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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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オランダの涙(2)

「成る程。最後に時雨を見たのはいつですか。」

「昼食の時が最後だな。」

遺体が発見される五時間前か。これでは参考にならない。

「マリアの方で知っていることは?」

「ない。昨日はずっと自室で筋トレをしていた。」


光琉は手帳をペンの先でつついた。

「最後にもう一つ。此処に来てから怪しい人影を見ませんでしたか。」

「それはお前以外でという意味か?」

光琉は苦笑した。

「ご協力ありがとうございました。また何かあればお話を伺うかもしれません。」


次に来たのは奈美子だった。おどおどとしている。一通りの質問を終えたが、奈美子は何やら言いたそうだ。

「話しておきたいことがあったら、どんなことでもどうぞ。」

奈美子は口元に手をやった。光琉を見ては視線を落としていたが、ついに消え入りそうな声で言った。

「此処で話したことは、絶対に他言しませんか?」


「君がそうして欲しいなら。僕はウェアウルフではないから、完全に中立な立場だよ。」

光琉は答えた。奈美子は光琉から目を逸らしたままで言った。

「実は…マリア様はトキ様に殺されたのだと思います。」


光琉は驚いた。犯人はルリだと決めてかかっていたが、そうではない可能性もあると気付いたからだ。

「そう思った根拠を聞かせてくれないかな。トキはマリアの大叔母に当たるはずだけど?」

奈美子はゆっくりと話し出した。


「昨日の夕方、四時半過ぎくらいだったと思います。マリア様が何か話をしながら外に出るのが見えました。敬語を使っておいででしたから、お相手は蓮之助様かトキ様でしょう。マリア様にとってルリに予告された当日でしたから、気になって外出を止めようとしたのです。すると、マリア様の悲鳴が聞こえました。」

光琉は真剣に聴いていた。


「私は足がすくんで動けずにいました。誰かが走り去る物音でハッとしてその場に行ってみると、マリア様が倒れておいででした。ナイフのような物で刺されていたようでしたが、涙石の効能で傷は殆ど癒えていました。マリア様は私に人を呼ぶように仰って、私は慌ててその場を離れ、集会所に戻りました。戻ってみると、マリア様は既にこと切れていらっしゃいました。両の目からは真っ黒い液体が流れていました。」


光琉はペンを置いた。奈美子は不安そうに光琉を見ている。

「ありがとう。重要な証言だ。一つ聞かせてくれ。どうしてトキだと思ったの?蓮之助の仕業かもしれないのに。」

奈美子はまたも言いにくそうに言った。


「蓮之助様は走ることが出来ませんから。それに…トキ様には動機があるのです。マリア様のお父上は、トキ様が経営していらっしゃった会社の株を買い占め、トキ様を経営者の座から引きずり下ろしたことがございます。そして、これは噂にすぎませんが、マリア様のおじいさまがトキ様の顔に傷を付けたとか。」


妙に詳しい。通常、ウェアウルフは自分と本当に親しい間柄の者にしか興味を示さないはずだ。光琉は奈美子を疑いそうになったが、一旦忘れることにした。

光琉は嫌な予感に襲われた。これが真実であれ、嘘であれ、お家騒動が絡んでくるとなると、早急に対応を考え直さないとならない。

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