表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
102/401

オランダの涙(3)

「では時雨は…。」

光琉は言い掛けて止めた。違う。今確認すべきはこんなことではない。

「笹木絹代を狙う可能性がある者がいるとすれば、誰だか分かる?」

「絹代…?誰ですか?」

奈美子はきょとんとしている。光琉はすぐに誤魔化した。


「気にしないで。他にも気付いたことがあれば遠慮なく言ってくれ。」

光琉は奈美子がいなくなるのを見届けて、第五集会所に電話を掛けた。

「もしもし。小麦様のところの光琉です。絹代はいますか?」


光琉はスマホを閉じた。取り敢えずは絹代を三人以上で行動させるようにした。ルリは間違いなくこの建物の傍にいる。一度入ってしまえば、見張りが多いから外に出られない。一通り証言は集めたし、今からでも向こうに向かった方がいい。


第五集会所の中で、ある人物がメールの着信音に気付き、スマホを開いた。文面を見て震え始めた。額には脂汗が浮かんでいる。

『お前の罪を知っている。公表されたくなければ、指示に従え。』

「どないしたん?」

その人物は慌ててスマホを仕舞い、あどけなく尋ねる絹代を見つめた。

『笹木絹代を…殺害せよ。』


光琉は新幹線の中で手帳を開いた。ルリ以外にも裏切者がいることは確かだ。そして、口裏合わせが下手なのか、すぐに分かるような嘘を吐く者が多いようだ。


まずは剛士。他の人の証言と合わせると、遺体発見時、時雨の目の下は黒ずんでいたが、完全に乾いていたそうだ。剛士が発見した時にも、時雨の両目から黒い液体が流れているはずがない。時雨を発見して、すぐに人を呼んできたなら、同じように目の下が黒ずんでいたと言うだろう。


次にトキ。トキは池の方に行ったことがないと言っていたが、彼女の靴には池回りの物と同じ、粘土質の黄土が乾いてこびりついていた。初日には靴が綺麗だった。トキが犯人だと仮定すると、服やナイフは処分したようだが、靴にまで気が回らなかったのだろう。


凶器とみられるナイフは、マリアの荷物から発見された。二人とも服の切り裂かれ方と、ナイフに残っていた血から、同じナイフで刺されたとみられている。ただ、同一犯かどうかは不明だ。


そして、奈美子の証言も不可解な点がある。犯行を目撃していたにしては、犯人の姿を見ておらず、マリアも助けられなかったというのは無理がある。涙石の効果で傷が癒えていたならば、一緒に戻る方が自然だ。


一番分からないことは、誰も狼にならずに事件が進んでいることだ。加害者は噛み痕から特定されることを避けたとも考えられる。しかし、何度も刺されている被害者が、頑なに人間の姿でい続けた理由は何だ?


そう言えば、蓮之助の証言だけはまだ聞いていない。蓮之助に殺人を実行する力はないだろうが、全員に対して最も影響力を誇っている。敵であって欲しくない人物の筆頭に位置している。


不意に光琉のスマホが鳴った。第五集会所からだ。光琉は最悪の知らせでないことを祈り、電話を取った。

「光琉です。」

「実は…大変、申し上げにくいのですが、絹代様が…。その…。」

言いにくそうにもたもたとしている職員に嫌気がさして、光琉は声を張り上げた。


「どうしたのですか?はっきりと言って下さい。」

「…お亡くなりに。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ