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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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老王と若王(6)

「ハリ、しくじったな。」

数時間前、玉兎はハリに電話して、冷たく落ち着いた声で言った。電話口のハリの声は震えていた。


「申し訳御座いません。どうか、俺に名誉挽回のチャンスをお与え下さい。」

ハリは必死に訴える。

「今からそちらに向かう。大人しく待っていろ。」

玉兎はお抱えの運転手に行き先を告げ、大急ぎで車を走らせた。


廃工場に不釣り合いなほど美しい玉兎が入っていった。掃き溜めに鶴といった光景だ。ハリは入口で三つ指を付いていた。

「よくぞ逃げ出さずに待っていた。『石』は何処だ?」

ハリは震える手で小さな『石』を差し出した。玉兎はハリで効果を確かめるために、ハリの手を握った。


「死ね。」

ハリは床に転がって苦しみ始めた。目からは黒々とした液体がドロッと湧き出している。

「これも本物か。良かったな、ハリ。その忠誠心に免じて、すぐに楽にしてやろう。」

玉兎は砕牙丸を鞘から抜き放つと、華麗に手首を振ってハリを斬った。ハリは灰になって消え、身に付けていた物だけが辺りに散らばった。


「此方ももういらないな。」

玉兎は直径数ミリのルビーを投げ上げると、砕牙丸を一振りし、空中で真っ二つに裂いた。ルビーは赤い粉になって、ハリの身体のように消えていった。刀身が一瞬赤く輝く。


玉兎は懐紙で血を拭い、鞘に刀を納める。手を叩き、部下を呼んだ。

「痕跡を全て消せ。終わったら戻って良いぞ。」

玉兎は車に乗り込むと、自宅に戻っていった。その表情は淡々としていて、一切の迷いや後悔を感じさせなかった。


「若造が。この私の邪魔をするなど、千年早いわ。」

玉兎は呟いた。


「老害め。この私を出し抜くとは、耄碌したか。」

小麦は苦々しく呟いた。真珠は今後の自分の運命を察した。案の定、小麦は真珠に運転を任せ、相談所に戻るよう命じた。真珠は逃走を試みる気にもなれず、大人しく運転してそのまま家に上がった。


「お帰りなさ…。夜霧真珠、どうして此処に?」

正は真珠を見て絶句する。

「ハリが口封じに殺されておった。証拠はないが、おめおめと引き下がれぬ。慧が報われないではないか。とはいえ、無闇にロードの世継ぎを害することも叶わぬ。ひとまずは連れてきた。あとは玉兎の態度次第という所だな。」


真珠は玉兎が自分の身を案じてくれるとは、露ほどにも思っていなかった。ヴァンパイアの親子は産みの親子関係ではない。長い時間を共にしているとはいっても、ウェアウルフに比べれば情が浅い場合が多い。玉兎はその典型的な例だ。


「ルリの方はどうなった?」

「職場にも自宅にもいませんでした。荷物は全て整理され、電話も解約されているようです。一足遅かったようです。」

正は言った。小麦は真珠を睨む。真珠は縮こまっている。


「何にせよ、光琉が犯人ではあり得ないな。気の毒なことをした。奴は私の血以外を口に出来ぬはずだ。数日以内には戻ってこよう。」

小麦は光琉の机の上にある、白兎のぬいぐるみを眺めた。確かヒカリとか名付けたはずだった。今頃光琉は何処で何をしているのだろう。

玉兎と真珠が出たことで、主要な登場人物は出揃いました。と思ったらもう一人いました。今度こそ最後です。『真』という字が入る名前を持っている人物が三人もいることに気付きました。名前が偏り過ぎましたね。名前が似ている人物も多いのに。玉兎は男性の登場人物で一番のイケメンということになっています。性格はご覧の通りですが。過去編に登場する予定の故人を除いては、最年長でもあります。

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