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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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老王と若王(1)

「此処かな。」

光琉は古びたアパートのインターホンを鳴らす。

「どうしたのさ?その服は。」

鈴華は開口一番に言った。光琉は破れている上に血塗れの服を着ている。光琉は苦笑いした。

「ちょっと喧嘩しちゃって。詳しくは後で話すよ。」


玄関には男物と女物の靴があった。中は汚らしい状態だった。

「服の替えを持ってくる。」

奥の部屋のドアが開き、鈴木が現れた。少しやつれただろうか。赤いカラーコンタクトを入れている。玄関の靴は彼の物だろう。

「久し振りだな。その節はお世話になったのに、お礼も言えなくてすまなかった。」


「いいえ。結局上手く助けられませんでしたから。犠牲者も出ました。お二人は元気そうで何よりです。」

鈴華が明らかに鈴木の物と思われる洋服を持ってきた。着るまでもなく、光琉には大きすぎると分かる。


「光琉君、その服は着づらいだろう。俺が着替えを手伝おうか。」

「助かります。」

鈴華は部屋から出て行った。鈴木は光琉の頭から薄手のスウェットを被せて言った。

「光琉君は俺に敬語を使ってくれるけど、普通にため口で良いからね。寧ろ本当は俺が敬語を使うべきだよ。」


光琉は基本的に真白とその親戚や、依頼人などにしか敬語を使わない。向こうからそう言ってくれるなら、無理に敬語を使う必要もない。

「じゃあ遠慮なく。ついでに、名前は何だっけ?」

「そう言えば名乗っていなかったか。鈴木心鳳(しおん)だ。宜しく、長谷川光琉君。」


光琉は字を見て若いヴァンパイアか、改名したのだろうと思った。そう言えば、彼のチーム名はフェニックスだった。鳳凰から取っているのだろう。

「心鳳か、良い名前だ。」

「ありがとう。光琉君も良い名前だと思うよ。それで、何があったか訊いても良いかな。」


光琉は鈴華と心鳳の二人に軽く経緯を説明した。二人とも真剣に聴いていた。

「何それ、光琉は犯人じゃないのに、殺そうとするなんて!野蛮過ぎる。」

鈴華は言った。

「いや、小麦様がそう思うのも当然のことだよ。でも、小麦様の頭が冷えるまでは帰りたくないな。」


「真犯人は誰なのか分かるか?」

心鳳は尋ねた。光琉は首を横に振る。

「僕のバッグに涙石を仕込むことが出来たなら、病院の関係者か、そうでなければ…。」

「事の発端だった、茶髪の男は違うのか?」

心鳳は尋ねる。光琉はぬるいお茶を飲んで言った。


「慧さんがあまりに無抵抗に殺されている。彼が来たなら、ナースコールなり何なり出来たはずだし、涙石だって渡すはずがない。僕は別人だと思う。」

鈴華は席を立ち、スケッチブックと鉛筆を持ってきた。

「似顔絵、描けない?最初の侵入者の。」

光琉は頑張って思い出しながら描いた。傍目には上手いと思える出来だったが、本人は納得していなかった。


「集中出来ない。酒か煙草はない?出来れば強いやつ。」

光琉はスケッチブックを投げ出す。

「光琉、煙草なんて呑むの?」

鈴華は棚を探し始めた。


「最近は禁酒、禁煙だけどね。鼻が利く方々と関わってからは止めたよ。」

「テキーラで良ければ。あとは…チェリーだ。古いな。どう?」

煙草は棚の奥から見つかった。

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