表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和一統〜農民の俺が侍に!?〜  作者: 灰谷 An
第2章・仙道愛知家の家督相続 編
PR
45/73

044:窮鼠猫を噛む

 森岡砦の攻略が始まった。

 吉丸は足軽として最前線に配置され、利恒と虹直と恒虎は秀蘭の馬廻集なので本陣にいる。

 遠くから「吉丸、生き残れよ!」と心の中で祈る。

 当の本人は最前線で「ふー! ふー!」と息を荒立てながら緊張している様子だ。それでも頬を叩いてから膝が胸に付くくらいのジャンプをして覚悟を決める。

 そして遂に騎兵がスッと刀を上に掲げ、周りの様子を伺ってから刀を下に下ろす。スーッと息を吸って「突撃!」と開戦の合図を出すのである。

 吉丸たち、足軽は「うぉおおおお!!!!」と自分の鼓舞するような雄叫びを上げながら突撃を開始した。



「橋を渡り! そのまま砦内に押し入れ!」



 足軽たちは砦にかかっている橋に向かっていき、その閉ざされた門を開ける為に向かう。

 しかし橋があるという事は、そこに足軽が群がるという事であり、逆に言えば弓で狙いやすいとも言える。

 案の定、馬鹿みたいに突撃した人間は射られている。

 吉丸のように少し知恵の回る人間は、その手段は取らず別の方法を走りながら知恵を尽くす。



「橋だけじゃなく堀を越えるんだ! そうすれば橋への攻撃も分散される!」


「で でも、そんな事をしたら良い的になるんじゃないのか? たくさんの死人を出す事になるんじゃ……」


「確かに少なくとも死者を出すだろうけど、こっちにも弓隊もいるし援護をしてくれる! なにより攻撃が一点に集中するよりかは明らかにマシなはず!」



 吉丸が考えたのは堀を避けて橋の方に行きがちだが、そうなれば向こうは狙いを定めやすい。

 ならば堀には水が入っていないので、そこを通って攻撃範囲を数箇所に広げる事で、相手に狙いを定めさせない方が得策だろうと吉丸は考えている。あとは味方にも弓兵はいるので援護してくれる。

 確かに堀は足も取られるし、登りずらい為に嫌われるところではある。しかしそこを乗り越えれば敵の戦力をバラけさせる事ができるはずだ。

 吉丸はそう考えた。

 だが実際にやるとなると覚悟がいる。



「ここは俺が行くしかねぇか……」



 どれだけ口で説明したところで、誰かが最初に行かなければ、他の人たちの足は動かないだろう。

 そしてその人間は自分だろうと吉丸は空気を悟り、橋に向かっている隊列から外れ単体で堀に向かう。頭で理解していたが、体が動かなかった人間たちも「アイツが行ったなら、俺も行かなきゃ!」と覚悟を決める人間も現れる。

 先頭を切っている吉丸の後ろから、大勢の足軽たちが堀に向かって走り込んでいた。



「吉丸に遅れをとるな! 相手に攻撃の場所を絞らせるんじゃない!」


『おぉおお!!!』



 足軽総大将は吉丸に遅れをとるなと声を出す。

 明らかに向こうと、こちら側では数的に差があるので的を絞らせなければ相対的に数的有利を作れる。

 その為に堀からも攻撃する必要があるのだ。

 先頭を切っている吉丸は、やはり良い的となって敵兵の弓矢が飛んでくるのである。飛んでくる弓矢を、吉丸は目視で確認しながら槍で防いでいく。

 近づけば近づくほど弓矢の速度が上がるので、防ぐのも避けるのも容易では無くなってくる。


 すると吉丸はデコボコしている地面に足を取られ、前のめりに転んでしまう。

 心の中で「ヤバい!?」と焦りながら、立ちあがろうと顔を上に向けた。そこには今すぐに自分を撃ち殺そうとしている敵兵の顔が見えて、吉丸は「終わった」と死ぬ覚悟を咄嗟にするのである。

 だがその弓兵の額に弓矢が突き刺さった。

 物見の兵が「敵、弓矢隊の攻撃!」と伝える。ギリギリのところで吉丸は助かる。



「た 助かった……ギリギリだった!」



 助かったので急いで立ち上がり堀に向かって、また全身全霊で突き進むのである。

 敵の弓兵は吉丸に狙いを定めながらも、同じく秀蘭軍の弓兵にも目を向けなければいけず、明らかに向こうは人手が足りない感じがあった。

 この隙を吉丸は絶対に見逃さない。

 吉丸が堀に飛び込んだところで、他の足軽たちも合流して必死に堀を乗り越えようとする。



「隊長っ! 秀蘭軍の足軽たちが、堀を乗り越えようとしておりまする!」


「なに!? この堀を越えようとしているのか? ここまで秀蘭軍の足軽はアホだったとは。やはり主人がアホなら家来たちもアホだな……ここに兵を集めよ! 一網打尽にしてやるわ!」


「し しかしそれでは南門の兵が減ってしまいますが、それでもよろしいのですか? あそこを手薄にすれば、砦内に多くの敵兵が流れ込んできます!」


「ちっ! こっちは各3箇所に100人も配置できず、向こうは各地で3倍以上もの兵を使っている……こんな戦い勝てるわけが無いでは無いか!」



 砦の回廊で指揮をとっている足軽総大将は、無様に向かってくる吉丸たちを一掃しようとする。門を守っている兵士たちも、こっちに連れてくるように指示を出した。

 しかし部下が門の人手を、これ以上減らせば戦いにならなくなってしまう。それどころか南門が破られれば大量の敵兵たちが、この砦内に雪崩れ込んでくると助言した。

 それを聞いて冷静さを取り戻した足軽総大将は、こんな戦いは最初から負けが確定していると弱気な発言。どうしてこんな戦いをしなければいけないのかと、目の前の現状から目を逸らそうとするのである。



「とにかく門を破らせないのは大前提に、外壁を敵兵に昇らせるな! 門を破られるのと同じくらい外壁を登られたら、我らの負けだぞ!」


「はっ! 承知いたしました!」



 足軽総大将は門を破られるのは論外として、外壁を登られたら門を破られたのも同じなので、どうにか防ぐように指示を出すのである。

 指示された通りに外壁の上から吉丸たちを撃退しようとするが、もうこの距離まで来てしまったら弓矢は不利になってしまう。なので槍を持って上と下で攻防を演じる。

 最初こそ吉丸と少しの足軽しか来なかったので、外壁の上からの攻撃を防ぐのが大変だった。しかし吉丸の考えに賛同する人間たちが増え、足軽たちが集まり始めると数が増えていって数的有利を作り始めた。



「数の差で押し切るんだ! 外壁を登って、内側から門を開くんだ!」



 吉丸は先頭を切って、ひたすらに戦い続ける。

 どうにか数の力で押し切って、外壁を登って内側から門を開けるように言うのである。そうなれば門での戦いで、無駄な兵士を失わなくて済むからだ。

 しかし吉丸の想定以上に、敵兵が争ってくる。

 やはり秀蘭が言ったように、もはや勝ち目の無い敵兵たちは想定していたよりも遥かに上の抵抗をして来た。

 吉丸の発想は悪くなかったが、こんな風に抵抗してくるという経験値が少なかった。



「吉丸、どうする? このままだったら、いつかは押し切れるにしても仲間の兵を多く失いすぎるぞ?」


「た 確かに……まさかここまで激しく抵抗してくるとは思わなかった」


「どうにかしないと手遅れになるぞ? このまま多くの兵を失ったら……この作戦を立てた吉丸の首が」


「分かった! ここは俺が責任を取る!」



 いつかは勝てる戦いではあるが、このまま多くの兵を失ってしまったら、勝ったとしても吉丸が責任を取らなければいけない事態になりかねない。

 それを心配した足軽の仲間が、どうにかしなければいけないと吉丸に進言するのである。

 仲間の言葉に納得した吉丸は、決断せざるを得ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ