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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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鈴の共鳴(8)

家のインターホンが鳴った。中に入ってきたのは、四十代くらいに見える男性だった。スーツを着ているが、裏社会の者に見える。

「何の用だ?あまり此処を訪れるなと言ってあるはずだが?」

「申し上げます。小麦様。昼間に亡くなった兄貴は、フェニックスに嵌められたに違いありません。どうか、報復にお力添え下さい。」


光琉にとって喜ばしくない展開だ。

「フェニックス?」

小麦は足を組む。男性は続ける。

「兄貴がリーダーを務めるクレセントの敵対勢力です。丁度叩き潰すところだったんです。」

「それは君たちの問題だろう。ロードをお呼び立てするほどのことではない。分をわきまえないか。」


光琉は口を挟む。小麦は手を挙げて阻止する。

「口を挟むな。ウェアウルフの問題だ。私がいる場所を襲撃したとなると、私が報復するには十分な理由だ。案内しろ。」

光琉は小麦に向かって手を伸ばしたが、その手を掴んで引き止めることは出来なかった。光琉の手は虚空を掴む。光琉は頭を必死に回転させる。小麦がこんな小さな件に積極的に関わろうとするとは思えない。


光琉はスマホを取り出し、鈴華に電話を掛ける。

「聞いたよ。クレセントのリーダーが死んだって。感謝してもしきれないよ。」

鈴華の声は嬉しそうだったが、光琉は深刻な口調で言った。

「鈴華、しくじった。ロードが動き始めた。リーダーを連れて、すぐにそこから逃げるんだ。」


「誰と話をしている?」

聞き覚えのある声がする。穏やかな口調なのが余計に事態の深刻さを物語っている。光琉の心臓が跳ね上がった。光琉は振り返らずに言った。

「…いつからお気付きだったのですか。」


「決定的だったのは先程の会話だ。いつものお前なら、渋る私を説得して助けに行かせるくらいのはずが、止めるだと?らしくないな。だが、その前から薄々疑ってはいた。私からも一つ問おう。何故だ?」

光琉は窓の外を眺めていた。幾分気持ちが落ち着いてきた。

「馬鹿ですよね。こうなるだろうとは思っていましたが、捨てられなかった。…捨てられる辛さが分かるから。僕が命を懸けるべき相手は他にいたのに。」


光琉は背後に熱い吐息を感じる。恐怖が強まってきた。鮮烈な痛みの記憶が呼び覚まされる。それでも振り返る勇気も、逃げ出す気力も残ってはいなかった。

「曲がりなりにも私に仕えていたからな。何か言い残すことはないか?」

「僕が今際の際に何を伝えたいか、聡明な小麦様ならお察しのことと存じます。」


…真白様。光琉は目を閉じ、身体を縮めて、歯を食い縛る。

不意に光琉は顔を上げた。感じる。近くに強烈な気配が迫っている。光琉は大声で叫びながら振り返った。

「待って下さい!」

空中に浮かんでいた、黄ばんだナイフの列が止まる。再び動き出し、その奥から声が発せられる。


「命乞いなら聞かないぞ。」

「真白様が近くにおられます。」

光琉は嬉しそうに言った。小麦は目を円くする。

「そんなことがあるものか。逃げ出そうとして出まかせを述べているのだろう。」

「いいえ。確かです。」

光琉は自信ありげに言った。小麦はそっと涙石を耳に着ける。

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