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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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愛は屋上の狼に及ぶ(6)

「どうして戻ってきた?」

「いけませんか。先程は失礼致しました。少々驚いてしまって…。」

光琉は慧の胆力に感心していた。僕だったらそのまま引っ越すと思いながら成り行きを見守っていた。

「私の正体を見たのに、気にならないのか?」


「人狼ですよね。実物は初めて見ました。人間を襲うことはあるのですか?」

慧は自然に尋ねる。小麦は精一杯怖そうな態度を取る。

「別に…。積極的に襲い掛かることはない。でも、人肉は好物だぞ。」

慧は少し不安そうな表情になった。

「あれ、もしかして今、僕は命の危機ですか?僕の肉は不味いですよ、多分。」


「小麦様、もう観念なさっては如何ですか?もう脅して逃げる段階ではないと思いますよ。」

光琉は笑いながら言った。

「光琉さんも人狼なのですか?」

「いいえ、僕は吸血鬼ですよ。でも人を襲わないので、安心なさって下さい。僕も、小麦様もね。」


小麦は首を横に振る。

「駄目だ。私といると危険が伴う。」

健気だな、と光琉は他人事のように小麦の悩みを聞いていた。

「目と鼻の先に住む人ですよね?気を付けていれば問題は起こらないかと。」

小麦はギロッと光琉を睨みつける。


「納得いきません。小麦さんが僕をお嫌いなら兎も角、そうでもないのに諦めないといけないなんて…。」

小麦は嘘でも慧が嫌いだと言えなかった。

「まだ慧は分かっておらぬな。私は、慧と同じ時間を生きられぬ。私は老いない。何年経っても私はこのままだ。」


小麦の表情は浮かない。慧はそれでもめげない。

「ならば、僕が年老いる前に思い出を作りませんか。僕に何か買ってくれるって言っていましたよね。行きましょう。」

「いや、私は…。光琉、助けないか。」


光琉はニヤリと笑った。

「楽しんでいらして下さい。慧さん、門限は気にしないで大丈夫ですよ。いっそのこと朝帰りでも良いですからね。」

「いやだなあ、節度のあるお付き合いをしますよ。」

二人は楽しそうに笑っている。小麦は思った。これでは光琉が二人に増えたようだ。


「待たんか、お前ら。私はまだ何も…。」

二人は息ぴったりに小麦を押し出した。

「行ってらっしゃい。」

光琉はにこやかに手を振る。小麦の目の前でドアがピシャッと閉じられた。

「話を聞けー!」


「まあまあ、そんなに帰りたいのなら、早々とプレゼントを買って下さい。楽しみにしていたんですよ。」

小麦は照れ笑いを浮かべる。

「仕方ないな。全く。装飾品を貰ったのだから、同じように装飾品で返そう。イヤリングとネックレスではどちらが良いかな。」


二人は髪留めを買ったのと同じ店に行った。暫く和気藹々と選んでいたが、小麦は菊のブローチを見つけて喜ぶ。

「苗字は菊池だったよな。そして母親が弁護士。ぴったりじゃないか。」

小麦は手に取ろうとして、空中で手を止めた。銀だ。純銀ではないが、触れたくない。


「これを選んでくれたのですか?」

後ろから慧が囁きかける。小麦はビクッと動く。

「あ、嗚呼。どうだ?」

慧は胸元に付けてみて屈託なく笑った。小麦の鼓動が少し速まる。

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