第14話 圧倒的な力の証明
「あれが、アイアン・ゴーレムか……」
黒鉄の洞窟の最深部。
巨大なドーム状の空洞の中央に、高さ五メートルを超える、漆黒の鉄でできた巨大な人形――『アイアン・ゴーレム』が君臨していた。
その巨体から放たれる威圧感は凄まじく、周囲の岩肌がその重圧で小さく震えている。
空洞の入り口付近の岩陰には、俺たちの戦いを見届け、失敗したところを拘束しようと待ち構えているレオ、ミリア、ダグ、そしてギルド幹部ハリスの姿があった。
「フン、無能が化け物の前で立ちすくんでいるな。今さら命乞いをしても遅いぞ、アルス」
レオの嘲笑が洞窟内に響いた。
「アルス、指示を。いつでもいけるわ」
セレナが杖を握りしめ、静かに呼吸を整えている。
「旦那様、うちの盾は絶対に破られないぞ!」
クララが巨大な鉄の盾を構え、不敵に笑った。
「主様、わたしの剣で、あの鉄の身体を切り裂いてみせます」
ルナが『閃光の白牙』を引き抜き、静かに腰を落とした。
「よし、みんな。作戦通りにいこう。まずはクララ、敵の攻撃を受け止めてくれ。俺の防御バフを最大で乗せる。【付与魔術:金剛障壁】」
俺がクララの盾に触れると、契約紋が眩しく輝き、十倍の防御バフが盾全体に黄金の障壁となって展開された。物理・魔法を完全に無効化する絶対の壁だ。
「グオォオオオオンッ!」
アイアン・ゴーレムが俺たちを感知し、地響きを立てて突進してきた。その巨大な鉄の拳が、空気を圧縮しながらクララに向けて振り下ろされる。
「ハハッ、ドワーフのガキごと潰されちまえ!」
ダグが下品に笑った。
凄まじい衝撃音。
だが、激しい土煙の向こうで、クララは片手で盾を支えたまま、あくびをするような余裕の表情で立っていた。ゴーレムの拳は、黄金の障壁に阻まれ、一ミリもクララに届いていなかった。
「な、何ですって……!? ゴーレムの一撃を、片手で受け止めた!?」
ミリアが悲鳴のような声を上げた。
「次はセレナだ! ゴーレムの関節部を狙って、極大魔法を放て!【付与魔術:魔力充填】!」
「いくわよ!【烈火爆炎】!」
セレナが杖を掲げると、十倍に強化された魔力が一瞬で精霊たちと共鳴し、ゴーレムの足元から巨大な火柱が噴き上がった。
超高温のプラズマを伴う爆炎がゴーレムを包み込み、その漆黒 px の鉄の身体が、一瞬で真っ赤に熱せられてドロドロに溶け始める。
「グ、グアァアアアッ!?」
ゴーレムが苦しげに身悶えし、装甲が崩れ落ちていく。
「最後だ、ルナ! 熱せられたコアを一撃で断ち切れ!【付与魔術:迅雷】!」
「はい、主様――!」
ルナの『閃光の白牙』に、十倍の青白い雷撃が宿る。
ルナの姿が消えた。
次の瞬間、彼女はゴーレムの胸元の前へ瞬間移動したかのように現れ、電光石火の速度で剣を振り下ろした。
ピシィィィィンッ! と、美しい雷の線が空間を切り裂く。
真っ赤に熱せられたゴーレムの鉄の巨体が、胸のコアごと縦一文字に綺麗に両断され、左右に分かれて崩れ落ちた。
激しい爆発音と共に、ゴーレムは完全に沈黙し、ただの鉄くずへと変わった。
戦闘開始から、わずか十秒。
静まり返った洞窟の中に、ルナが剣を鞘に収めるパチリという音が響いた。
岩陰から見ていたレオたちは、完全に腰を抜かし、地面にへたり込んでいた。ハリスは書類を落とし、ぶるぶると全身を震わせている。
「あ、ありえない……。Bランクのゴーレムを、たったの三撃で……無傷で倒すなんて……」
レオが信じられないと頭を抱えて呟いた。
俺は彼らの方へゆっくりと歩み寄り、冷ややかな視線を投げかけた。
「ハリス幹部。依頼は達成しました。これでクラン解散も奴隷没収もなしですね」
「ひ、ひぃっ……! あ、ああ、確かに達成だ……!」
ハリスは逃げるように洞窟の奥へと走り去っていった。
レオたちも、ルナたちの放つ圧倒的な殺気に気圧され、這うようにして後退りし、無様に逃げ出していった。
俺たちの完全なる勝利だ。
「やったぞ、みんな! 完璧な勝利だ!」
俺が両手を広げると、ルナ、セレナ、クララの三人が、嬉しそうに俺の元へと駆け寄ってきた。
我が家への道が、ついに完全に切り開かれたのだ。




