさらに跳ね上がる設計なんだ!」
クララが額の汗を拭いながら、胸を張った。
「ありがとう、クララ。本当に素晴らしい腕だ。……よし、セレナ。俺のバフを乗せるから、試しにその辺の精霊を呼んでみてくれ。【付与魔術:魔力充填】」
俺がセレナの肩に手を置くと、契約の白い光が彼女の身体を包み、魔改造された杖へと流れ込んだ。魔力バフ十倍のバグ補正が適用される。
その瞬間、地下工房の空気が一変した。
キィィィン、と空間が共鳴するような清らかな音が鳴り響く。
「……きて、風の精霊王の使徒、シルフ」
セレナが静かに唱え、杖を軽く振った。
通常なら高ランクの魔術師が儀式を経てようやく呼び出せる上位精霊シルフが、何の予備動作もなく、光り輝く美しい少女の姿となって瞬時に目の前に現れた。
シルフはセレナの肩にちょこんと乗り、嬉しそうにエルフの耳に頬を寄せている。
「うそ……。以前なら、シルフを呼ぶだけで魔力の半分を持っていかれたのに……。今は、まるで呼吸をするのと同じくらい簡単に魔力が馴染んでいるわ。暴走する気配も全くない」
セレナが目を輝かせ、肩のシルフを優しく撫でた。
「大成功だな。セレナの『精霊の聴覚』が、この杖と俺のバフによって完全にコントロールされた『最強の使役スキル』に昇華されたんだ」
「あるじ様、これならセレナは、軍隊が相手でも一人で勝ててしまいますね!」
ルナが感心したように言った。
「ええ。これなら、どんなダンジョンに行ってもアルスの後ろは私が完璧に守ってみせるわ」
セレナが嬉しそうに微笑み、杖をぎゅっと抱きしめた。
「よし、これで前衛のルナの剣『閃光の白牙』、後衛のセレナの杖『精霊王の息吹』、そしてクララの絶対防御の盾が揃った。チームの戦闘力は、以前の『金色の獅子』の数十倍はある」
「へへん、当然だ! うちは旦那様の最強のクランだからな!」
クララが自慢げに笑う。
「よし、それじゃあ早速、ギルドに行って高額な依頼を受注しよう。新居の資金回収と、今後のクラン運営のために稼ぐぞ!」
「おーっ!」
全員の意思が一つにまとまり、俺たちは意気揚々とアパートから……いや、新居のクランハウスから王都のギルドへと向かった。
最強の装備を手に入れた俺たちの前には、もはやどんな障害も存在しないはずだった。




