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大和一統〜農民の俺が侍に!?〜  作者: 灰谷 An
第2章・仙道愛知家の家督相続 編
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039:耐え凌ぐ

 秀蘭の伝令役として東浦城にやって来た吉丸は、最前線の情報を秀蘭のところに伝えるため東浦城に留まった。

 そして吉丸が東浦城に到着してから2日後。

 東浦城の間近にある森岡に布陣した。どうにかここで籠城しながら秀蘭の援軍を待たなければいけなく、どんな風に攻めて来るのかと緊張感が走る。

 しかし一向に祥鳳軍が攻めて来る事が無かった。



「どうなっているんだ? どうして祥鳳軍は、ここに攻めて来ないんだ……」


「報告いたしまする! 祥鳳軍、森岡にて砦を築き始めたようにございまする!」



 吉丸のところに部下の兵がやって来て、攻め込むどころか森岡に砦を築き始めたというのだ。

 どうして攻め込んで来ないで、砦を築き始めたのかと吉丸は疑問を持つ。しかし今は疑問を持つ前に、急いで秀蘭のところに伝令を送る必要があると分かっている。

 急いで上前津城に伝令兵を出した。



「砦を築き始めただと? そうか、今はまだ攻めるつもりは無いというわけか……しばし待ち、砦を作らせよ。相手を油断させるのだと犬と金忠に伝えよ」


「は! 承知いたしました!」



 砦を築き始めたというのを聞いた秀蘭は、今この時に攻め込んで来ない事を理解した。

 わざわざ戦いを仕掛けず、砦を築くというのは何か狙いがあるというわけだ。そして何より今直ぐに攻められない理由がある可能性が高い。

 ならば自由に作らせ油断させる作戦を秀蘭は選んだ。

 この作戦は直ぐに吉丸と金忠のところに知らされる。



「相分かった、ここで睨みを効かす事にしよう」


「そして吉丸殿は、このまま東浦城に留まって伝令兵の管理をするように。との事にございまする!」


「承知いたした! 金忠殿、ここに滞在する事をお許し願いたい!」


「もちろんだ、貴殿が居られるのは心強い限りだ!」



 相手が油断するまで待機するように言われた金忠は、号令が出るまで睨みを効かせてやると士気が高い。

 そして東浦城に待機を言い渡された吉丸も、向こう方の動きを全て秀蘭に知らせてやると気合いが入っている。

 森岡砦の建築は11月半ばから始まった。

 それをただ見届けるのが吉丸と金忠の今の仕事である。


 攻撃の号令が出るのは、いつかいつかと金忠は楽しみに毎日を過ごしていた。

 その間も金忠のところに、降伏して自分たちの方に着かないかという使者が時々やって来た。しかし義理に厚い金忠は、ただひたすらに断り続ける。

 これも攻め込む為に気持ちを高めているのだ。

 だが年を超えた和帝歴17年(2177年)2月になっても秀蘭からは号令がかからなかった。



「どうなっているのだ! どうして秀蘭さまは、我らに号令をかけてくれぬのだ!」


「金忠殿、辛抱なさって下さい! お館さまには、何か考えがあるのでございまする! ここで勝手に仕掛けたならば、金忠殿のお立場が危うくなりまする!」


「そういうが砦は完成しておるのだぞ? 砦が完成しただけでは無い……知多城も中林家に寝返ったのだぞ? このまま時間をかければ不利になるのは我らだ」



 そう前年の年末に、上前津城と東浦城の間にある知多城が中林家に寝返ったのである。

 完全に退路を絶たれ金忠は焦っている。このままでは挟み撃ちになって死ぬだけだと。

 もう我慢の限界を迎えそうになっていた。

 そんなタイミングで廊下をドタバタと走って来る男が聞こえて来るのである。吉丸と金忠の視線が廊下に向く。



「秀蘭さまよりも使者が参りました! お通ししても宜しいでしょうか?」


「あぁ! 来て貰え!」



 なんと噂をすればという言葉の通り、このタイミングで秀蘭からの使者がやって来たと言うのだ。

 ようやく来たかという希望が見え、吉丸と金忠は互いの顔を見て「うん!」と頷くのである。

 そして大広間に秀蘭からの使者がやって来た。

 やって来た人間は利恒だった。



「と 利恒殿!? どうして利恒殿が?」


「俺と吉丸の仲だ。話もしやすいだろうと思ってお館さまは、お気を遣って下さったのだろう」


「そういう事か……それよりも、さぁ! お館さまからの伝言を金忠殿にお伝えしてくれ!」



 利恒は自分の方が話が円滑に進むだろうと、秀蘭が考えてくれたのだと満面の笑みで言う。それは頼もしいと吉丸は喜んで、秀蘭からの伝言を金忠に話すよう急かす。

 言伝の重要性を理解している利恒は、スッと大広間の床に座ると金忠に頭を下げる。

 そして秀蘭からの言伝を伝えるのである。



「お館さまよりの伝言をお伝えいたしまする。お館さまは中林陣営にバレる事なく、船や食料を準備するようにご指示なさいました! その後、直ぐに軍勢を引き連れて援軍に向かうとの事にございまする!」


「よ ようやくだ! ようやく戦える……直ぐに準備はいたそうぞ。もちろん中林方にバレる事なくな」



 この頃、森岡砦の守備は数を減らしていた。最初こそ1000人を超える軍勢がいたが、今となっては300人と秀蘭が読んでいたように油断し切っている。

 そこに兵糧や川を渡る船を用意するように指示を出す。

 準備ができたら軍勢を引き連れて援軍に向かうから、そこで砦を攻撃しようという事だ。

 ようやく戦えると金忠は家臣たちに指示を出す為、大広間を駆け足で出ていくのである。

 残された吉丸と利恒は互いに顔を見る。

 久しぶりの再会。酒を飲み交わしたいところだが、利恒はゴホンッと咳払いをしてから「吉丸、お前にも殿から命が出ているぞ」と不敵な笑みを浮かべながらいう。



「俺にもご命令が!? 聞かせてくれ!」


「俺が代わりに東浦城に残るゆえ、吉丸は上前津城に急いで戻って来い。との事だ、しっかりと言い渡したぞ!」


「はは! それじゃあ急いで向かうとしよう!」



 秀蘭は吉丸に、急いで戻って来るように指示した。

 吉丸の代わりに利恒が東浦城に残るように言われる。

 急いで戻って来るように言われたので、これは急いで帰らなければと、ニコニコしながら金忠のように大広間を出ていくのである。その吉丸の姿に、利恒はフッと笑ってから「子供のようだな」と呟く。


 馬に跨った吉丸は行きは2時間かかったが、帰りは30分も短い1時間半で上前津城に戻って来た。

 到着すると飛び降りるように馬から降りて、そのまま猛ダッシュで秀蘭のところに走っていくのである。

 部屋の前に行ったら小姓に「お館さまの命で参った!」と伝えて襖を開けて貰うように頼む。聞いていただろうから直ぐに「どうぞ」と言って襖を開ける。

 するとそこには久しぶりの秀蘭と果耶がいた。



「お館さま、吉丸にございまする! お久しゅうございする!」


「そんな事はどうでも良い! 犬、今から美飛に行って参れ!」


「び 美飛にございまするか?」


「そうだ、父上から兵を借りて留守を守って貰う。犬、お前なら円滑に頼めるだろう……さっさと行って参れ!」


「はは! 承知いたしました!」



 久しぶりに会うので感動の再会のように、目をうるうるさせながら挨拶をした。

 しかしそんな時間は無いと言われ、直ぐに美飛へと行くように言われたのである。森岡砦を攻めている間に、もしかしたら秀斗が攻めて来る可能性があった。なので、その留守を守って貰う為に兵を借りに行って来いと言うのだ。

 感動の再会をしたかったが、普段の秀蘭らしくて、これはこれで良いと吉丸は思ったのである。

 逆に秀蘭も吉丸が出ていく姿を見て、フッと笑って「元気そうでは無いか」と呟いた。

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