鈴の共鳴(2)
鈴華と光琉はカラオケに入った。光琉は嫌だったが、押しに負けた。
「何歌う?光琉。」
「僕はいいよ。それより、相談所のことを誰から聞いたのか教えてもらっても良い?」
鈴華は名残惜しそうにマイクを置いた。
「誰って、仲間から聞いただけだよ。」
怪しい。光琉は眉をひそめる。偶然にしては出来過ぎているし、ウェアウルフのための相談所を、知らずにヴァンパイアに勧めるはずがない。
「まあいいや。相談内容を聞かせてよ。」
「あたしはフェニックスっていう、ヴァンパイアのチームに入っているんだ。最近、ウェアウルフのチーム、クレセントとトラブルがあって、このままだと壊滅させられそうなんだ。」
光琉は瞬時に手を引くべきだと悟った。ウェアウルフを倒すのに手を貸したら、小麦に殺されるのが目に見えている。
「僕は助けられない。申し訳ないけど、他のヴァンパイアを頼ってくれ。」
鈴華は深々と頭を下げる。
「分かってる。どんなに危険な頼みなのか。全員を助けてくれとは言わない。ただ、リーダーだけは亡命させてやってくれないか。」
光琉は答えなかった。
「リーダーは、こんな所で死んでいい人物じゃない。あたしらみたいな、底辺のヴァンパイアでも見捨てずにチームに入れてくれたんだ。あんたには理解出来ないかもしれないけど、あたしはリーダーのためなら、何だって出来る。どうか…。」
光琉は鈴華の肩に手を乗せた。複雑な表情を浮かべている。
「分かるよ、僕には。」
その後、詳しい事情を訊いてみると、事の発端は、フェニックスの中でも一番の下っ端が、クレセントの下っ端の金を騙し取ったことにあるらしい。事件が発覚すると、そいつは保身のために、鈴華を唆してクレセントの下っ端を完全に潰した。ところが、その時にはクレセントの先輩に報告が行っており、報復されている状態だという。
「張本人はどうなった?」
「それが、直属の兄貴分に始末されたんだが、上が関わっていたから証拠隠滅したんだろうって、益々怒らせたよ。」
光琉は悩んだ。張本人が死んでしまったとしたら、解決しづらくなった。時計を見る。十六時過ぎだ。小麦が帰ってくる。
「連絡先を交換しておこう。フェニックスのリーダーと差しで話そうと思ったら、口利きしてもらえるかな?」
光琉は言った。鈴華は黒いカバーを付けたスマホを取り出す。
「勿論さ。ありがとう。依頼料はいくら払ったらいい?」
「友達の相談に乗っただけだ。依頼は受けていない。気になるなら、歌でも一曲聴かせて貰えれば十分だよ。」
鈴華は顔を輝かせてマイクを握った。
「この曲は自信があるんだ。いつも九十点台を取ってるから。」
豪語するだけの実力はあった。難しい洋楽だったが、高音まで伸びやかに響いてくる。光琉は素直に感心した。
「上手いじゃないか。丁度時間も良いし、今日は帰ろう。」
「まだ光琉が歌っていないだろう。」
鈴華はマイクを押し付ける。
「悪い。僕は音痴で駄目だ。それに時間もないから、また次回な。」
鈴華は渋々承諾した。光琉は急いで家に帰った。小麦から連絡が入っている。既に帰っているようだ。




