第13話 仕掛けられた罠
「アルス、君たちのクランに、ギルドからの『指名依頼』が出ている」
午後、ギルドの窓口に向かうと、冷淡な表情をした中年のギルド幹部――ハリスが、一枚の黒い縁取りのある依頼書を差し出してきた。
黒い縁取りは、拒否権のない「強制指名依頼」を意味している。
「指名依頼? 俺たちはまだ結成したばかりのFランククランだぞ。なぜ指名が来る?」
俺が依頼書を睨みつけると、ハリスは鼻で笑った。
「ギルドの決定だ。文句があるなら冒険者を辞めることだな。内容は『黒鉄の洞窟』の最深部に現れた、Bランク魔物『アイアン・ゴーレム』の討伐。期日は明日中だ」
「アイアン・ゴーレムだと!? Bランクの魔物を、Fランクの俺たちに単独で討伐させるというのか! これは明らかな嫌がらせだ!」
俺が声を荒らげると、ロビーの奥からレオたちがニヤニヤと笑いながら近づいてきた。
「嫌がらせ? 人聞きが悪いな、アルス」
レオが傲慢に胸を張った。
「これは、お前のクランが本当に王都に必要かどうかを試す、正当な試練だ。もし失敗すれば、お前のクランは強制解散、奴隷たちの所有権はギルドに没収され、オークションにかけられることになる」
「なるほど、お前たちがハリスと結託して仕組んだ罠か」
俺の言葉に、ハリスは表情を変えずに書類を整理し始めた。
「証拠のない妄言は慎むことだ。依頼を受けないなら、その場でクラン解散と奴隷没収の手続きをとるが、どうする?」
卑劣極まりない。彼らは最初から、俺たちを陥れてルナたちを奪い取るつもりなのだ。
ルナが怒りに震え、セレナが顔を青ざめさせ、クララが悔しそうに歯を食いしばっている。
だが、俺は前世の社畜時代、理不尽な取引先からの無理難題を何度もひっくり返してきた。この程度の罠、想定内だ。
「いいでしょう。その指名依頼、お受けします」
俺が冷ややかに微笑むと、ハリスとレオが一瞬、驚いたように目を見開いた。
「アルス、正気か!? アイアン・ゴーレムは魔法も剣も通さない、文字通り鉄の化け物だぞ! お前たちのような雑魚が勝てるわけがない!」
ミリアが勝ち誇ったように叫んだ。
「勝てるかどうかは、明日になれば分かります。……行こう、みんな。明日の準備だ」
「はい、主様!」
「アルスがそう言うなら、私は信じるわ」
「旦那様、うちが最高の盾になってみせるぞ!」
俺たちはハリスの手から依頼書をひったくるように受け取り、ギルドを後にした。
背後からレオたちの嘲笑が聞こえていたが、俺の頭の中ではすでに、アイアン・ゴーレムを「瞬殺」するための完璧な数式が完成していた。
彼らは知らないのだ。
俺たちのバグバフが、どれほどの「破壊力」を持っているかを。
明日、彼らの傲慢な鼻面を完膚なきまでに叩き潰してやる。




