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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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借りてきた狼(6)

帰ってくると、小麦は真っ先に光琉の元に向かった。光琉はもう起き上がっており、元気そうな様子だった。小麦がシクラメンを手渡すと、光琉は喜んで見せた。

「ありがとうございます。丁重に育てます。」

二人は何処に行ってきたのか話し、暫くして部屋から出ようとした。光琉は若葉を呼び止めた。


「若葉さん、話がある。残ってくれないかな。」

若葉は光琉の言葉に従った。光琉は何も言わずに、ジッと若葉の目を見据えていた。サングラス越しでも分かるほどに。

「何?用があるならさっさと言ってよ。」

「単刀直入に言おう。『石』を渡してくれたら、小麦様に黙っていてあげる。」


若葉は動揺を隠した。お守りのことを言われていると気付いたためだ。

「何のことだか…。」

「本当に言わないから。これ以上シラを切るようなら、小麦様に訴える。あの方の信頼を裏切ることは避けたいはずだ。」

光琉は涙石を若葉に見せた。呪いが効かないと分かった若葉は悩んだ。


誤魔化すことは難しそうだ。でも、光琉に弱みを握られるのは嫌だ。本当に黙っていてくれるとは考えにくい。

「信じられない。本当に私が『石』を持っているとして、どうやって気付いたの?どうして呪われたのに黙っているの?」

若葉は慎重に言葉を選びながら言った。


「気付いた理由は企業秘密ってことで。黙っている理由は簡単さ。若葉さんが罰せられても、僕にメリットがないから。それよりは関係を改善したい。殺意のある呪い方ではなかったからね。ただ小麦様のお傍にいたかっただけだろう。だから、今日はその機会を作ってあげたんだよ。僕も嫌味が過ぎたね。これで水に流さないか。」


光琉は事も無げに言った。若葉には光琉の真意が理解出来なかったが、もうお守りを手放した方が良いと思い、ポケットに手を入れた。そのままバッグや上着を探る。

「どうしたの。」

「…ない。そんなはずは…。」

若葉は初めて取り乱す。


「外出先で失くしたか、盗られた?心当たりはないの。」

光琉は冷静に尋ねる。

「そう言えば、誰かとぶつかったわ。」

「その人の特徴は?」

若葉は言葉に詰まった。


「どうしたのさ。」

「おかしいわ。全く思い出せない。いくら何でも、男性か女性か、若者か年寄りかも分からないなんて…。」

若葉の目は焦点が合わず、ぼーっとしている。今度は光琉が慌てる番だった。

「『石』はどうやって手に入れた?誰に貰った?全て話してくれ。」


「貰った…?分からない。知らないの。」

若葉は頭を振った。光琉は舌打ちする。

「手遅れか。いくら何でも効き目が早すぎる。前々から手回ししていたな。」

「私はどうしたらいいの?」

若葉は虚ろな表情になった。光琉は優しく微笑む。


「大丈夫だ。その部分だけ記憶を消したということは、これ以上手を出さないということでもある。普通に生活すればいいよ。小麦様には僕から上手く言っておくから。」

光琉は立ち上がった。


「ごめんなさい、光琉。もうあんたを妬まない。私はいつか、あんたの隣で小麦様にお仕え出来るようになってみせるから。」

若葉は言った。光琉は嫌味なく笑った。

「楽しみに待つよ。ありがとう。」

若葉の名前だけが第二話に一瞬出てきたことを覚えておられた方は、卓越した記憶力を誇って良いと思います。金井若葉はこの後も登場します。無論、敵ももっと『石』を悪用していきます。お楽しみになさって下さい。

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