鈴の共鳴(1)
「少し出掛けてくる。」
小麦は徐に言った。光琉は戸惑う。これまでは常に、小麦の外出に付き添っていたためだ。
「お一人で…ですか?何処に?」
「正の所へ行く。夕刻に戻るつもりだ。お前は傷が治るまで出歩くな。」
小麦は下駄を履いて玄関を出た。光琉は小麦の姿が見えなくなってから、ガッツポーズをする。
「よし。久々の自由だ。真白様の居所さえ分かれば、すぐにでも行くのだが。」
光琉はパソコンに向かい、血酒石の仕業と思われる事件はないか調べ始める。程なくしてチャイムが鳴る。
光琉は苛立ちながらも玄関に向かう。外にいたのは焦げ茶色のポニーテールをした女性だった。十代後半くらいだろうか。どうやらファッションに気を配らない性格のようだ。よれよれのジーンズに、くたびれたトレーナーを着ている。
「超常現象相談所って此処?」
「そうですよ。立ち話もなんですから、どうぞ中へ。」
光琉は茶を淹れようとしたが、女性は断る。
「本日はどのようなご用件で?」
女性は光琉を眺めている。
「あんたは此方側の存在か?」
「さあ?もっと詳しく説明して下さい。」
光琉はサングラスを外し、赤い目を見せる。女性は笑みを浮かべる。
「聞いた通りだ。あたしはヴァンパイアなんだ。鈴華という。あんたも同胞だろう?」
光琉は眉をひそめる。
「鈴華さん、と言ったね。この相談所の名前を知っているかい?」
「いや…。」
鈴華は不安そうな表情を見せる。
「『ヤマガミ』だよ。」
鈴華は立ち上がり、爪を伸ばして攻撃の構えを見せる。光琉は左手を上げる。
「此処にいるのか?ウェアウルフのロードが。」
「安心してくれ。僕はヴァンパイアだし、幸運にも此処の主は不在だ。君は此処に来なかった。あの方に見つかる前に帰ってくれ。」
鈴華は爪を仕舞う。まだ警戒しているようだ。
「どうしてヴァンパイアが、ウェアウルフなんかに協力している?」
「僕の身の上話を聞きに来たわけ?さあ、すぐに帰るんだ。」
光琉は立ち上がる。鈴華は必死に訴える。
「待って。あたしもこのまま帰れないよ。せめて話だけでも聞いてくれないか。」
光琉は何度も断るが、鈴華は懇願し続ける。遂に光琉は折れた。
「ヤマガミの所長としては、ヴァンパイアからの依頼を受けられない。これは覆せない。ところで僕はさ、ウェアウルフの元に身を寄せているから、同胞の友達が一人もいないんだ。もし、友達が困っていたら、絶対に相談に乗るのになあ。誰か、僕と友達になってくれるヴァンパイアはいないかな。」
光琉は横目で鈴華を見る。
「お願いだ。あたしと友達になってくれ。」
光琉は微笑む。左手を差し伸べる。
「宜しく、鈴華。僕は光琉だ。早速、何処かに遊びに行こうか。嫉妬深い女王様が戻ってくる前に。」
鈴華は光琉の左手を取った。




