光と影の邂逅(3)
山神家のインターホンが鳴った。アニメを観ている小麦の横を素通りし、正が玄関に向かう。ドアを開けると、そこには見慣れた人物が立っていた。
「お久し振りです。」
「光琉か。小麦様がお待ちだ。入れ。」
光琉は家に入ると、フードとサングラスを外した。白い髪と真っ赤な目が露わになる。服は出て行く前と異なっており、灰色のパーカーとジーンズだった。
「まだ生きていたか。早とちりで追い出してすまなかったな。」
「小麦様が謝るとは、珍しい。明日は雪でも降るのではありませんか?」
光琉は笑いながら言った。
「雨が降ろうが槍が降ろうが、お前のその性格だけは治らんだろうな。」
光琉が帰ってきたことで、正は自分の家に帰っていった。光琉は縛られている真珠を見て、小麦に尋ねる。
「彼は何方ですか。」
「真珠だ。知らんのか。お前も玉兎は知っておるよな。ヴァンパイアのロードの。その一人息子だ。」
光琉はまじまじと真珠を見詰め、更に質問する。
「彼をどうなさるおつもりですか。」
「玉兎からの連絡が梨の礫だった。どうも若輩者だからと侮られているようだ。いっそ真珠を殺してしまおうか。」
小麦は献立の話でもしているように平然と言った。
「真珠は何も悪いことをしていないでしょう。」
光琉は小麦に訴えかけた。
「いいか。お前はどうもヴァンパイアに肩入れしすぎだ。私の傍にいたいなら、私の決定に一々意を挟むな。」
小麦は冷たく言い放つ。光琉は射るような目で小麦を見ていた。
「お言葉ですが、小麦様。僕はヴァンパイアです。向こうに居場所がないから、偶々小麦様といるだけです。こんな僕を傍に置きたくないなら、然るべき対応を取られては如何です?」
二人は睨み合っていたが、小麦が視線を外した。
「最初からそれなりの罰を与えるつもりだった。当分食事を抜こう。死にはしないだろう。」
光琉は真珠の目の前に屈んだ。
「初めまして、真珠。」
真珠は光琉をじろじろと眺めて言った。
「君が光琉か?」
光琉は頷いた。
「何か訊きたいことが山ほどあって何も言えないや。」
真珠は呑気に言った。
「おい、他人の家でヴァンパイアの同窓会を開くな。光琉、真珠にあまり近付くなよ。」
「はい。」
光琉は立ち上がった。
「そう言えばヒカリだがな、正が洗ってやっていたぞ。」
光琉は固まった。驚愕の表情を浮かべている。
「え…。」
「嫌だったか?お前が洗うとは思えなかったからな。」
光琉はまだ混乱していた。
「ヒカリって性別はどっちだと思っています?」
予想外の質問に小麦は噴き出した。それを見て、光琉は更に混乱する。
「どちらでもいいではないか。そんなに重要なことか?」
「じゃあ、ヒカリは今何処に?」
小麦は涙を拭いた。
「さあな。物置にでもいるだろう。」
光琉はそれ以上質問するのを止めた。小麦は光琉が変なことを言うものだと思いながら、再びアニメを観だした。
「そうだ。そろそろ私の血を吸わなくていいのか。大分腹が減っているだろう。」
小麦は出来合いのコロッケを食みながら言った。光琉は洗い物をしながら返事した。
「小麦様が宜しいのでしたら、是非。」
「では夕食後に。」
小麦はコロッケをもう一つ齧った。




