表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
104/401

オランダの涙(5)

「連れてきました。」

警備服を着た若者が、同じく警備服の男性を数人連れてきた。光琉は手折った赤い椿を手放し、男性に向き直った。

「ご苦労様。君は下がっていい。」


「あの、俺たちが何かしましたか?」

一人の男性が不安そうに言った。

「違う。話を聞きたかった。君たちは初日に全員の荷物を一通り調べたそうだね。」

全員が首を縦に振る。

「このナイフを持ち込んだ人物はいなかったか?」


光琉は凶器の写真を見せる。殆どの人が首を傾げる中で、一人だけ写真を指さした。

「マリア様の物です。」

光琉はニヤリと笑う。

「成る程。もう一つ尋ねたい。本当に全員の荷物を隅々まで調べたのか?」

「勿論です。」


一人だけ目を泳がせた。光琉は一瞬の目の動きを見逃さなかった。その人物の前に立ち、低い声で再度尋ねる。

「間違いないね?」

「あ…。実は…。」


男性は即答しなかった。言おうか言うまいか葛藤している様子が見て取れた。光琉は駄目押しで言葉を継ぐ。

「笹木家の者に命令されれば、君も従うしかなかっただろう。不問にするから言ってくれ。」

男性は意を決して言った。


「お一人だけ、無検査でお通ししました。」

やはりそうか。光琉は更に追求した。

「それは誰だ?」


剛士が蓮之助の部屋の前まで来て、ドアをノックした。中からしわがれた声がする。

「誰だ?」

「水上で御座います、蓮之助様。小麦様がいらしていて、蓮之助様にお会いしたいと仰せです。」

ドアの向こうからは暫く返事がなかった。剛士は黙って待っていた。


「相分かった。今参る。」

ドアが開き、中から蓮之助が出てきた。室内は薄暗く、奥の間に通じる襖は閉ざされていた。二人はゆっくりと階段を降り、部屋には静寂が訪れた。


暫く経って、部屋にひたひたと足音が迫ってきた。大型の獣が足音を忍ばせているような音で、その重みに廊下が少し軋んでいる。足音は部屋の真正面で止まった。

「そこにいるのだろう、ルリ。既にこの辺りのウェアウルフは避難させた。貴様はもう袋の鼠だ。少し私と話をしないか。」

部屋の中からは沈黙が返ってきた。やがて、蝶番が軋む音とともに、無表情な女性が姿を現した。ルリだ。


「お久し振りです。」

ルリは静かな口調で言った。ルリの目の前には金色の狼が仁王立ちしている。

「慧が入院していた時に会って以来か。あの時、慧を殺したのは貴様なのか?」

小麦の目がぎらつく。ルリは涼しい顔だ。

「左様で御座います。」


小麦は牙を剥き出しにしてルリに迫るが、ルリは軽くいなして言った。

「私から離れて下さい。下手に近付けば、笹木家所縁の者を一人ずつ葬ります。」

小麦は止まった。ルリは襟を正した。

「考えたものだな。最初に蓮之助を脅して従わせ、次に蓮之助が一族の他の者にターゲットを襲うよう指示する。全員が被害者であり、加害者だったとは。誰もが疑心暗鬼に陥っているうちに、貴様は安全な室内から呪いを掛けていればいい。」


「ええ。実に醜いものでしょう?家族同士で殺し合う様は。自分の身を守るしか頭にない、豚のように貪欲な連中です。外敵に強いと言っても、少し内側を突けば、粉々になってしまう。面白いと思いませんか?」

ルリは淡々と語る。小麦は無視して話を続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ