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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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檻の狼と尋ね人(8)

正はどうして自分が長いこと生かされているのか疑問だった。決定的な証拠を握られている今となっては、すぐにでも処分されるものと覚悟していたが、一週間が経っても鉄格子の中だ。


看守の足音が牢の前で止まった。正は顔を上げる。看守は牢を開けた。

「出ろ。」

正は大人しく従う。とうとう処分されるのか。裏口から外に出る。久々に見る青空に感動していると、聞き覚えのある声がする。


「正。」

正は思わず振り向く。紅葉の中に、見覚えのある藍色の着物が目に飛び込んでくる。そこにいたのは小麦だった。安堵の表情を浮かべている。

「どうして此処に…。」

「釈放だ、土浦。」

手錠を外され、正は混乱する。


「小麦様、これはどういうことですか。」

「話は後だ。来い。」

正は人当たりが良さそうな青年の姿をしている。叔父と姪の関係とは言え、正は小麦とは似ても似つかない。道行く人はちぐはぐな二人連れが気になっているようだ。


小麦は正を家に招いた。光琉が事の顛末を手短に説明する。

「私を助けるために、そんな大掛かりなことをなさっていたのですか。なりません。君臣の区別を付けなくては。公私混同なさらないで下さい。」

正は感謝するどころか説教する。


「小麦様は随分と骨を折っておいででした。そんな風に言わないで下さい。」

光琉は穏やかに言った。小麦も便乗する。

「そうだ。もう過ぎたことだ。それより、聴いて欲しいCDがある。光琉、持って来い。」

光琉は席を立った。正は改めて頭を下げる。

「小麦様、何とお礼を申し上げれば良いやら…。この御恩は生涯忘れません。」


小麦は笑った。

「重い。我らの仲だろう。これからも私に仕えてくれれば、それで良い。」

「勿論で御座います。終生小麦様にお仕え致します。」

光琉はCDを流した。切ない曲で、場の雰囲気が更にしんみりする。

「全く、辛気臭いな。」

口では言うが、小麦の表情は明るかった。


その後、案の定由佳は殺人犯に仕立て上げられた。真犯人が十年前に死んだ兄だとは言えないから、当然と言えばそれまでだが、光琉は気分が晴れなかった。

「優等生の裏の顔。現代社会の闇。随分と好き勝手なことを言うものだ。どう思われますか?」


「興味がない。私はウェアウルフのためだけに存在している。人間界のニュースではなく、裏のニュースはないのか。」

小麦は悠々と爪を研いでいる。


「小競り合いはありますが、小麦様が介入なさるほどのことではありません。相談所への依頼もありません。」

「良いことだ。平和が何よりだからな。違うか?」

そんなことを言っていると何か起きそうだと思いながら、光琉は同意した。

「勿論ですとも。」

無駄に情報量が多いです。読み飛ばして下さっても何の問題もありません。小麦様を活躍させたかっただけです。

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