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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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呪いの手紙(8)

「灯様、小麦はまだ幼いのです。親元を離れ、一人で勉学に打ち込ませるというのは不憫でなりません。灯様と共に暮らすことは難しいかもしれませんが、私か真白が付き添うことは出来ませんか?」

真はのんびりした調子で言った。灯は鼻で笑う。


「幼いから憐れとな?儂が小麦と同じ年齢の時には、毎日小麦の倍は厳しい修練を積んでおった。昨今のウェアウルフは質が落ちておる。しかし、ロードたる者、どの時代のどのウェアウルフにも負けぬ素養を身に付けることは当然ぞ。このくらいで音を上げてどうする。」

灯の眼差しには、親としての慈愛など、微塵もなかった。最期まで灯は小麦を跡継ぎとしてしか見なかった。


「母上も父上も既に…身罷られたはずです。私は…死んだのでしょうか?」

小麦は恐る恐る言った。灯は高笑いした。真も困ったように微笑んでいる。

「おいで、小麦。」

小麦はその手を取ってはならないと思いながら、優しく微笑んでいる真に近付いていった。もう少しで手が届く。


「小麦様。」

後ろから聞き慣れた声がする。小麦は歩みを止めた。

「…どうシた?」

真の声が低くなり、人間離れした響きになっている。小麦はゾッとして一歩下がった。真は薄っぺらい笑顔を絶やさない。小麦の足がもつれて、尻餅をつく。


「来テくれなイのか?」

灯が聞き取るのも困難なほどおどろおどろしい声で言った。小麦は金縛りにあったようにその場から動けなかった。


「苦しいでしょうが、戻ってきて下さい。」

微かな声が聞こえてくるが、小麦の意識はその声より、目の前の化物に向けられていた。真の身体は重い物に潰されたような姿になっている。灯は両目と口の端から黒い液体を流している。身体の力が入らない。目を逸らすことも出来ない。


「大丈夫です。貴方は一人ではありません。僕らには貴方の力が必要です。」

小麦は身体を強張らせた。化物を睨むと、狼に変身してその喉笛を食い千切った。鮮血が宙を舞う。

「私はまだそちらに参りません!」

小麦は力強く言い放つと化物に背を向ける。視界がホワイトアウトし始める。


「…小麦。」

優しい母親の声にも小麦は振り返らなかった。

「…お休み下さい。」

小麦はそれだけ言った。眩しい。小麦はそっと目を開けた。


「お帰りなさい。」

布団の横には真っ白な顔をした光琉が座っている。小麦は起き上がった。

「ただいま。」

光琉は立ち上がろうとし、ふらついて座り込んだ。小麦は光琉の手首に巻かれた包帯に目を留めた。

「怪我したのか?」


「自分で切ったのですよ。僕は呪いに耐性があるから、呪いに対しては僕の血肉が少しは効果的です。とは言え、僕の方が先に参りそうだったので、丁度呑ませるのを止めたところでした。あと一時間小麦様が目覚めるのが遅ければ見捨てました。実に運がいいですね。」


光琉は左手を後ろに隠した。

「もしや二十年前も…。いや、いい。何でもない。礼を言おう。」

光琉は小麦の発言を完全に無視した。

「いいえ。これは僕の読みが甘かったせいです。ルリを簡単に探し出せると驕っていたのがそもそもの過ちでした。」


光琉はしっかりと座り直した。

「あれから丸二日が過ぎました。既に死者が二名出ております。」

光琉とルリはかなり似た部分が多いです。立場が違えば、互いの良き理解者となったことでしょう。改めて警告しますが、これはミステリーではありません。推理しようとしても無理です。そして、エセ関西弁に関しては目を瞑って下さい。作者は関西の人間ではありません。ここまでで一話としましたが、内容は完全に次回に続きます。

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