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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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借りてきた狼(3)

「汚らわしいヴァンパイア風情がよくも…。」

「あーあ、そんなことを言っていいのかな。そのヴァンパイア風情を傍に置き続けている方もいらっしゃるのに。悲しむだろうな。」

光琉は芝居がかった調子で言った。

「今に見ていろ。絶対に見返してやるわ。」

若葉は言った。


「へえ、楽しみだな。どうやって見返すのさ?若葉さんの方が僕より頭が良くて、強くて、小麦様の同族で、長年仕えていて、それでも僕が選ばれているというのに?これ以上何を努力出来るの?」

言っていて悲しくならないのかと思うほど卑屈な自虐ネタを言って、光琉はせせら笑う。

「悔しい。何故あんたなの?私の方が小麦様に相応しいのよ。あんたさえいなければ…。」

若葉の顔が怒りで歪む。


「難儀だよね。僕を排除したら、小麦様に逆らうことになるもの。いつも言っているけど、諦めなよ。最初から同じ土俵で勝負していないんだってば。僕だって辞められるなら辞めたいさ。」

ヘラヘラと笑う光琉を見るうちに、若葉の胸の奥からどす黒い思いが込み上げてきた。そうだ。光琉が死ねば、万事解決する。恨めしい。消えてしまえ。若葉は念じた。


光琉は不意に咳き込んだ。心なしか顔がいつもより更に白く見える。

「どうしたんだろ。疲れが出たのかな。自分の夕飯は用意出来るね。少し休ませて。」

光琉は自室に入り、障子を閉める。光琉がいなくなったのを見届け、若葉は不気味な笑みを浮かべる。


若葉はいそいそと野菜スープを作った。小麦が夕御飯を食べにやってくる。

「光琉はどうした?」

それが第一声だった。

「自室で休んでいますよ。具合が悪いようで。」

「軟弱な奴だ。あいつは物を食べないからよかろう。誰かと食卓を囲むのはいつぶりだったかな。」


小麦は唐揚げの山に箸を伸ばし、次々と口に放り込む。

「若葉も食べろ。遠慮は無用だ。」

「ええ、小麦様。ですが、お野菜も召し上がりませんと。」

小麦は唐揚げを呑み込んでから答える。

「光琉のようなことを言う。大丈夫だ。半分は肉食獣だからな。」


若葉は愛想笑いを浮かべる。

「そうかもしれませんが…。では、スープは如何でしょう。」

小麦は勧められるままに飲んでみる。

「ふむ。マズいとは言わんが、水っぽい物は食べた気がせん。」

小麦はその後も唐揚げを頬張り続け、五人前くらいを平らげた。仕上げに菓子を摘まむ。


「もっと食べてよいのだぞ。」

若葉は唐揚げを十個口にしたところで力尽きた。

「申し訳御座いません。もう満腹でして、これ以上は…。」

「なんだ。少食だな。まあ良い。」

小麦はテレビのリモコンを手に取ると、アニメを観始めた。若葉は洗い物をするために立ち上がる。


洗い物を終え、茶の間の方を見ると、小麦はいなかった。若葉は小麦を探し回るが、なかなか見つからない。最後に光琉の部屋に行くと、中から声が聞こえてきた。若葉はそっと覗き見る。

「また顔色が悪くなってきたのではないか。だから寝ていろと言うたのに。」

「小麦様の御前で横になるわけには参りません。部屋までお越しになるとは…。僕のことを心配して下さるなんて、どういう風の吹き回しですか。」

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