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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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オランダの涙(1)

小麦の顔が怒りで歪む。

「詳しく聞かせろ。」

「まず、ルリはあの中にいないと考えるしかありません。紛れ込んでいるなら、美容整形か何かをしているとしか思えません。そして、予告された通りの人物がその日のうちに亡くなりました。直接的な死因は呪い。涙石は真っ黒でした。僕は小麦様に付きっきりだったため、あまり現場にいられませんでした。陽動も上手くいったというわけです。」


小麦は手近にあったチョコレートの包み紙を破り、口一杯に頬張ると、思い切り噛み砕いた。部屋の中に甘い香りが満ちる。

「呪殺が成功したなら、何にせよルリが近くにいたのだろう。彼らには涙石を渡してあったのだから。」


「はい。きっとルリは東日本にいます。今までの被害者は二人とも東にいました。あの威力から見て、ルリは半径1キロ圏内にいたと思われます。そして、次のターゲットは西日本にいます。呪殺は不可能かと。この隙に虱潰しに探します。」

小麦は続けざまにチョコレートを口に入れる。


「笹木家がどうのと言っている場合ではない。もう全てを公表しよう。」

小麦は言った。

「なりません。まだ駄目です。」

光琉は首を横に振る。

「どうしてだ?」


「ウェアウルフの内部抗争を避けるためです。失礼ながら、小麦様の権力は未だに安定しておりません。それに、小麦様は正さんを優遇しすぎです。今や権勢は土浦家に傾きつつあります。そんな時に今回の件が発覚すれば、土浦家が笹木家を取り潰し、権力を握ることは明らかです。そうなれば更に事が大きくなります。」


小麦は呻いた。権力だの名誉だのと鬱陶しい。

「それならば私も行こう。」

「わざわざ小麦様がお越しにならなくても…。」

小麦は光琉を睨んだ。


「此処にいても退屈だ。それに、父親が人間とは言え、ルリも名家の出だ。いざとなったら私が取り押さえなくてはなるまい。」

光琉は眩暈がして頭を抱えた。

「それは心強いですが、小麦様は表立ってはなりません。近くで待機していて下さい。」

「良かろう。」


光琉は第二集会所の大広間に全員を集めた。皆が家族の死に恐怖しているようだったが、哀しみの表情には感じられなかった。薄情な連中のようだ。


「皆様お揃いですか。」

光琉は手帳と人を見比べる。

「あの、蓮之助様がまだ…。」

奈美子が遠慮がちに言った。確かに彼だけが見当たらない。光琉は彼を呼びつけることは気が進まなかった。

「仕方ありません。あの方にはどなたか連絡しておいて下さい。」


「皆様ご存じの通り、昨日と一昨日、この建物内で皆様の同胞が亡くなられました。一昨日が空木(うつぎ)時雨さん、昨日が笹木マリアさんでしたね。これから一人ずつお話を伺っていきますので、順番に小会議室にお越し下さい。」


最初に呼び出したのは剛士だった。家族でないから当然かもしれないが、全く動揺していないように見える。

「俺は時雨の第一発見者だ。午後七時くらいに、裏の林の中に倒れていた。既に息を引き取っていた。服には切り裂かれた跡があったが、出血はなかった。両目から黒い液体が流れていた。俺はすぐに人を呼んできた。」

剛士は淡々と語る。光琉は例によって手帳に書き留めた。

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