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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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老王と若王(3)

「胡散臭い。」

小麦は光琉からの手紙を読みながら言った。

「拝見しても宜しいでしょうか。」

正は言った。小麦は頬杖をつきながら手紙を渡す。正は目を通して言った。


「笹木が内通者?もしこれが本当なら一大事ですよ。」

「まあ、確認を取らねばな。玉兎の元に行こう。それより疑問なのは、光琉が涙石に平気で触れていたことだ。そんな力を持つヴァンパイアがいては困る。」

小麦は同封されていた似顔絵と涙石を引っ張り出す。小麦は耳に涙石を着けて正に言った。


「包丁で軽く指を切ってみろ。」

正は言われた通り包丁を持って来て、差し伸べられた小麦の指の上を滑らせた。切られた箇所は赤くなったが、傷口はすぐに塞がった。小麦は考え込んだ。

「これは本物か。私は夜霧家に行ってくる。留守を預かれ。」

「お一人で向かわれるのですか?なりません。あまりに危険です。」


小麦は慧を殺された怒りで判断力を失っていた。正もそれが分かって止めようとするが、手に負えなかった。

「黙れ。これは命令だ。私が夜霧家に行くことは誰にも言うなよ。」

正は諦めて小麦の無事を祈った。


「来る。」

青年はそう言ってスマホを閉じた。灰白色の髪に愁いを帯びた真紅の目をした美青年だ。睫毛は長く、鼻筋はスッと通っていて、透き通った白い肌をしている。真っ黒な着物には銀糸で五芒星が書いてあり、首元に白いショールを巻いている。見る者を惹きつけるような外見だが、同時に目を逸らしたくなるほどの恐ろしさも感じさせた。


「どうかなさいましたか、ロード?」

銀色の髪に唐紅の穏やかな目をした青年が尋ねた。玉兎とは異なり、安心感を与えるような雰囲気だ。ロードと似た着物を着ている。

「真珠はまだ会ったことがなかったか。もう一人のロードが此方に向かっているそうだ。出迎えの準備をしろ。この後の予定は全て取り消せ。」


真珠は好奇心より不安と恐怖を感じていた。

「ウェアウルフのロードですか?どうして急にいらしたのでしょう。」

「すぐに分かることだ。」

真珠は一礼して出て行った。玉兎は床の間にある日本刀を手に取った。砕牙丸と銘打ってある。美しい光を放っている。玉兎は刀を持ち、何処かへ出かけて行った。


小麦は夜霧家の敷地内に入った。ヴァンパイアは一斉に道を開ける。真珠だけが小麦の目の前に歩み出て礼をした。

「お前は誰だ?」

小麦は横柄に尋ねた。周囲のヴァンパイアは快く思っていないようだが、気を遣う小麦ではない。


「ウェアウルフのロードにお初にお目にかかります。俺は夜霧真珠と申します。我らのロードの一人息子で御座います。」

真珠は顔を上げずに言った。

「ロードもようやく世継ぎを持ったか。喜ばしいことだ。あれほど長生きしながら、一向に血分けをしないものだから、我が先代のロードも心配しておった。待望の世継ぎだけあって、優秀そうだ。」


「恐縮です。どうぞこちらへ。ロードがお待ちです。」

小麦は導かれるままに夜霧邸に足を踏み入れた。そこは日本庭園の広がる、格調高い家だった。

「久しいな、玉兎殿。息災だったか?」

小麦は上座にある座布団に腰掛けた。

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