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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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光と影の邂逅(5)

光漓と名乗る人物は、染めたとは思えない真っ白な髪と、自然な赤い色合いの瞳をしていた。変装には見えない。

「すまないが、初めて聞く名だ。こっちは光琉の顔も知らないんだ。」

真珠は光漓を警戒する。光漓は無視した。

「この家を出て右手の隅の方にお車が御座います。真珠様もよくご存じの、清水家の者が運転しております。それに乗ってお帰り下さい。」


「君はどうするつもりだ?」

光漓は声を潜めるよう合図した。

「後から参ります。もう一仕事御座いますゆえ。」

真珠は仕事の内容まで尋ねなかった。


「ありがとう。お陰で助かった。」

光漓は礼をして真珠を見送った。そのままの足で小麦の寝室に向かった。静かに障子を開ける。誰も動かない。光漓は小麦の布団まで近付いていった。光漓はゆっくりと左手を伸ばし、小麦の布団を掴む。一息に光漓が跳ね除けた布団の下には誰もいなかった。


「どうして?」


「光琉、何のために我が寝所まで来たのだ?」

小麦の声がする。光漓は振り向いた。巨大な金毛の狼が見下ろしていた。耳にはダイアモンドが煌めいている。

「いい反応だ。よもや、夜這いではあるまいな。あまりに風情がないぞ。」

光漓は言い訳を考えた。


「大変です、小麦様。真珠が逃げました。僕はそれをお知らせに参りました。」

光漓は光琉を演じ続けた。

「それにしては動作が遅かったな。」

「小麦様は寝起きが悪くていらっしゃいます。不用意に起こしたら蹴り飛ばされるでしょう。」


小麦は吠えるように笑った。

「そんなこともあったな。ただし、時と場合に寄る。まあ、説教は後回しにするか。真珠に逃げられたことの方が問題だ。」

光漓は内心ほくそ笑んだ。


小麦は威厳たっぷりに光漓に近付いていった。光漓は小麦が近寄るのを待っているようだった。光漓の後ろでカーテンがはためく。

「小麦様!」

光漓の背後から声がした。見ると窓から包帯と血に塗れた光琉が入ってきていた。


「その者に近付いてはなりません。光漓、下がれ。僕の名を騙って小麦様を惑わすな。」

「光琉が…二人?」

小麦は大きな目をぱちくりさせた。

「誰が光琉ですか!僕と二十年もいて、光漓と見分けがつかないのですか。」


光琉は憤慨するが、小麦でなくとも見分けることは困難だっただろう。よく見れば光漓の右腕は義手ではないが、それ以外に全く差異がないように思われた。背格好、声色、態度、顔形、全てが同じように見える。両者が並んでいても見分けられない。


「違います、小麦様。僕が本物です。これは偽物でしょう。包帯で顔を隠しているではありませんか。今日一日を通じて、僕が光琉ではないなどと思いましたか?」

小麦は混乱した。光漓を見ても光琉にしか思えなかったからだ。

「そう言うなら光漓、此処で服を脱げよ。」


光漓は光琉を睨む。光琉は勝ち誇ったように言う。

「出来ないだろう、光漓。どんなに僕に似ていても、お前は女だからな。これで分かったでしょう。小麦様、早く光漓から離れて下さい。」

小麦は光漓から遠ざかるが、まだ納得していない。

「待てよ。光琉は…果たして男だったか?」

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