表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
54/401

涙を呑む(1)

「名前は思い出せません。聞いたはずなのですが。報告する相手をロードと呼んでいました。光琉さんを殺すよう命じられ、赤い宝石を手渡されました。他はあまり思い出せないです。」


慧は説明しながら、違和感を覚えていた。わざわざ回収に来た所を見ると、あの宝石は希少なものだったに違いない。事実、黒幕はヴァンパイアのロードだった。それなのに、どうしてわざわざ光琉を殺そうと躍起になっていたのだろうか。普通は敵のトップ、小麦を仕留めようとするはずだ。


「ゆっくり思い出せばいい。それより、早急に慧に護衛を付けるべきだな。」

小麦の眼光が更に鋭くなった。

「侵入者の警戒のために警備が増えています。あまり大勢のウェアウルフを動員なさいませんよう。慧さんに涙石をお預けになれば当座は凌げると思われます。」

光琉は慎重な態度を崩さない。


「玉兎まで関わっておる。此方もそれなりの対応を取らねばならぬ。せめてその男を捕らえるか、名前だけでも分かれば、玉兎に問い詰めてやるものを。」

「すみません。」

慧は申し訳なさそうに呟く。


「嗚呼、気にするな。証拠などなくとも潰してやる。」

「でも、僕は光琉さんを殺そうと…。」

慧はベッドから上半身を起こす。小麦は優しく押し戻す。

「だが、小癪にも光琉は生きておる。次は確実に息の根を止めるのだぞ。」

「止めて下さい。慧さんが本気にするかもしれないでしょう。」


慧は光琉と小麦を見比べる。長年を掛けて培われた信頼関係が見える。こんなブラックジョークでも平気で笑い合えるくらいに。

「そうだ。正さんを呼びましょう。あの方は警察に追われないはずですね。小麦様と交代で見舞いにいらっしゃれば安心でしょう。」

「光琉、お前はどうするのだ。」

光琉の表情は心底嫌そうだ。


「僕はほら、小麦様が不在の間、留守をお預かりします。」

「その必要はない。来い。」

小麦は威厳たっぷりに言った。慧は光琉に気を遣って言った。

「あの、僕も気まずくて、光琉さんにはあまりお会いしたくないというか…。本人もこう仰っているのですから、無理強いしない方が宜しいかと。」


「慧がそう申すなら、暫くは二人で見舞いに来よう。」

小麦はつまらなそうに言った。光琉は正に連絡を取りに外に出た。部屋を出る直前、慧に向かって軽く会釈して微笑む。


「もしもし、正さん。今お時間はありますか?」


病室にやってきた正はすぐに小麦と光琉を外に連れ出した。

「どういうご関係ですか?」

「慧のことか?あやつは…。」

光琉は小麦の言葉を遮った。

「隣人です。今の家の。」


「そうか、光琉。ただの隣人のために、ロード以外の使用が認められていない涙石を人間に持たせ、剰え警護まで頼みたいと?」

正は説教モードに突入した。

「違うのだ、正。慧は私の想い人だ。」

正は呆れ果てたように言った。


「僭越ながら、ロードともあろうお方が人間と火遊びするなどと…。」

「聞き捨てならんぞ、正。私は真剣に慧のことを愛していて…。」

正が益々険しい顔付きになるのを見て、光琉は軽率に正を呼んだことを後悔した。

「その方が余程質が悪い。まさか正体は明かしていないでしょうね。」

正は声を荒げる。光琉は必死に仲裁する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ