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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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涙を呑む(6)

ルリは服を着て正が病院に着くのを確認し、パトカーが集まってくるのを見てから病院に入った。

小麦は慧の死体を見て取り乱し、正が宥めた。光琉が警察の会話を教えてもらいにやってきた。

「そんな馬鹿な…。」


ルリは光琉の言葉を訝しんだ。ナイフで刺せたのだから、慧が涙石を持っていないのは当然のことだ。ご丁寧に戻したとでも思ったのだろうか。

ルリは急に胸に痛みを覚えた。この症状はよく知っている。呪いだ。光琉が傍を離れるのを待って、ルリは涙石を確認した。黒い靄を発している。慧が最期に言いかけた『返せ』が不完全とは言え、所有者の変更条件に引っ掛かっているのだ。


ルリはとても涙石を持っていられないと判断した。触れるだけで手に激痛が走る。慧が死んだだけで目的は果たせた。どうにか涙石を始末しないといけない。近くに置いてある光琉のバッグが目に入った。

「まさしく一石二鳥ね。」


光琉は手の中の涙石を見て焦った。これでは犯人にされてしまう。

「やってくれたな。」

本来の持ち主である小麦に返せば、所有権が移る。光琉は小麦の発見しそうな場所に隠そうとする。


「何をしておるのだ?」

光琉が振り向くと、小麦が入口に仁王立ちしていた。その視線は涙石に注がれている。

「…お前が、お前が慧を!」

「違います。どうか話を聞いて下さい。」

光琉は小麦が襲い掛かろうとするのを見て、咄嗟に涙石を口に入れた。


「違うと言うなら、どうして涙石に平気で触れられる!慧から騙し取ったに決まっている。」

巨大な狼が光琉に咬み付いた。光琉は言い訳をすることも出来なかった。悲鳴が響き渡る。

「涙石の限界まで切り苛んでやる。」

光琉は目を瞑り、歯を食い縛って、襲い来る爪牙に耐えていた。肉や骨が切れると同時に繋がっていき、途切れることなく痛みは続いた。


「小麦様、お止め下さい。」

正の声がするが、光琉は頑なに眼を開かなかった。巨体が壁にぶつかるような轟音がして、上にのしかかっていた重りが消え失せた。

光琉はニッと笑った。口内の石は完全な無色透明のまま、光っている。


「馬鹿な。何回殺したと思っている?何故涙石が黒くならぬ?」

小麦が呟く。光琉は口を閉じ、飛び起きてバッグを引っ掴み、窓に飛び込んだ。小麦は、いつもは真っ赤な光琉の瞳孔が深い黒になっていることに気付いた。鋭い音が響き、近所から様子を見る顔が覗く。小麦は追い駆けようとするが、正が止める。


「この姿ではなりません。狼の姿で家から出るのはお止め下さい。」

「だが、このままでは光琉に逃げられる。」

小麦は牙を剥き出しにする。

「どうせ身寄りもないはずです。すぐに見つけられましょう。」

小麦は不満そうに引き下がった。


光琉は人目を避けて公園のトイレに入った。スマホを取り出して、電話を掛ける。

「明け方にごめん。少しの間匿って欲しいんだ。駄目かな?」

光琉は流しで涙石を洗い、バッグに仕舞う。ボロボロの服はどうしようもなかった。

「ありがとう、鈴華。」

鈴華が誰か分からないという方は、『鈴の共鳴』をお読み下さい。正が誰か分からないという方は、『ブランド服の殺人鬼』の最後や『檻の狼と尋ね人』をお読み下さい。ルリが誰か分からないという方は、『借りてきた狼』をお読み下さい。慧が誰か分からないという方は、『愛は屋上の狼に及ぶ』からお読み下さい。小麦や光琉が誰か分からないという方は…。冗談抜きで登場人物が分かりにくい気がします。でももう大丈夫です。主要な登場人物は次回で出揃います。

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