光と影の邂逅(2)
「凄い。探偵さんみたい。」
鈴華ははしゃいだ。心鳳も唸っている。
「ただの予想だけどね。あくまで参考にと思って。」
「では実践編に参りますか。」
心鳳は光琉の左手を掴み、少女に会いに行った。光琉の予想通り、女の子は簡単に釣れて、鈴華は友達の女の子を捕まえた。
光琉は二人が食事に出掛けるのを見届けて、鈴木家に帰ろうとした。前方に数人の人物が現れ、行く手を阻まれた。黒いスーツを着ている。
「すみません、少しお顔を見せて頂けませんか。」
「どうしてですか?」
光琉は警戒した。
「人を探しています。すぐに終わりますから。」
どうやったら逃げ切れるか。光琉は考えた。『石』がなければ、一対一でも勝てない。大声で助けを求めても、駆け付けてくる前に光琉を殺して、ルービックキューブを揃えて、スキップで逃げるくらいの時間はあるだろう。彼らはプロだ。
「…良いでしょう。」
光琉はポケットから赤い玉を取り出した。スーツの連中は足をすくめる。光琉はすぐさま踵を返し、人通りの多い方に走った。身体の数カ所がヴァンパイアの爪で切られるが、光琉は歩みを弱めることもなかった。
無数の切り傷を受けている光琉を見て、通行人が悲鳴を上げる。
「大丈夫か?」
真っ先に近付いてきたのは、心鳳が最初に目を付けた、派手な身なりの女性だった。
「ちょっと不良に絡まれて…。」
「救急車を呼ぼう。」
光琉は必死で大丈夫だと訴える。女性は不安そうだったが、光琉は鈴華と心鳳に警告を兼ねてメッセージを送り、女性にすぐに迎えが来ると言った。
「せめて止血しよう。」
光琉は断るのも疲れ、大人しく治療を受けた。
ただの赤いガラス玉に怯んだのは、血酒石の効能を知っているからだ。誰の命令で動いていたのか想像するのは簡単なことだ。
「キャッ!」
女性は柄になく金切り声を上げた。光琉の義手が負荷に耐えられずに落ちたのだ。
「義手だったのか。驚いた。」
「ついでに着けてくれませんか?」
光琉は傷の痛みが予想外に大きいことに戸惑った。毒が塗ってあったのかもしれない。
「光琉、どうしたの?」
鈴華が駆けつけてきた。光琉は鈴華の肩を借りた。
「ありがとうございました。さようなら。」
「どうしたの、その傷?」
光琉は空腹と痛みから来る苦痛に耐えて車に乗った。
「詳しくは…帰ってから話そう。」
光琉はアパートに入ると、痛み止め代わりに煙草を燻らせる。既に心鳳も帰ってきていた。
「あれは玉兎の子飼いの始末屋だと思う。じきに此処も突き止められるだろう。その前に僕は山神家に帰る。短い間だったが、世話になったね。」
「その身体じゃ無理だ、光琉。傷が癒えるまで養生した方がいいよ。」
鈴華は心配そうに言った。
「ありがとう。でも、発つなら一刻も早い方がいい。もう会うこともないだろう。次に会う時は敵になっているかもしれない。そうならないことを願うよ。」
光琉はスッと立ち上がった。
「光琉、また遊びに来いよ。友達だろう?」
心鳳は言った。
「嗚呼。それまでにスピリタスでも買っておいてくれよ。」
光琉は最高の度数を誇る酒を注文すると、笑いながら出て行った。




