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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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檻の狼と尋ね人(5)

真夜中、満月の光を浴びたその毛皮は、麦の穂のような優しい金色に輝いている。金色の目だけが爛々と光って鋭く辺りを見回している。中でもその大きさが神々しさに拍車をかけていた。ライオンと見紛うほどの体躯だ。一頭の狼と少年が公園を目指す姿は異様だった。


「僕はいて良いのでしょうか。」

光琉はポツリと言う。

「どうした。急にメンヘラになったのか。」

「自分の存在そのものに対する疑問な訳がないでしょう。行間を読んで下さい。ウェアウルフの集会にヴァンパイアがいて良いのかと言っているのです。」


小麦は牙を剥き出しにして唸るように笑う。

「何を今更。そもそも私がお前と同棲している時点で大問題だ。」

「それはそうですが…。何かあったら助けて頂けると思っていいのですよね。」

小麦は答えなかった。光琉は、小麦からの返事がないのは公園に着いたためだと思うことにした。


そこは狼の楽園のようになっていた。暗闇に目玉が光っている。小麦が到着すると一斉に道を開けた。一様に首を垂れている。

「皆、急に呼び立ててすまなかった。捜して欲しい人間がいるのだ。」

光琉はタブレットに由佳の顔写真を映して見せる。


「高橋由佳という。三週間前、あるヴァンパイアに連れ去られ、恐らく既に殺されている。その娘のハンカチを持ってきたから、臭いを覚えろ。期限は今日から一週間だ。何としても見つけ出せ。」

「小麦様、その命令はお安い御用ですが、隣のヴァンパイアは何ですか。」

狼の唸り声がする。


「私の非常食だ。ヴァンパイアと言っても人間ほどの力しか持たぬ、人畜無害な奴だ。」

小麦はその狼を睨みつける。

「いくら小麦様が御認めになっても、承服致し兼ねます。ヴァンパイアとの抗争でどれだけの仲間が死んだことか。奴らの卑劣な手口をあまりご覧になっていないからこそ、斯様な輩を傍におけるのではありませんか。」


既に別件で機嫌が悪かった小麦はキレた。

「ロードである私の資質が足りないと思って、意見していると言うのか?幹部ですらない貴様が、この私に向かって?」

周囲の狼は次々と尻尾を股の間に隠す。


「私もこいつの処遇には頭を悩ませている。今でも、殺しておかねば後悔する日が来るかもしれんと思っておる。だが、決断した以上、他の者にとやかく言われる筋合いは、ない。覚えておくがいい。若かろうが女だろうが、ロードは私だけだ。ただ、言いたいことがあるならこの場で言え。聞くだけは聞いてやろう。」


若い狼が勇敢にも言った。

「それではロードでなく彼にお尋ねします。小麦様と我らウェアウルフのために、命懸けでお仕えする覚悟はありますか。」

小麦が答えるよう合図したため、光琉は口を開いた。

「僕は命を懸けるつもりは更々ありません。僕がお仕えしている方は、後にも先にも真白様ただお一人です。小麦様や他のウェアウルフがどうなろうと知ったことではありません。」


周囲の狼は不満そうに牙を剥いた。今にも襲い掛かろうとしている。

「殺してしまえ。」

「この場で喰ってやろう。」

狼にじわじわと距離を詰められ、光琉は助けを求めて小麦を見た。目線は合わなかった。

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