ブランド服の殺人鬼(5)
「五月くらいかな。お姉ちゃんがSNSの友達に会いに行ったの。歳が近くて話も合うみたい。美玖は気になって見に行ったの。顔は見えなかったけど、男の子だったよ。それからお姉ちゃんは、ぼーっとすることが多くなって、最近は食欲もないみたい。」
光琉は更に尋ねる。
「由佳さんのデートをずっと見ていたなら、何か変わったことはなかった?」
「知らない。途中でカラオケに入ったから帰っちゃった。覗けないからつまらないもの。さ、ご褒美頂戴。」
光琉は牙を立てないように注意して、美玖にサッとキスした。
「どうもありがとう。また来るかもしれない。」
光琉は美玖の部屋を出て、由佳の部屋のドアをノックした。
「どうぞ。」
中にいたのは想像以上に綺麗になった由佳だった。メイクと服装で此処まで人は変われるものなのかと光琉が軽く感動していると、小麦が言った。
「蛹が蝶に…という感じだな。」
「凄い。これなら別人に見えますよ。あ、いい意味でね。由佳さんでこの丈なら、美玖さんも着られないことはないでしょう。」
由佳は焦点の合わない目をしていたが、時折、目頭の間を触っている。
「由佳さん、コンタクトレンズは持っておいでですか。」
「いいえ。ありませんよ。」
光琉はニヤリと笑う。
「それなら由佳さんが犯人ということはあり得ませんよ。この写真を見る限り、犯人は眼鏡を掛けていませんから。由佳さんは裸眼で生活出来るほどの視力とは思えません。コンタクトレンズも持っていないなら、別人格だろうが動けませんよ。」
由佳は顔を輝かせる。
「良かった。家族が犯人ということもないですよね。」
「恐らくは。お母様は体型が違いすぎますし、妹さんは年齢的に無理があります。犯人は何人も殺しているのに、まだ捕まらないほどの頭脳を持っていますから。ご家族は他にいませんか。」
「父がいますけど、絶対にあり得ません。良かった。ありがとうございます。不安が消え去りました。依頼料はいくらでもお支払いします。」
由佳は泣き出しそうな顔で笑っている。
「別に何もしていませんから、そんなにいりませんよ。お気持ちだけで。」
光琉は言ったが、由佳は万札を何枚も押し付ける。かなりの額だ。
「これで足りますか。」
「十分すぎます。もう少し確認させて頂いても宜しいでしょうか。犯人はわざと由佳さんの家にあるのと同じ服で、由佳さんが変装しているように装った可能性があります。失礼ながら、何か怨みを買っている覚えはありますか。」
小麦は長々と欠伸をした。由佳は眼鏡を掛けて答える。
「ないと思いますけど…。」
「そうですか。プライベートな話で申し訳ないのですが、妹さんから彼氏さんのお話を少し伺いました。どのような方でしたか。」
由佳は怪訝そうな顔をする。
「私には彼氏なんていませんけど。」
「SNSで知り合って、実際に会ったという方ですよ。」
それでも由佳は首を横に振る。
「女友達と遊んでいたのを、美玖が見間違えたのでしょう。以前もお話ししたように、私は勉強一筋です。男性と付き合ったことはありません。」
「そうですか。ご協力ありがとうございました。何かあればご連絡下さい。」
光琉と小麦は自宅に戻った。




