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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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老王と若王(5)

「お前はどういった経緯でロードの血を受け継いだのだ。」

小麦は道すがら尋ねた。真珠は外車を運転しながら言った。

「俺が生まれた頃は丁度終戦直後で、食べ物にも事欠く有様でした。俺の父は陸軍の大佐でしたが、俺には兄弟が多く、実家の経済状態は厳しかった。そんな折、ロードがいらして、俺がロードの元に行くなら、まとまったお金をくれると言ったのです。」


「人身売買ではないか。」

小麦は口を挟んだ。

「今の人間の法律ならそうなるでしょうね。ですが、そのお陰で恐らく俺の家族は飢え死にせずに済んだはずですし、俺は永遠の命と安泰な地位を得られたわけです。ありがたいことでした。」


小麦にはそれが良かったのか分からなかったが、真珠は満足しているようだ。

「私と歳が近いな。私は戦前の生まれだ。お前は真白と同じくらいの年齢か。」

「それは光栄ですね。ロードとはかなり歳が離れていますし、近寄りがたく思えますが、ウェアウルフのロードは気さくな方なのですね。その歳で重責を担っておられるとは、頭が下がります。」


真珠は少し打ち解けた様子で話した。

「気さくだと言われたことはなかったが、玉兎に比べればそうか。気になっておったのだが、どうして玉兎は執拗に光琉を追うのだろうな。彼の性分からすれば、あんな使えない奴は捨て置きそうなものだが。」


「…お答え致し兼ねます。光琉とは誰なのかさえ存じませんので。」

真珠は言った。

「私の元にいた変わり者のヴァンパイアだ。相当な年齢のはずだが、生い立ちなど全く話してくれぬ。白髪に赤い目をしているのだが、知らないか?」


真珠は黙りこくった。

「真珠?」

小麦は待ちきれずに言った。


「嗚呼、運転に集中していて、申し訳御座いません。見た目は夜霧家の特徴と似ているようですね。傍系の者か何かでしょうか。俺は知りません。ロードも何も仰らなかったでしょう。本人も語ろうとしない上に、ロード御自ら命を狙っているということは訳ありでしょう。あまり詮索なさらない方が宜しいかと。」


小麦は欠伸をした。

「それもそうか。」

興味を失った小麦とは裏腹に、真珠は俄然光琉に興味を持った。長谷川という苗字は血が濃い者の中にない。血の親の苗字を名乗っていない可能性が高い。もしかしたら、血の親は…。そこまで考えて止めた。確証もないのに想像を働かせるのは危険だ。


「着きましたよ。」

真珠は小麦のためにドアを開ける。そこは廃工場だった。小麦はずかずかと中に入っていく。真珠も後ろを付いて行った。


「笹木ハリ、いるか?」

声が木霊した。返事はない。それどころか、誰かがいるような気配もない。

「行ってみましょう。」

真珠は嫌な予感がしていた。小麦が来ると聞いてから、玉兎が砕牙丸を持って外出していた。滅多なことでは持ち出さないのに。もしや…。


隈なく探しても誰もいなかった。それどころか、生活していた跡もない。片付けられている。小麦は狼に変身し、臭いを嗅ぎまわって調べる。真珠は緊張しながら待っていた。小麦は機械の隙間に強引に前足を差し入れる。そこにあったのは、ハリがしていたピアスだった。


「玉兎め、私を謀ったな。」

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