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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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鈴の共鳴(9)

「何処にいるのだ?」

「居場所は言いませんよ。」

小麦は光琉を咬もうとする。光琉は慌てて告げた。

「言い終わった瞬間に殺されるでしょう。せめて真白様に一目お会いして死にたいのです。案内しますから、連れて行って下さい。最期の頼みです。」


小麦は無理やり居場所を吐かせようかと思ったが、時間を掛け過ぎて手遅れになることを恐れた。どうせ逃げおおせるだけの実力はない。連れて行くことに決めた。

「嘘だったら楽に死ねないと思え。」

「真白様の名を出して助かろうなどという、浅ましいことは考えませんよ。」


光琉は向かっている道に覚えがあった。フェニックスの拠点がある場所だ。まさにウェアウルフが集っている場所で光琉は立ち止まる。

「小麦様、申し訳御座いません。逃げられました。逃げ遅れのヴァンパイアを数人捕らえました。」

先程のウェアウルフが報告に来た。


「光琉、どういうことだ。真白がおらんぞ。」

小麦は報告を無視する。

「いえ。近いです。」

光琉は建物の中に入った。小麦も後ろから付いて行く。真っ暗闇の中に足音だけが重々しく響く。光琉は奥の部屋のドアを恐る恐る開ける。やはり誰もいない。


小麦は右にいる光琉の方を向く。

「誰もいないではないか。とんだ無駄骨だ。」

「左です!」

小麦は光琉の叫び声に反応したが、左目が見えない分、避け切れなかった。暗闇に血の香りが漂った。


「姉上?どうして此処に…。そのピアスは涙石ですか。」

ゆったりと深みのある声が聞こえてきた。金色の目玉が二つ、虚空に浮かんでいる。小麦たちには、未踏の新雪のような、上品な純白の毛並みの狼が見えていた。小麦と同じくらいの大きさで、耳には血のような紅さの紅玉が輝いている。


「真白、貴様に会う日をどれ程心待ちにしていたか!涙石を持つ私に攻撃は無意味だぞ。大人しくその首を置いていけ。」

小麦の怪我は跡形もなく消えていて、涙石は中心が黒ずんでいた。

「涙石が真っ黒に染まるまで攻撃すればいいだけのことでしょう。姉上、私は昔とは違うのです。甘く見ないことですね。」


二頭は睨み合ったまま、円を描いて動き続け、膠着状態に陥った。実力が拮抗しているため、両者ともに相手の出方を窺っている。

「真白様、僕を覚えておいででしょうか。」

光琉は離れた所から呼び掛ける。真白は横目でチラッと光琉を見た。

「光琉ね。忘れるはずがない。」


「どうか僕も連れて行って下さいませんか。」

真白は品定めするように光琉を見て、牙を剥き出して笑った。

「此方に来なさい。ゆっくりと。」

光琉は躊躇わずに近寄って行った。小麦の近くを通っても、警戒さえしていない。真白以外は視界に入っていないようだ。


小麦は真白の筋肉が強張るのを見て、すぐに脚を動かした。真白は光琉に飛び掛かり、大きく口を開けて咬み付こうとした。光琉は逃げようともせずに立っていたが、首根っこを掴んで後ろに引き摺られる。真白の牙は、さっきまで光琉が立っていた場所の空気を食んだ。

光琉が振り向くと、小麦の牙が襟に食い込んでいるのが見えた。光琉は大いに憤慨した。

「放して下さい。」

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