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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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光と影の邂逅(6)

光琉は呆れ果てた。光漓でさえその言い訳は考えていなかった。

「この期に及んで何を仰せなのですか。僕は正真正銘の男ですよ。確かに御前ではしたない姿を見せないようにしておりましたが、普通分かるでしょう。」

「悪かった。確かに本人のようだ。すると、これは何者だ?」

小麦は前足で光漓を指す。


「説明は後です。捕らえましょう。くれぐれも用心なさって下さ…。」

小麦は光琉の言葉を待たず、光漓に踊りかかる。光漓は血飛沫を上げて倒れた。小麦はうつ伏せにした光漓の上に馬乗りになり、華奢な首元に鋭い爪を押し当てている。光漓の傷はみるみるうちに治っていく。


「放せ…。卑怯だぞ、光琉!こっちに来いよ。八つ裂きにしてやる!」

光漓は喚くが、光琉が挑発に乗る気配はなかった。

「小麦様、もっと攻撃を続けて下さい。それくらいの傷はすぐに…。」

「もう遅い。」

光漓は笑うと、首筋を切られるのもお構いなしに、強引に小麦の下から抜け出す。そのまま光琉の方に走ってきた。瞳が黒くなっている。


「死ね!」

光琉は光漓の方に駆け出し、その手を掴んだ。光漓は手を振り払う。

「光漓…。」

光琉は何か訴えかけるように光漓の目を見た。次の瞬間、両目からどす黒い、ドロッとした液体が流れ出し、光琉はつんのめって倒れた。


光漓はまだ何かしようとしていたが、小麦に咬み付かれて断念した。この深手は瞬時に癒えることはないようで、光漓は追撃を逃れて外に出るのが精一杯だった。

「逃がすか!」

「駄目です…。」

光琉はか細い声で言った。小麦は聞き入れる様子がない。さっさと出て行ってしまった。


光漓は笛を吹いた。ウェアウルフにすら聞こえず、ヴァンパイアのみが聞き取れる高音だ。小麦は気付かずに光漓を追い詰めていく。光漓は廃屋に辿り着いた。後ろは壁で、逃げられない。小麦が身を躍らせた途端、二人を取り囲んでいたヴァンパイアが一斉に小麦を襲った。


小麦は軽く身を捻った。それだけで数人が吹っ飛ばされていく。

「これで私を追い詰めたつもりか?こんな人数ならいないも同然だ。第一、私は涙石を身に付けている。」

小麦は右目で光漓を睨んだ。光漓は笑った。

「そうだな。その石がまだ黒くなっていないなら、そうだ。」


小麦は耳を動かした。涙石は既にかなり黒ずんでしまっている。

「かかれ。」

ヴァンパイアは再び総攻撃した。的が大きすぎるため、何人かを打ち倒しても、何人かの爪が身体に届く。

「こうなってはロードも形無しだな。」

光漓は呟いた。


「ほう、誰が形無しとな?」

土埃が収まってみると、そこには傷一つない、艶やかな金色の毛並みの小麦が立っていた。

「馬鹿な。」

光漓は初めて顔を蒼くする。

「後学のために言うておこうか。問題は如何にして攻撃を届かせるかではないわ。」


小麦は足元のヴァンパイアを踏み殺して言った。

「この強靭な身体に如何にして攻撃を通すのか、これがお主らの課題だ。研究するが良い。」

「成る程。参考にさせて頂きます。」

光漓は懐から時計のような物を取り出し、スイッチを入れて放り投げた。

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