表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
103/401

オランダの涙(4)

光琉は息を切らして集会所に駆け込んだ。絹代の遺体は別館の廊下で発見された。涙石は真っ黒で、首元にはロープが絡まっている。しかし、致命傷となっているのは『石』の呪いのようだった。だが、他の二件に比べ、威力が格段に低いようだ。


「…間に合わなかった。」

光琉は目を見開いて苦悶の表情を浮かべている絹代を見て、唇を噛んだ。

「ルリ、絶対にお前を捕えてみせるからな!」

光琉は壁を殴った。鈍い音が響く。


光琉は絹代の口に血が付いていることに気付いた。口内に傷はない。犯人を噛んだに違いない。犬歯にしか血が付いていない。つまり、狼に変身してから犯人を咬み、再び人間に戻ったということだ。どうしてそんなことをしたのだろう。


「絹代と最も近しい人を呼んで下さい。」

入ってきたのは、いつぞやのルリに似た女性だった。憔悴しているように見える。

「君は確か、笹木未來(みらい)だったかな。絹代の母。そうだね?」

未來は頷いた。


「脚を怪我しているようだ。どうしたのか、聞かせてもらっても?」

「転んだだけや。関係ないやろ。」

未來はむきになって隠す。光琉は怪しいと思った。その後は一通り状況を確認した。

「協力してくれてありがとう。君も娘さんを亡くしたばかりで辛いでしょう。でも、安心して。犯人はすぐに捕まるから。」


「え?」

未來の表情が一気に曇る。光琉はいよいよ確信を強める。

「第二集会所で先に動きがあった。犯人に指示を出していた人物が捕まったから、すぐに全て白状するさ。実行犯は誰だったのか、動機は何だったのか、今頃小麦様が聞き出して下さっているはずだ。」


光琉は未來の反応を窺った。未來はポーカーフェイスを装っている。

「それは良かったわ。」

未來は足早に外に出ると、何処かに電話を掛けた。早く繋がることを祈りながらスマホを握りしめている。相手が電話に出た。


「ウチは言われた通りにしました。継子の絹代は死にました。だからこれ以上巻き込まんとって下さい。」

未來は早口でまくし立てた。背後から声がする。


「はい、そこまで。」

未來は絶望に満ちた顔でゆっくりと振り向く。ニヤリと笑いながら立っているのは光琉だった。未來は狼に変身して光琉に襲い掛かる。喉元に咬み付く。

「無駄だよ。」

光琉は耳を指さした。完全に透明になった涙石が光っている。未來は光琉を放って逃げ出そうとした。


「逃げられるはずがないでしょう。」

光琉は犬笛を鋭く鳴らした。未來はかなり小柄で速かったが、警備の数が多すぎた。力のない彼女は押さえつけられた。

「ご苦労様です。彼女のスマホを渡して下さい。」

光琉は通話履歴を見て驚く。

「まさか…。」


光琉は考えた。黒幕がこの人なら、ルリはどうやって侵入し、今何処にいるのだろう。押さえつけている狼より二回りも小さい、大きめの小型犬のような未來の身体を見て、光琉は閃いた。

「もしかして笹木家の特徴は…。」


光琉は警備の者に質問し、確証を得た。

「悔しいが、もうどう転んでもルリの勝ちというわけか。」

光琉は小麦に連絡を入れ、大急ぎで第二集会所に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ