表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
21/401

檻の狼と尋ね人(6)

光琉は小麦の態度に驚きもせず、深呼吸した。嘘を吐いて忠誠を誓っても仕方がない。余裕を装ってニヤリと笑った。

「止めておけ。僕を食べたら、そのよく回る舌が痛むぞ。口だけ達者な犬どもが。ヴァンパイアのことがお嫌いな小麦様が、わざわざ僕を傍に置いているだけの理由があるとは考えられないのか。」


小麦は黙って見ていた。否定はしないが、助け舟を出すつもりもなかった。狼たちはたじろぎ、がやがやと騒ぎ始める。

「どちらの舌が良く回るやら。」

小麦は光琉にだけ聞こえる程度の声量で呟いた。

「小麦様の舌も、もう少し回って下さるとありがたいのですが。」

光琉も呟いた。


「構うものか。どんな理由があれば、敵を庇っていいことになるのだ。やっちまえ。」

光琉は小麦の耳に光る涙石に手を伸ばす。小麦は拒まなかった。しかし、光琉は意を決して、牙を剥き出している狼の群れに近付いていった。


一頭が飛び掛かるのを皮切りに、一斉に襲い掛かる。光琉の悲鳴が聞こえたかと思うと、狼に埋もれて姿が見えなくなる。それでも小麦は立ち尽くしていた。すぐに光琉は死んでしまうだろう。

「止めろ。ロードの御前だぞ。」

誰かが言ったが、荒れ狂う狼は鎮まらない。


不意に遠吠えが響き、狼はビクッとして声の方を見た。巨大な金色の目玉が一つ光っている。狼は首を垂れた。その中心には血だまりに倒れる光琉がいる。

「そこまでだ。光琉は貴様らの攻撃を無抵抗で受け、敵意のなさを証明した。止めを刺したければ、光琉の危険性を証明しろ。」


小麦は重々しく光琉に近付いていった。光琉はかなりの重体だ。

「ロードの物に手を出した罪は大きいぞ。さて、光琉、奴らをどうしてくれようか。」

「帰りましょう、小麦様。用事は済みました。」

光琉はどうにか起き上がろうとする。


「乗れ。」

光琉はフラフラと小麦に跨る。

「本題を忘れるなよ。由佳を見つけたら笛で知らせろ。」

小麦は走り去った。


「遅い…。助ける気がなかったでしょう。やはり僕がウェアウルフの集会に行かなければ良かったのでは?」

「もう喋るな。少しずつお前の存在を認識させないと、互いに肩身が狭いからな。これからも機会があればお前を連れ歩くぞ。覚悟しろ。」

光琉は黙っていた。もう返事をする気力もない。


光琉は小麦の背からずり落ちた。鈍い音が響く。

「おい、どうした?」

光琉は人間だったら死んでいるような状態だった。体中の裂傷に加え、脇腹が噛み千切られている。並のヴァンパイアならば徐々に回復するのだが、光琉では回復出来ない。


「本当に世話の焼ける…。」

小麦は自分の前足を咬み、光琉の唇に血を垂らす。

「冗談だろ…。」

光琉の口からそのまま血が滴り落ちた。呑み込む気力もないようだ。

「お前、起きたら覚えておけよ。」


小麦は更に傷口を広げ、人間に戻る。この状態で光琉が目覚めたら、そのまま殺そうと思いながら、自分の血を口いっぱいに含む。光琉に全て呑ませ、即座に狼に戻る。

「全裸で口移しなどと…恋人でもしないぞ。」

光琉は動かなかった。傷口はゆっくりと塞がり始めている。

「…腹立たしい。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ