表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
22/401

檻の狼と尋ね人(7)

光琉は小鳥の囀りで目覚めた。布団を払い除け、怪我の状態を確かめる。包帯が乱暴に巻かれている。痛みはあるが、治っているようだ。光琉は起き上がると、リビングに向かう。

「小麦様、おはようございます。」

「ようやく目覚めたか。何か覚えているか?」


小麦は振り向きもしない。

「何か…って?小麦様の背に乗ってから記憶がないですが。」

小麦は笑顔で振り向いた。

「そうか。なら良い。三日も起きないから心配したぞ。」

「三日…ですか。ご迷惑をお掛けしました。」


光琉は目を伏せる。

「気に病むな。私もやりすぎだった。虫の居所が悪かったのだ。」

「由佳さんは見つかりました?」

光琉は義手を小麦に渡す。小麦は黙って付けてやる。光琉はスマホを開き、地図を用意する。


「いや、まだだ。人海戦術で探してはいるが…。」

「僕は気付きましたよ。由佳さんは此処か、此処か、此処にいます。」

光琉は自信たっぷりに言った。


「由佳さんが電話に出てから、僕らが彼を見つけるまでの時間はざっと一時間。その間に彼は由佳さんを連れ去り、殺害し、移動して獲物を見つけている。」

光琉はまくし立てる。小麦は黙って聞いていた。


「そうなると、殺害現場は由佳さんの家から徒歩圏内です。これだけ時間が経っても発覚しないのは、結界を張っているためでしょう。彼の実力からして、人外の影響力が増す、墓地や廃墟、河原でもなければこんな芸当は出来ないと思いますよ。当日の時間帯とか彼の年齢とか、諸々の条件から絞り込んで、この三箇所以外には隠せないはずです。」

小麦は場所を確認した。

「筋は通っているな。珍しく役に立ったではないか。」


「そろそろ活躍しないと、非常食として活躍する羽目になりそうですから。役立ったところで、ちょっと寝ていても良いですか。まだ傷が癒えていないです。」

光琉は蒼い顔で布団に戻る。小麦はウェアウルフに連絡を回すために準備し始めた。


「また野良犬だ。最近多くない?」

街を堂々と闊歩する狼たちを見て、若者が言った。

「怖いね。あっち行って。」

若者は狼に手で合図した。茶色の毛並みの狼は、言葉が分かるかのように若者から離れた。


廃墟に野良犬が集結していく様子は、確かに不気味だった。暫く何やら嗅ぎまわっている。

「此処だな。ハンカチと同じ臭いがする。」

「そこの壁だけ新しくないですか。」

一つだけ真っ白な壁がある。叩いてみると、中は空洞のようだ。狼たちは体当たりで壊す。


「大至急笛を吹け。」

中にはまだ由佳だと分かるレベルの遺体があった。腐敗はしているが、外傷はない。毒でも飲んだのだろう。傍には遺書が置いてある。


「見つかったのですか、小麦様。」

光琉は小麦の身支度を手伝いながら言う。

「嗚呼。確認が出来次第、由佳の居場所を警察に知らせ、正を救う。」

「そうしたら由佳さんは共犯者か犯人扱いされ、家族は後ろ指を指される、と。」

光琉の言い方には棘がある。

「人間に入れ込み過ぎだ、光琉。無意識とは言え、実際に協力していたことは真実だ。」


「お気を付けて。」

光琉は小麦の言葉は無視して見送る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ