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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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連なる孤独(2)

「いや、私はウェアウルフのロードとしての責任がある。僅かでも危険性があるならそのままには出来ない。」

小麦は決断した。

「光琉を幽閉する。完全に外部との関わりを断ち、地下深くに鎖で繋ぐ。」

「それはよう御座いますね。それなら光琉を上手く利用出来るに違いありません。」

正は小麦が私情よりもウェアウルフのことを思うようになったことに安堵した。


「非人道的なやり方だがな。私は好まん。」

小麦は苦々しく言った。

「光琉は殺されても文句を言えない立場です。あまり気に病まれませんよう。拘束の度合いは様子を見ながらなさいませ。」

小麦は頷く。


「私の世話はお前と金井若葉に任せようと思う。あまり五月蠅く言わないなら、だが。」

「身に余る光栄です。」

正は頭を下げた。小麦は正が何かにつけ口やかましく自分を叱るだろうと思っていたが、黙っていた。


「小難しい話は止めだ。トランプでもしないか。」

正は微笑んだ。

「今度こそ私に勝てる秘策でもあるのですか?私は何度でも勝負を受けて立ちますよ。」

二人は暫くの間トランプに興じていた。結果は小麦の大敗だった。徐々に日が暮れてきた。


「小麦様、そろそろお帰りになられませんと。光琉をあまり長い間一人きりにさせるのも問題です。」

正は言った。小麦は帰りたくなかったが、重い腰を上げる。

「行くか。お前も来い。そのまま世話人になってもらうからな。」

今度は正が面食らった。


「何も今すぐでなくともよいでしょう。」

「駄目だ。奴は鋭い。すぐにでも拘束せねば、真白の元に行ってしまうだろう。」

小麦の意志は固かった。正は言われた通り小麦に同行した。


小麦の足取りはやけに重かった。小麦にとって、二十年間寝食を共にした光琉はただの道具ではなかった。使えないからと切り捨てるのは気が進まない。正はそんな小麦を思いやって、小麦の歩みに合わせていた。しかし、永遠に歩いている訳にはいかない。やがて二人は山神家に着いた。


正はインターホンを鳴らし、光琉に呼び掛けた。

「光琉、私だ。小麦様も御一緒だ。開けてくれ。」

返事はなかった。正はドアノブに手を掛ける。閉まっている。小麦は鍵を取り出し、ドアを開けた。

「光琉!」


家の中は真っ暗で、探し回っても誰もいなかった。光琉が外出しているのは明白だった。

「光琉の奴、何処に行ったのだ?」

小麦と正は光琉が逃げたのではないかという疑問を口に出さなかった。しかし、その疑いを相手も持っているということは、はっきり感じていた。


最悪だ。光琉は目の前の絶望的な状況に嫌気が差していた。

「何見てんだ?ぁあ?」

「別に…。無計画だなと思っただけだ。」

光琉は目の前の三人組を見ながら、反抗的に言った。買い物に行く途中で拉致され、見知らぬ人に見知らぬ場所で縛られているにしては気丈だった。


「もう二、三発殴って良いよな、兄貴?」

一番馬鹿そうな青年が、言うなり光琉の腹を殴った。光琉は咳き込んだが、リーダー格の男性を見上げながら笑っている。

「図星だと手が出るのか。弱い者虐めは楽しいか?」

「このッ、よくも…。」

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