ブランド服の殺人鬼(7)
「あの服を見て気付かないといけなかったのです。あれは十年前の流行の品です。その時、由佳さんはまだ幼稚園児でした。親があんな品を買いますか?あれは兄か姉がいたことを示していました。そして、今はいない。一人暮らしをしている可能性もありますが、由佳さんは、家族は他にいないと言っていました。既に死んでいると考えられます。」
光琉は手を組んで祈っていた。
「その兄がヴァンパイアとなっていたのか。SNSの時から計画的に近付いたのだな。しかし、何故急いで向かわねばならんのだ。兄ならば危険はなかろう。」
光琉は重々しく言った。
「問題はそこですよ。彼はヴァンパイアにしては食べ過ぎなのです。これではすぐに捕まります。何故わざわざ、顔がそっくりな実の妹から吸血し、催眠状態で野放しにしたとお思いですか。」
小麦は光琉の方を見た。光琉は頷く。
「馬鹿な…。実の妹だろう。」
「妹だからこそだと思いますよ。自分は両親に会うことも出来ず、永遠に人目を避けて獲物を探す日々、それに対して妹は何もせずとも安全で快適な暮らしが保障されている。要するに嫉妬でしょう。」
二人はバスを降りて走った。もう大分時間が経っている。
「由佳さん!」
光琉は玄関のドアを叩いた。反応はない。
「どけ。」
小麦は人の姿のまま、玄関のドアを蹴破った。真っ先に由佳の部屋に向かう。
そこには生活の気配が残っていた。机の上に広げられたノート、食べかけのチョコレート、点きっぱなしの照明、床に落ちたスマホ。しかし、由佳だけがいなかった。何処にも見当たらない。由佳の部屋の窓が開いていた。カーテンが揺らぎ、風がノートの頁を捲り続けていた。
光琉は壁を叩いた。これ以上はどうしようもない。
「まだだ。お前の言う通り、狩りは潮時だと判断したのだろう。だが、もしかしたら最後の狩りをしているかもしれない。妹が真犯人として捕まったら、その次はないのだから。」
小麦は光琉の左手を引っ張って起こす。
「歓楽街に向かうぞ。」
ネオンが煌めいて昼のように明るい。小麦は堂々と歩いて行く。
「効率が悪い。二手に分かれよう。」
光琉は心底嫌だったが、そんなことも言っていられないので我慢した。
「承知致しました。見つけたら連絡差し上げます。」
小麦を見て振り向く人が何人もいるが、小麦は一向に意に介さない。
「ねえ、君。中学生かな。こんな所に一人でいては危ないよ。ご両親は何処かな。」
中年の男が声を掛ける。
「下がれ。私は人を探しているのだ。」
「お金に困っているならおじさんが…。」
小麦は男を軽く小突いた。男は泡を噴いて倒れる。
光琉は辺りを見回していた。ある人に目を留める。ブランドの服に金の髪、由佳の兄だ。誰か男と連れ添っている。ターゲットを決めているようだ。急いで小麦に電話する。なかなか出てくれない。二人はホテルに消えようとしていた。




