表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和一統〜農民の俺が侍に!?〜  作者: 灰谷 An
第2章・仙道愛知家の家督相続 編
PR
43/73

042:総大将の安心感

 水夫や船頭たちですらも無理だという荒波の中、秀蘭はこれ以上の好機は無いとして強行した。

 あまりの雨と風で顔が痛いは、船が揺れて酔うは。散々な感じで吉丸は心の中で「こりゃあ死ぬな」と小さく死を覚悟するのである。

 そんな中で秀蘭は船首に仁王立ちで立ち、ジッと進行している前方だけを見つめている。全く体幹がブレない。

 秀蘭の姿を見た吉丸は「化け物だ」と心の底から思う。


 この地獄のような船旅は1時間も続く。

 その間に何隻かは沈んだが、それでも被害は最小限も最小限に抑える事ができた。

 吉丸たちは南知多町に着港。

 今日は南知多町で宿泊する。

 今日も今日とて吉丸は利恒、虹直、恒虎と共に夕食を共にするのである。



「今回ばかりは本当に死ぬと思った……」


「全くその通り」


「そうか? 俺は案外、楽しかったけどな」


『お前はおかしいんだよ!』



 吉丸と利恒が死ぬかもしれないと疲労感たっぷりな時、虹直は楽しかったと言った。こんな発言を共感できるわけがない3人は声を揃えておかしいとツッコんだ。



「それにしても秀蘭さまを見たか? あんな揺れる船の船首で、あんな風に仁王立ちするなんて……とてもじゃないが、我らができる芸当じゃないぞ?」


「アレはきっと無理を言った自分が、後ろの安全なところにいるわけにはいかないという意思表示だろ。あんな風にされたら、俺たちは文句なんて言えないんだ」



 恒虎は秀蘭が船首に仁王立ちしていたのを思い出し、普通の人間やらばあんな事できないと秀蘭という存在が恐ろしくてブルッと身震いする。

 あの行動には意味があると吉丸は考えていた。

 それは船頭や水夫が無理だと言って、危険すぎて死者が必ず出ると進言を受けた。しかし待つわけにはいかないので、選択肢として行く他ない。ならば他の家来たちが納得するよう1番危険なところに立っていたというわけだ。

 吉丸の考えを聞いた3人は「た 確かに」と納得する。



「とにかく! 俺たちは今回の戦いにおいて、最も命を落とし危険性のあったところを乗り越えたんだ。あとは油断し切っている祥鳳軍を蹴散らすだけだ!」


『おぉおおお!!!!』



 なんとも言えないような空気になり、これ以上は士気が下がりかねないと吉丸は思った。

 そこで死地は乗り越えたから、あとは油断している祥鳳軍を討ち取るだけであると言って盃を掲げる。なんとなく察した利恒たちは、同じく盃を掲げて声を出す。

 良い感じで士気が戻ったところで夕食を終えて、早めに就寝するのである。


 そして翌日の5時に南知多町を出発。

 昼過ぎの頃には東浦城に入場する事ができた。

 もちろん入城したのは秀蘭と重臣たちであり、まだ出世をしていない吉丸や利恒たちは城の外で待機する。

 金忠は自らの足で秀蘭を東浦城に迎えた。



「殿、お待ちしておりました! さぁこちらに、陣営を準備しておりますので、どうぞ!」



 金忠は軍議を開いたりするように、東浦城に陣営を準備しているので秀蘭を案内するのである。

 深々と平伏していた金忠に「うむ」と答えてから、金忠の案内で陣営が開かれているところに連れて行って貰う。

 しっかりと陣営の準備がされていた。

 秀蘭は上座に用意されていた床几に腰を下ろす。



「森岡砦はどうなっている? 詳しく話してみよ」


「はは! 森岡砦に関しましては、変わりなく300人の兵のみが砦内におりまする。その砦の周りを秀安さまの軍勢が囲み、伝令の兵を逃さないようにしております」


「そうか、分かった。武将が集まり次第、俺を呼べ」


「は! 承知いたしました!」



 森岡砦の話を聞いた秀蘭は「うんうん」と頷く。

 そして移動で疲れたからと武将が軍議を開く準備が整うまで、用意してくれた部屋で休むと立ち上がる。

 金忠たちは深々と平伏して部屋を出て行くのを待つ。

 ドドドドッという秀蘭の足音が聞こえなくなるのを待ってから金忠は「ふ〜」と言って立ち上がる。そこまで話したわけではないが、とてつもない疲労感を感じた。これは秀蘭の覇気というべきか、オーラが凄かった。



「いやいや、久しぶりに殿を見たが……いやぁ実に対面しただけで、全身から汗が吹き出るような威圧感だ」



 手拭いで汗を拭き取ってから部下に「殿のところに、水をお運びしろ!」と指示を出す。

 必死なってやって来たのだから、喉が渇いているだろうと金忠は考えたのだ。部下も返事をしてから直ぐに、秀蘭の部屋まで水を運んだ。

 少し休憩して夕方の4時になったところで、秀蘭方と金忠方の武将が勢揃いした。その中にはもちろん主力の1人である秀安も参加するのである。

 いよいよ明日に向けての軍議が始まる。



「これより森岡砦攻略に関する軍議を始める! 最初は現状の整理から始めまする!」


「それは私から行いまする。まず森岡砦の手勢は約300の兵がおり、我が軍は秀安さまの援軍もありまして1200の4倍の差がありまする。そして秀安さまの軍勢により森岡砦からは1人たりとも出しませぬ」



 現状を話しているところで、秀蘭は目を瞑って腕を組んで精神集中しながら聞いている。

 その姿は阿修羅のようだったと、後に家来たちは語る。

 現状の報告が終わった後、次は各軍の配置についての説明が始まるのである。



「これより配置について説明致す! 水谷軍は水上を封鎖して東側の大手門より攻めて下され!」


「おぉ! 承知いたした!」


「次に秀安さまは西の裏門をお願いいたしまする」


「相分かった!」


「殿には軍を率いて、最も攻めずらいと思われる南側を攻めていただけませぬか?」


「………」



 各配置について話していて、秀蘭のターンが来たところで目を瞑ったまま動かず、反応がない。

 どうしたのかと思って作戦を話している大盛は「殿?」と声をかける。すると目をキッと開いてから立ち上がり、スーッと息を吸ってから「相分かった!」と叫ぶ。

 家臣たちの耳はキーンッとした。家臣たちは、どれだけ秀蘭の声がデカいのかと驚いた。

 そしてこのまま秀蘭は喋り始める。



「これより始まる戦いは、これからを占う戦いだ。祥鳳は我らを格下だと思っているらしい。そうでなければ森岡砦を300人という極小の人数で守らせるはずが無い」


「その通りにございまする! 祥鳳軍は明らかに、我らを舐め腐っている!」


「そんな奴らを許して良いと思うか? こんな侮辱を許してはならぬ、完膚なきまで痛めつける。そして自領でふんぞり帰っている祥鳳に、恐怖を植え付けてやろうぞ!」


『おぉおおおお!!!!!』



 秀蘭は祥鳳が自分たちの事を見下しているとして、こんな事を許してはいけないと握り拳を震わせて語る。

 そしてその怒り心頭な感情を爆発させ、目の前にいる重臣たちにも確固たる覚悟をさせた。これ以上ない程に重臣たちの士気は爆発しそうな程に高くなっている。

 武将として、率いる人間として秀蘭の凄さを物語る軍議となった。自然と重臣たちの心の中に、秀蘭が居れば負けるわけがないという心の支えとして存在が確立した。



「大盛、アレは準備してあるんだろうな?」


「は! 言われた通りに準備しておりまする」


「そうか、ならばそれで良い。アレが今回の戦いの最も重要なモノになる」



 軍議が終わったところで、秀蘭は大盛を呼び止める。

 なにやら大盛に何かを頼んでいたらしく、それがキチンとあるかを確認したのだ。

 そして準備できているのを確認して、今回の戦いは確実に勝利できると確信する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ