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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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借りてきた狼(4)

光琉は紙のように白くなった顔で、どうにか座って耐えている。小麦はいつになく優しい表情で傍に腰を下ろしている。

「血が必要な体調か確かめに来ただけだ。大丈夫なのだな。」

「ええ。このところ呑みすぎましたから。流石にこれ以上は頂けませんよ。お気遣い感謝致します。」


若葉は嫉妬に狂いそうになった。お守りを握り締める。

光琉は苦悶の表情を浮かべた。小麦は立ち上がりかけていたが、再び腰を落ち着ける。

「お前こそ、私に気を遣って体調の悪さを隠しておるのではないか。」

「大丈夫です。少し一人にして下さい。小麦様がおられると、おちおち横にもなれませんから、悪化します。」


小麦は渋々去った。光琉は布団に倒れ込む。呼吸を荒げて脂汗を浮かべている。どう見ても大丈夫ではない。若葉の怒りが少し収まった。光琉は小麦のために体調の悪さを見せずに耐え忍んだ。それはかなりの精神力を必要としたはずだ。


翌朝、光琉は部屋に若葉を呼んだ。若葉が入ると、一晩でやつれてしまった光琉が布団に横たわっていた。

「ちょっと、一人にしてほしい。具合が悪くて駄目だ。小麦様を連れて、一日外に出掛けてくれないかな。」

疲れ果てたように光琉が言った。


「了解。でも、小麦様にお伺いを立てないと。」

若葉はワクワクした。小麦と二人きりで外出出来るなんて、願ってもないことだからだ。

「何?光琉がそんなことを?」

小麦は耳を掻きながら言った。

「これほど不調なのも珍しいな。花でも買ってやるか。支度しろ。」


若葉は大喜びでめかしこんだ。小麦は下駄を履き、家を出た。二人はバスに乗って町に出掛け、小さな花屋に入る。

「これなどどうだ?」

そう言って小麦が手に取ったのは、赤いシクラメンだった。若葉は苦笑する。

「光琉へのお見舞いにお買いになるのですよね。」


「そうだ。綺麗な篝火花ではないか。」

病人に鉢植え、それもシクラメンでは縁起が悪いと思ったが、若葉は小麦の決定に口出ししようとは思わなかった。

「良いと思います。」


「では買って来い。」

小麦は鉢を若葉に押し付ける。若葉はレジに向かった。

「帰るにはまだ早かろう。登山に行きたいと思っておったのだ。案内せよ。」

若葉は周囲の登山向けの山を調べ始める。丘と呼べそうな山があったので、バスの時間を調べる。


「お昼過ぎにバスが出ます。何か食べていきましょうか。」

「肉が食べたい。」

小麦は言った。若葉はハンバーグ専門店に案内した。若葉は暖簾を潜ったこともないような、少し高級な店だ。小麦は一人でビッグサイズを二個注文し、むしゃぶりつく。若葉は遠慮がちに一番安いハンバーグを食べる。


「つかぬことを伺いますが、小麦様。光琉のことをどうお思いなのですか。」

若葉は徐に訊いた。

「どう、とは?ただの下僕だが。」

小麦は訊き返す。

「それだけですか?失礼かと存じますが、外見上の年齢が近い男女が毎日二人きりで過ごすというのは…。」


小麦は明朗な笑い声を響かせる。

「そう単純な間柄ではないのだ。少なくとも向こうは私を憎んでおる。私も奴の軽口は好まん。」

「それならば、どうしてお傍に置いておかれるのですか。」

若葉は尚も問い詰める。小麦は水を飲んだ。

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