052:癖が癖で癖だ
吉丸は足軽5人組頭になった事で、秀蘭から伝導奉行と兼任で特殊遊撃隊の隊長という職を任された。
それにより直属の部下が4人できる。しかもある程度の独自行動は認可されており、それなりに自由だ。
そして今日は4人の部下との顔合わせである。
中々の個性派が揃った。
1人目はスッキリとしたシャープな輪郭、端正な顔立ちをしている無色透明というイメージが強い男。
「名は渋前 康人にございまする! 階級は少佐を承っており、頑張る所存でございまする!」
康人は影が薄そうな人間でありながらも、声がスーッと耳まで通る声質をしている。その点に吉丸は「うんうん」と頷いて見どころを感じた。
何よりも吉丸より階級が高い。
本当ならば吉丸が敬語を使わなければいけないが、役職の立場的に敬称は不要であると言われている。
そして2人目は頭をスキンヘッドにしている元僧侶だ。
「岳仁にございまする。元々は大和京都郡にある翁緑寺の僧侶をしておりました」
岳人は過去に大和の京都郡にある翁緑寺という寺にいたというのだ。この翁緑寺とは日本時代にあった東本願寺に新たに作られた寺だ。
そこの僧侶といえば、僧侶の中ではトップレベル。
どうして辞めたのかが気になるところである。
しかし今は次の人に集中しようと、吉丸は3人目の人にスッと目を向けた。
そこにはまさしく好青年という言葉が相応しい目に力があり、キリッとしている青年が立っていた。
「自分は岩崎 日向です! 吉丸殿の森岡砦の戦いを見て、感銘を受け志願しました! どうぞ、よろしくお願いいたしまする!」
どうやら森岡砦の戦いに、岩崎は参加していたらしく、吉丸の戦い振りに感銘を受けたという。その言葉を聞いて吉丸は、少し気分が良くなった。
ゴホンッと咳払いをして改めてから、次の人間に目を向ける。
次の人間は2歳差の兄弟で、どっちも吉丸と同じように農民の足軽らしい。2人とも吉丸のように出世がしたく、この部隊に志願したみたいだ。
「俺は兄の田中 隼人です! 俺たちは吉丸さまのように出世したくて来ました!」
「弟の優斗です!」
兄弟2人の自己紹介を聞いた吉丸は、成り上がりたいという気持ちを聞いて「うんうん!」と強く頷いている。
なにせ自分も成り上がりたいと思って、ここまでやって来ているのだから。この2人も、きっと同じ気持ちなのだろうと強い共感をしていた。
しかし我に帰った吉丸は、ある事に気がつく。
それは「あれ? 部下になるのって4人じゃ?」というところである。確かに吉丸の目の前には、予定よりも1人多い5人立っている。
すると事態の理由をしていると康人が手を挙げた。
「田中兄弟は、2人で1人ゆえ4人換算である。との事にございまする、まだ2人は農民上がりなので経験も少なく1人分の働きも怪しゅうございまする」
「まぁそういう事なら納得か……よし! メンバーが揃ったところで、特別遊撃隊の集会を始める!」
『はっ!!!』
理由としても納得のできるものだったので、吉丸は深掘りせずに集会を始めると宣言する。メンバーたちは、背筋をピンッと伸ばして返事をした。
この気合いは素晴らしいと吉丸は第一印象を感じる。
まずは自分たちの存在意義について説明を始めた。自分たちに、どんな存在意義があるのかを説明しなければモチベーションも上がらないだろう。
「まず我々は名前にあるように特別な命などを実行する部隊であり、遊撃隊としての側面も持つ! しかし有事が無い場合は、伝令管理を担って貰う!」
『はっ!!!』
「そしてもう1つ大切な事がある。それは我らには戦闘が求められるという点だ! そこでお主たちには、これから仕事の他に毎日の修行をして貰う!」
『はっ!!!』
吉丸たちの特別遊撃隊は、有事になった場合は秀蘭の指示で独立して動く事などを許可されている。
しかし今はまだ有事では無い。そんな時は吉丸が、伝導奉行をしているように、特別遊撃隊のメンバーたちも伝令兵として働いて貰う事になる。
名前の他に大切な事が、もう1つある。それこそが戦闘能力である。遊撃隊と言っているように、戦えなければ使い物になんてなりはしない。
その為、吉丸はメンバーたちに修行の命を出す。
「最初に我らは、仙道家を離反した知多城を攻略する為、築城されている砦に兵糧などの確認を行ないに向かう! 3箇所あるゆえ、2人1組で向かうぞ!」
『はっ!!!』
吉丸たちの初任務は今、築城されている3つの砦に兵糧などの確認を行ないに行くというものだ。
少し前に森岡砦の戦いを行なった際に、仙道家を離反した知多城を攻略する為に3つの砦を築城している。
1つは東海市にある大池公園跡を利用した大池砦。1つは森岡砦を再利用し増築する森岡砦。1つは阿久比町にある前ノ山に前ノ山砦の建築を始めた。
吉丸は日向と共に大池砦に向かう。
そこまで急いでいるわけではない為、馬は使わずに人間の足だけで上前津から東海市まで行く。時間としては日本時代の遺産である高速道路を使っていくので、早くて3時間半から4時間で行く事ができる。
二人っきりで無言というのも吉丸的には耐えられないので、日向に話を聞いてみる事にした。
「日向殿は、足軽階級ですよね? かなり軍隊なれしているように見えるんだけど、どうなんですか?」
「そうですか? それなら嬉しいですね。これでも足軽の子供なんで、それなりに軍隊の事は父から聞いていたんです。話を聞いた経験が活かせて良かった!」
日向は武士階級というわけではないが、佇まいや敬語の使い方を見て足軽階級とは思えなかった。
どうやら日向の父親が、足軽として良いところまで行った人らしい。それがゆえに、いろんな話を聞いて今日という日を待っていたと語る。
確かにそれなら納得だと吉丸は思う。
「俺からも聞いて良いですか?」
「うん、別に構いませんよ? 俺が答えられる事なら、なんでも答えますよ」
「吉丸隊長は、どうして武士を目指してるんですか? 農民からだと、かなり厳しい……あっ! 別に他意があるわけじゃ無いんですけど!」
「いやいや、別に気にする事ないですよ」
吉丸が質問したので、今度は日向のターンが来る。
しかし日向の質問が、弾丸ライナーくらいの勢いがある質問で吉丸は笑いながら「うーん」と笑う。
ここで簡単に答える事もできる。だがそれは真摯ではない為、どうにか良い感じに答えたい。答えたいが、これを言葉にするのは難しい。
なんでも聞いて良いと言ったからには、これに答えないのは違うと吉丸は「うーん……うーん」と腕を組んで必死に良い答えを考える。
「こ 答えづらかったら大丈夫ですよ!? こんな質問してしまって申し訳ないです!」
「いえ! ここは答えさせて下さい。なんと答えたら良いのか、難しいんですが……簡単に一言で言うなら、生まれたからには成り上がりたいってところですかね」
「そういう事なんですね! その年齢で、ここまで出世されるのは異例中の異例ですよね!」
「きっと殿の下で無ければ、ここまで来てなかったです」
なんとか良い返事ができたと吉丸は思っている。
良い感じに打ち解けて来たかなぁというところで、吉丸たちは大池砦に到着する。




